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10秒息を我慢できれば… LINEで拡散した、コロナ感染の見分け方は誤り

「これで判定できるなら、CTやPCR検査は必要ありません。質の悪いデマであると考えられます」

新型コロナウイルスに感染しているかどうか見分ける方法として、「深く息を吸って、10秒我慢する」というセルフチェックが台湾の専門家によって提示されているという情報が拡散している。

この情報は誤りだ。BuzzFeed Newsは米国国立研究機関博士研究員として免疫学やウイルス学を専門とする峰宗太郎医師の協力を得て、ファクトチェックを実施した。

峰医師は「息を止められるかどうかということと肺炎をふくむ気道炎症性疾患を発症しているかどうかは特に関するものではないといえます」としている。

「深く息を吸って、10秒我慢する」拡散したコロナの見分け方

拡散しているのは「深く息を吸って、10秒我慢する」ことができれば新型コロナには感染していないという情報だ。この情報はチェーンメールの形式をとり、主にLINEで出回っている。

以下がその内容だ。

新型コロナウィルスは、感染されても何日も症状が出ない場合があります。では、自身が感染されたかどうか、どう分かるのでしょう。咳と熱の症状が出て、病院に行った時は大体50%は肺が繊維化されていると考えられます。即ち、症状が出て受診すると遅れるケースが多いのです。

台湾の専門家は、毎朝、自身でチェックできる簡単な診療を提示してます。

深く息を吸って、10秒我慢する。咳が出たり、息切れる等、すごく不便なことがなければ、肺が繊維症状になってない、即ち、感染されてないということです。(注:新型コロナで悪化すると、肺胞の組織が繊維化して硬くなっていくようです。)

現在、既に大変な事態になってるので、毎朝、良い空気を吸いながら、自己診断をしてみてください。

また、日本のお医者さんは、とても有効なアドバイスをしてくれています。皆んな、常に、口と喉を濡らして、絶対に乾燥した状態におかないこと。15分毎に水を一口飲むのが良いそうです。ウィルスが口に入ったとしても、水とか他の飲み物によって、食道から胃に入ってしまえば、胃酸によりウィルスは死んでしまう。水分をよく取らない場合、ウィルスが気管支から肺に侵入してしまうので、とても危ないのです。

読売新聞によると愛知県警の広報課は4月10日、この新型コロナの見分け方を公式Twitterアカウントで拡散。後に誤りを認め、謝罪した。

これで判定できるならCTやPCR検査必要ない

峰医師は「息を止められるかどうかということと肺炎をふくむ気道炎症性疾患を発症しているかどうかは特に関係するものではないといえます」とBuzzFeed Newsの取材に語る。

「もちろんせき込んでいる人などは息を止めるのは困難でしょうが、息を止められる人もいるでしょうし、健常なひとでも止められないひともいるかもしれません。これで判定できるなら、CTやPCR検査は必要ありません。質の悪いデマであると考えられます」

同様の情報が世界でも拡散しており、WHOも拡散する誤情報の1つとしてウェブサイトで紹介している

「症状や身体を診察した見立てでは発熱や咳、息苦しさ、倦怠感など風邪などとも共通する症状の組み合わせが多く、医療現場を悩ませている原因はそこにもあります」と峰医師は症状等だけで新型コロナ感染を見分けることが困難である理由を説明する。

その上で、現段階では「CTを撮影すること、PCR検査を行うことは信頼性が比較的高い検査」と語った。

では、どのような場合に医療機関を受診すべきなのだろうか。専門家会議が示す方針と同様に峰医師も以下のポイントを提示する。

「症状が出て、かつ、リスクの低い一般の方であれば4日以上続く場合、高齢者、持病のあるかたなど、妊婦などのリスクのある方は自覚症状があるならできるだけ早く、電話で指示を仰ぎ、医療機関へのアクセスを図るべきと思います」

なぜ、「繊維化」に関する情報に注目?

今回拡散された情報では肺が「繊維化」(医学的には線維化と表記)することについても言及がなされていた。

この線維化について峰医師は「新型コロナウイルス肺炎でも起こりえる」と言う。しかし、「これをことさらに取り上げる理由は全くわかりません」と違和感を示した。

「肺の線維化というのは、さまざまな原因で起こりますが、特に、慢性的な炎症が長期間続いた場合や、急性の炎症でも程度の強いものが続いた場合などに起こります。これは生体の反応であり、肺の組織内に、タンパク質からなる線維成分が多く形成されることによるものです」

「線維化にもいろいろなパターンがあり、可逆的、つまり完全な状態からそこそこ回復するものまでもありますし、逆に慢性肺疾患による線維化では不可逆的なものまであります。いずれにせよ、今回のこの流れている文における線維化というのは、ミスリードです」

また、水分を摂ることでウイルス感染を防ぐという情報にも疑問を呈した。

「健康維持には適切な水分を摂取することは重要です。しかし、水分を多く摂ったとか、こまめに摂ったからといってウイルス感染を防ぐことができたという研究は見たことがありません」

「根拠なく想像で言っているのだと考えられますが、そのようなことで感染が防げるなら苦労はありません」

時には「自分は騙される人である」という自覚も

次から次へ、新型コロナについての不正確な情報が拡散する今、情報に接するときに気をつけるべきこととはどのようなものなのだろうか。

「出元不明、ソースの添付のない情報はまず見ないことです。回ってきた場合には広げたりしないこと」と、峰医師は改めて強調する。

「特に身近な人から回ってきたり、『信頼している人』や『医療現場の人』などからであったり、そうしたセリフが書いてあっても、それは情報の正しさの何の担保にもならないことを知っておくことが重要です」

「公的な情報源を中心に、出元がはっきりしていて根拠も示されている情報を複数チェックして、何が正しいかをクロスチェックしながら考えていくことが必要です。一度でもこういう類の情報を信じてしまったり、不安に思ったり、拡散したりしたことのある人は自分は騙される人であると認識しておくことも大変重要だと思います」


厚生労働省のQ&Aサイトはこちらから。峰医師もブログで新型コロナウイルスに関する情報を発信している。

また、世界中で広がる「あやしい情報」のファクトチェック一覧はNPO法人「ファクト・チェック・イニシアチブ」(FIJ)の特設サイトで見ることができる。

BuzzFeed Newsでもクラスター対策班の最大の懸念は重症化する高齢者の増加。専門家の最新報告で見えたことなどのコンテンツを配信しています。一覧はこちらから。


BuzzFeed JapanはNPO法人「ファクトチェック・イニシアティブ」(FIJ)のメディアパートナーとして、2019年7月からそのガイドラインに基づき、対象言説のレーティング(以下の通り)を実施しています。

ファクトチェック記事には、以下のレーティングを必ず記載します。ガイドラインはこちらからご覧ください。

また、これまでBuzzFeed Japanが実施したファクトチェックや、関連記事はこちらからご覧ください。

  • 正確 事実の誤りはなく、重要な要素が欠けていない。
  • ほぼ正確 一部は不正確だが、主要な部分・根幹に誤りはない。
  • ミスリード 一見事実と異なることは言っていないが、釣り見出しや重要な事実の欠落などにより、誤解の余地が大きい。
  • 不正確 正確な部分と不正確な部分が混じっていて、全体として正確性が欠如している。
  • 根拠不明 誤りと証明できないが、証拠・根拠がないか非常に乏しい。
  • 誤り 全て、もしくは根幹部分に事実の誤りがある。
  • 虚偽 全て、もしくは根幹部分に事実の誤りがあり、事実でないと知りながら伝えた疑いが濃厚である。
  • 判定留保 真偽を証明することが困難。誤りの可能性が強くはないが、否定もできない。
  • 検証対象外 意見や主観的な認識・評価に関することであり、真偽を証明・解明できる事柄ではない。