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年明けに3393世帯が家を失う可能性も。「自助」ではもたない… 支援団体が政府に支援の拡充を要望

現在の住居確保給付金の給付期限は最長で9ヶ月。支援団体はこのままでは年末年始にホームレス化する人が続出しかねないとした上で、住まいを失う人を一人でも減らすため、必要な支援を行うことを訴えている。

このままでは、年末年始にホームレス化する人が続出しかねないーー。

新型コロナによる不況が長期化することを受け、最大3393世帯が住まいを失う可能性があるとして、支援団体が9月25日、厚生労働省に申し入れをした。

要望書では、住まいを失う人を一人でも減らすため、「住居確保給付金の拡充」など、必要な支援をするよう求めている。

なぜ、住まいを失う人がいるのか?

なぜ住まいを失う人が増えかねないのか?

その原因は住居を失うおそれがある人のための家賃支援制度「住居確保給付金」という制度の期限にある。

この制度は家賃相当額を自治体が支給するもの。支給額は地域ごとの上限の範囲内となっており、返済の必要はない。

東京23区の場合、単身世帯は53,700円、2人世帯は64,000円、3人世帯は69,800円が支給上限額として設定されている。

これまでは失業者を対象としていたが、新型コロナウイルスの影響で休業などが相次ぎ、4月20日に厚労省は支援対象を拡大。4月30日からは受給のために必須としていたハローワークへの求職申し込みを不要とした。

支援を受けるには収入や資産について設けられている基準を下回っていることなど、いくつかの条件を満たす必要があるが、満たしている場合には住まいを失うリスクを回避する助けとなる。

NHKによると、2020年4月に受給を開始した世帯数は3393件、5月に開始した世帯異数は2万6591件、6月に受給を開始した世帯数は3万5241件、7月に受給を開始した世帯数は2万554件にのぼる。

問題視されているのが、その期限だ。期間は原則3ヶ月、最長で9ヶ月とされており、4月に受給を開始した場合は1月に期限を迎えることになってしまう。

コロナ禍において、経済がいつになれば回復するのか見通しは立っていない。1月以降、収入が回復しないままに期限を迎え、家賃を支払うことのできない人々が続出する可能性があるのだ。

期間だけではない問題点も

これを受け、生活困窮者を支援する一般社団法人つくろい東京ファンドらが25日、衆議院第一議員会館を訪れ、厚労省に要望書を提出した。

支援団体らが指摘する問題は期間だけではない。

1つ目が収入要件の問題だ。現在の収入要件は生活保護水準となっており、それよりも世帯収入が多い場合には利用することができない。そのため、収入が低く、家賃支払いに困っている場合でも対象外となる人がいる。

2つ目が給付額の問題だ。現在の給付額は生活保護制度の住宅扶助制度に準ずる水準に設定されている。しかし、その金額は東京23区の場合、単身世帯で53,700円。これだけで家賃を賄うことは難しい。

3つ目が相談員が不足しているという問題だ。相談窓口には、コロナ禍で相談が多く寄せられている。しかし、人員体制は十分とは言えず、窓口担当者は疲弊しているという。

この日提出された要望書に記された内容は、これらの実態を改善するよう、以下の6点が盛り込まれた。

(1)支給期間について、最長9ヶ月までとなっている上限を見直し、少なくとも1年間とすること。また、公営住宅・セーフティーネット住宅への転居を支援すること。

(2)支援対象者についての「2年以内の離職、減収」という要件、支給要件の「誠実かつ熱心に求職活動を行うこと」という項目を当面の間撤廃すること。

(3)収入要件について、現行の基準を改め、公営住宅入居基準の21万4000円等を参考に、大幅に引き上げること。

(4)支給額について、現行の支給上限額を見直し、支払い家賃額に見合った支給額とするよう検討し、引き上げを行うこと。

(5)この制度の実施主体の窓口「生活困窮者自立支援相談支援期間」の人員の大幅増や支援を行い、負担軽減と迅速な受付、支給が行われるようにすること。

(6)以上の事項を実施するため、住居確保給付金の予算を大幅に増額し、財源を確保すること。また、給付金利用者の実状を全国的に調査し、制度の拡充・改善を行い、全国的な「家賃補助制度」の実現につながるよう検討すること。

「このままでは自殺も…」支援の現場に募る危機感

つくろい東京ファンドの稲葉さんは「コロナ以前に作られた制度のため、現状に合っていない」と問題提起する。

「年内に収束することが決まっていて、経済も復活する見通しがあるのであれば、それで良いかもしれません。ですが、長期化し、いつ収束するかわからない。経済の先行きもわからない状況の中で住まいをなんとか確保してる方が多い」

「厚労省は社会福祉協議会の貸し付けと住居確保給付金を前面に出し、一定の効果が出ていると思いますが、期限が来て、支援が終わると支えられなくなってしまう人が路頭に迷ってしまう。最後には生活保護を使えばいいじゃないかと思うかもしれませんが、生活保護については心理的ハードルが高く、親族に連絡が行くこともあり利用は進んでいません。ですので、この制度が最後の頼みの綱という方が多い。それを切られてしまうと、寒い冬の時期に深刻な状況に陥ることになります」

支援団体らは申し入れに合わせて、宮城県に住む女性からの相談メールを紹介した。その内容は以下の通りだ。

私もコロナで収入が減り月6〜7万円の収入で、なんとか食べるだけ生活しており住居確保給付金を5月から受けて今は延長しました。
コロナ前もダブルワークで生計を立てていましたが1つの仕事がダメになり、この先の仕事の見通しは、まだありません。6〜7万ではホントに生活出来ません。
住居確保給付金を9ヶ月でなく、もっと長くしてもらえるように政府に働きかけて下さい。
私は1人暮らし50歳の女性です。このままでは自殺も考えるようになってる日々です。

厚労省「9ヶ月という期間が決して短いと私は考えておりません」

厚生労働省社会・援護局地域福祉課の担当者はこうした申し入れに対し、この住居確保給付金は生活保護に至る前にある状態の生活困窮者を支援し、就労による自立を支えるための制度であることを説明。

現在の最長9ヶ月という期限については「自立に向けた活動をしていただきたいというのもありますので、9ヶ月とさせていただいています」と語り、「9ヶ月という期間が決して短いと私は考えておりません」とコメントした。

具体的な支援の拡充等について、申し入れの場で具体的に回答することはなかったものの、「いただいた意見をもとに検討をしていく」とした。

こうした厚労省担当者の意見を踏まえ、稲葉さんは「そもそも短期間の間に就労自立を促す仕組み自体が破綻しています」とBuzzFeed Newsの取材に語る。

「コロナで特にそれが顕著となりましたが、そもそも短期間で就労自立を促すことに無理があるという風に考えています」

申し入れの中で支援団体はそもそも仕事をしていたとしても収入が減り、家賃の支払いに困っている人がいることを強調し、自立支援のためという文脈以外で幅広く家賃補助を行う仕組みの必要性を訴えた。

しかし、両者の認識のズレは埋まることはなかった。