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住まいを失った人への支援の周知に消極的な東京都。 従来の支援のレールに乗れない人への対応は?

路上生活者や生活困窮者の支援団体が東京都に緊急要望書を提出。しかし、東京都の担当者は対応を行うかどうかについて具体的な言及は避けた。

路上生活者や生活困窮者を支援する「反貧困ネットワーク」や「自立生活サポートセンターもやい」「つくろい東京ファンド」など31の団体によって構成される「新型コロナ災害緊急アクション」は5月8日、東京都に対し緊急の要望書を提出した。

現在ビジネスホテルに滞在する生活困窮者に対して、生活保護をはじめとする支援の情報を丁寧に提供すること等を求めている。東京都福祉保健局の担当者は要望書を受け取った上で、対応を検討していくとしている。

約830人がビジネスホテルに。しかし、課題も…

東京都の推計では、都内のネットカフェで暮らす人は約4000人いるとみられている。都の休業要請でネットカフェが閉店ているため、多くの人々が寝泊りする場所を失った状態だ。

東京都は既存の支援事業「TOKYOチャレンジネット」の枠組みで、寝泊りする場所を失った人がビジネスホテルに宿泊できるようにした。今のところ、約830人がこの制度でビジネスホテルに宿泊している。

「新型コロナ災害緊急アクション」は、以下の3点を求める要望書を出した。

(1)都の支援策でビジネスホテルに入った人への相談体制の整備

(2)「TOKYOチャレンジネット」から区市に支援の枠組みが移る場合、情報共有などを丁寧に行うことや、ホテルが移動になる際に数日の猶予を持たせるなど柔軟な対応

(3)都の支援でビジネスホテルに宿泊している人に、「新型コロナ災害緊急アクション」などが開いている相談会の情報を告知

「住まいの貧困ネットワーク」の林治弁護士は、多重債務やDV、虐待など生活困窮を抱えている人の中には法律家が介入することで脱することのできる困難な状況もあると語る。

だが、法テラスや弁護士会が対面での相談会を中止しているため、支援団体が続けている相談会が非常に重要になるとして、こうした支援につなげる努力を東京都に求めた。

突き返されたチラシ、その理由は?

「新型コロナ災害緊急アクション」は要望書と合わせて、5月9日に東京都庁前と豊島区・東池袋中央公園で実施する「なんでも困りごと相談会」の案内を記載したチラシ400枚を都の担当者に手渡した。

このチラシは都議会議員を通じて2日前に東京都福祉保健局に配布を依頼したものの、断られていたという。

チラシを配布できない理由について都の担当者は「一部の民間団体による活動のもののため」と説明。改めて配布するかどうかについては「局内で検討する」と回答するに止まった。

窓口での"水際作戦"もまだ続く

なぜ、ネットカフェからビジネスホテルに移った人に、相談会などの支援が必要なのか。

毎週土曜日に都庁前で生活相談会を開いている「自立生活サポートセンターもやい」の大西連理事長は、ビジネスホテルに入っているものの、所持金がなくて困っているという人の声が寄せられていることを明かした。

「所持金数百円でビジネスホテルに入っているというような方が本当に結構います」

所持金が数百円で生活が困窮している場合、すぐに生活保護を申請することが必要だ。しかし、福祉の現場では、生活保護法で定められたルールとは異なり、もともと滞在していたネットカフェのある自治体で申請するようにという運用が行われている、と指摘する。

その結果、自治体の窓口をたらい回しにされる人や、申請のため滞在するビジネスホテルのある地域から移動を余儀なくされる人がでているという。

東京都の担当者は各区と市と協議の上で定めた東京都独自のルールがあると、説明し、すぐに対応を変えることはできないとした。

こうした東京都の返答を「当事者ファーストでない」と大西さんは強く批判。

「つくろい東京ファンド」代表の稲葉剛さんも「従来からある支援のレールに乗れますか?乗れませんか?ということで選別している」「生活に困窮している人をなんとかしようとする意思が感じられない」と指摘した。