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Updated on 2020年9月14日. Posted on 2020年9月8日

伊勢谷友介さん、大麻所持で逮捕。誤解と偏見を強めないため、避けるべきセンセーショナルな報道とは

俳優の伊勢谷友介さんが9月8日、大麻取締法違反容疑で逮捕された。もし、自力でやめられない状態にあるならば、再犯防止のプログラムを受け、再起に向けて歩むことが期待される。そうした中、その歩みを阻むことにつながるのがセンセーショナルな報道だ。

時事通信

俳優の伊勢谷友介さんが9月8日、大麻取締法違反容疑で逮捕された。

東京・目黒区の自宅で大麻を所持していた疑いがあると日本テレビは報じている。

テレビ朝日、NHKなど各社も速報でこのニュースを伝えた。

誤解と偏見を強めないため、適切な報道を

今回、伊勢谷容疑者が薬物依存の状態にあるかどうかは不明だ。だが、もし、自力でやめられない状態にあるならば、再犯防止のプログラムを受け、再起に向けて歩むことが期待される。

そうした中、その歩みを阻むことにつながるのがセンセーショナルな報道だ。

ギャンブル依存症を考える会の代表で依存症の問題に詳しい田中紀子さんはBuzzFeed Newsの取材に対し、「スキャンダラスな報道や憶測記事、家族への直撃取材などは控えてほしい。報道は必要最低限で良いのではないでしょうか」と語る。

芸能人が薬物を使用した場合等には、人格否定などを行う報道も見受けられるがこうした報道も控えるべきだ。

また、大麻の映像などを何度も繰り返し放送することは、現在大麻の使用を止めている人が再び使用することにつながる可能性もあるため、注意が必要だ。

田中紀子さん提供

田中さんはメディアに対し、専門家のコメントを紹介することを要望する。薬物使用や依存症等について知識を持たないタレントの感情的なコメントは取り上げるべきではないと語った。

同時に、逮捕に関する報道が過熱することで「犯人探し」をするような風潮が生まれ、本人だけでなく家族など周囲の人々にも影響を及ぼすことを田中さんは危惧する。

「過去には薬物を使用した本人だけでなく家族が嫌がらせを受ける、職場を追われるようなケースも実際に生まれています」

「また、過剰な報道が行われることでスポンサーも過剰に反応し、仕事など再起の機会が奪われてしまうことも少なくありません」

これらは、薬物等を使用した著名人は「叩いてもいい」という誤った認識が広がることによる弊害だ。

田中さんはたとえ依存症でなくとも、医師の診断を受け、著名人が参加している自助グループに参加することが必要なのではないかと取材に語った。

「ここまで報じられてしまうと、その後のバッシングも大きなものになることが予想されます。バッシングを受けたとき、抱えるストレスや苦しみは非常に大きなものです。一人で再起の道を歩むことは困難となってしまいます」

「著名人の方の場合、薬物を使用することで、今までのキャリアが歩めなくなってしまうことがあります。また、人の目が怖いと感じ、引きこもってしまうことも少なくありません。再起の道を歩むために、自助グループに参加して、同じ問題を分かち合う仲間とつながった方が良いのではないでしょうか」

芸能人が薬物の所持や使用の容疑で逮捕された際、過去の作品や出演予定の作品の放送を自粛するケースも後を絶たない。

当事者や専門家が作成した「薬物報道ガイドライン」では、センセーショナルな薬物事件の報道が「誤解と偏見を強め、当事者や家族を孤立させて回復を阻害してしまう」と注意喚起されている。

ガイドラインでは、以下のように望ましいこと / 避けるべきことが紹介されている。

【望ましいこと】

  • 薬物依存症の当事者、治療中の患者、支援者およびその家族や子供などが、報道から強い影響を受けることを意識すること
  • 依存症については、逮捕される犯罪という印象だけでなく、医療機関や相談機関を利用することで回復可能な病気であるという事実を伝えること
  • 相談窓口を紹介し、警察や病院以外の「出口」が複数あることを伝えること
  • 友人・知人・家族がまず専門機関に相談することが重要であることを強調すること
  • 「犯罪からの更生」という文脈だけでなく、「病気からの回復」という文脈で取り扱うこと
  • 薬物依存症に詳しい専門家の意見を取り上げること
  • 依存症の危険性、および回復という道を伝えるため、回復した当事者の発言を紹介すること
  • 依存症の背景には、貧困や虐待など、社会的な問題が根深く関わっていることを伝えること


【避けるべきこと】

  • 「白い粉」や「注射器」といったイメージカットを用いないこと
  • 薬物への興味を煽る結果になるような報道を行わないこと
  • 「人間やめますか」のように、依存症患者の人格を否定するような表現は用いないこと
  • 薬物依存症であることが発覚したからと言って、その者の雇用を奪うような行為をメディアが率先して行わないこと
  • 逮捕された著名人が薬物依存に陥った理由を憶測し、転落や堕落の結果薬物を使用したという取り上げ方をしないこと
  • 「がっかりした」「反省してほしい」といった街録・関係者談話などを使わないこと
  • ヘリを飛ばして車を追う、家族を追いまわす、回復途上にある当事者を隠し撮りするなどの過剰報道を行わないこと
  • 「薬物使用疑惑」をスクープとして取り扱わないこと
  • 家族の支えで回復するかのような、美談に仕立て上げないこと

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