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「フィンランドが週休3日、1日6時間労働を検討」は不正確。「早とちりした報道」と大使館は指摘

フィンランドのサンナ・マリン首相が週休3日制、1日6時間労働制の導入を検討する考えを表明したというニュースが報道されているが、これは不正確な情報だ。

世界最年少の現職女性首相として注目を集めているフィンランドのサンナ・マリン首相が「週休3日制、1日6時間労働制」の導入を検討すると表明した、という情報が世界中で広がっている。

日本国内でも一部メディアが報じ、話題となった。しかし、結論からするとこれは「不正確」な情報だ。BuzzFeed Newsはファクトチェックを実施した。

そもそもの発端は、イギリスのThe Daily Mailをはじめとした海外メディアが、マリン首相の過去の発言を報じた記事だった。

発端は、The Daily Mailが配信した現地時間の1月5日夜の「週休3日制や1日6時間労働制をマリン首相が計画中」と記事だ。

発言自体がいつのものかは記されていないが、「人々はもっと家族や愛する人、趣味などに時間を費やすべきだと考えている」「フィンランド人の労働をより少なくすることが重要だ」というマリン首相のものとされる発言を報じた。

こうした情報をもとに、日本国内でも「計画中」「検討へ」と相次いで報じている。

最初に掲載したのは、ネットメディア・GIGAZINEだ。1月6日午後にDaily Mailを引用する形で、「『週4日&1日6時間労働』をフィンランドの新首相が計画中」という見出しの記事を配信した。

この記事は大きな反響を集め、計測ツール「BuzzSumo」で調べたところTwitterを中心に3万近くシェアされている。

また、1月7日朝には時事通信が「フィンランド、週休3日制検討 働き方改革で『家族と時間を』」と報じた。

これは「欧州メディア」を引用する形になっている。この記事は同日夕方にYahoo!ニュースのトップにも掲載され、やはり大きな反響を集めている。

駐日フィンランド大使館「早とちりした報道」


しかし、これらの情報は現段階では「不正確」だ。

BuzzFeed Newsの取材に対し、駐日フィンランド大使館の広報担当者は「誤報と申しますか、早とちりした報道のようです」と回答した。

現段階では政府やマリン首相が所属する社会民主党でも「週休3日」や「1日6時間勤務」は目標として掲げられてはいないからだ。実際に、計画もされていない。

そのうえで広報担当者は、各紙が報じた発言のソースは、正しくはマリン首相が交通・通信大臣だった、2018年8月のものであると指摘した。

「サンナ・マリンが交通・通信大臣だった昨年8月、所属する社会民主党の120周年式典のパネルディスカッションで『週休3日か1日6時間のどちらがいいか』と尋ねられた際、『時間短縮を願っている。それが社会民主党の目標になればいいと思っている』と発言しました」

また、広報担当者によると、マリン首相は当時、地元紙に以下のような意見を寄稿しているという。

「ここ100年、労働時間は短縮されてきた。週4日、6時間の労働で十分な給料を得ることは、不可能、もしくはユートピアに聞こえるかもしれない。だが、週5日、8時間もかつてはそう考えられてきた。かつて不可能と思われたことが、実現されてきた」

マリン首相自らが将来的なビジョンとして「週4日、6時間労働」を持っていることは事実だと言える。ただし、それは首相になる前の発言であることに留意が必要だ。

また、実際にフィンランド政府として「検討している」とすることは、現段階では「不正確」だ。

大使館もツイートで注意喚起

フィンランドが週休3日、1日6時間労働を検討しているという話がメディアで報道されているけれど、それは新政権と首相が所属している党の目標にもないし、計画もないんだ。確かにマリン首相は、首相になる前の去年8月に党の会と地元紙で労働時間の短縮のビジョンを持っていると語ったのは事実だけど

広報担当者によると、フィンランド国内では「マリン首相が過去に発言したことが世界で話題になっている!」といった記事が配信されているという。

BuzzFeed Newsの取材への回答後、駐日フィンランド大使館はTwitterで以下のようにツイートし、拡散している情報が事実と異なることを自ら発信。フィンランド国内の報道にも言及した。

「フィンランドが週休3日、1日6時間労働を検討しているという話がメディアで報道されているけれど、それは新政権と首相が所属している党の目標にもないし、計画もないんだ」

「こんな記事も出ているよ。フィンランドの他のメディアも、首相の過去の発言がなぜか世界中のニュースになってると報道している...」


BuzzFeed JapanはNPO法人「ファクトチェック・イニシアティブ」(FIJ)のメディアパートナーとして、2019年7月からそのガイドラインに基づき、対象言説のレーティング(以下の通り)を実施しています。

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