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コロナ専門家会議の議事録、存在しないのは政府の決定。 専門家「名前を出すのは、全然問題ない」

新型コロナウイルス感染症対策専門家会議で、誰がどのような発言をしたのかを示す発言者名が明示された議事録が存在していないことを問題視する声が上がっている。5月29日の記者会見では、この件についての質問が相次いだ。

5月29日、新型コロナウイルス感染症対策専門家会議後に開かれた会見で、各社から質問が相次いだ点がある。「議事録」の有無だ。

議事録がない?なぜ問題に

共同通信が「コロナ専門家会議、議事録『作成せず』」という記事を配信したのは5月28日。このニュースはSNS上で拡散され、話題となった。

新型コロナウイルス感染症対策専門家会議は毎回の会議後、「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」と題した提言をまとめた資料を、厚生労働省のウェブサイトで公開している。また、各会議の議事概要も内閣府のウェブサイトで公開されている

合わせて記者会見を開き、概要資料を提示した上で、報道機関からの質問に長時間、回答している。

いま問題となっているのは、誰がどのような発言したのかを記録した議事録が、残っていないということだ。

なお、会議の記録をつくるとすれば、その責任は会議に出席する個々の専門家ではなく、日本政府にある。

ガイドライン上は「問題ない対応」

内閣府が定める「行政文書の管理に関するガイドライン」では、「歴史的緊急事態に対応する会議等における記録の作成の確保」という項目がある。

これは、2011年の東日本大震災と福島第一原発事故当時、政府が開いた各種の会議の議事録などの記録が残されておらず、政府の意思決定のあり方を検証することが難しくなった反省からつくられた規定だ。

当時は、民主党政権の時代。野党だった自民党は、政府がきちんとした議事録を残していないことを、強く批判していた。

新型コロナウイルス感染症は、この「歴史的緊急事態」に指定されている。だが、ここでは「政策の決定又は了解を行わない会議等」では発言者を記載した文書を作成しなくても良いと定められている。

そのため、新型コロナウイルス感染症に対する専門家会議の発言者が明記された資料が存在しないことは、ルールの上では問題ないということになる。

だが、歴史的緊急事態である新型コロナウイルス感染症への対策を検証する上では、発言者が明記された議事録が必要ではないかという声が、SNSを中心に上がった。

専門家会議としての見解は?

尾身茂副座長は「あくまで政策決定を行うのは政府であり、専門家会議は科学的な立場から提言をする立場」「議事録をどうするかは、基本的に政府が決めること」と強調した上で、以下のように述べた。

「これだけ重要な時期は100年に1度。我々がどんな考え、根拠で、どういう情報をもとに政府へ提言したかをしっかりと説明するのは私共の責任だと思っています」

「そのために、これまで15回分の提言書も公開し、質疑応答もしている。我々としては、情報共有をしっかりと紙と会見を通してやってきました」

発言者が明記され、その場の熱量も伝わる議事録が公開された方がより伝わるのではないかという質問に、脇田隆字座長は「情報の提供、公開については、できるだけのことをやらせていただく。会議の議事録や議事概要について、こういうふうにしてくださいと言うことではない。それが筋だと思います」と語った。

また発言者が明記されていなくとも、議論の中身が事細かに公開されていることは「間違いない」とした。

「一番大事なことは、どのように議論し、どのように考え、提言しているか。どのような人がどういった発言をしたのかも重要かもしれませんが、結果としてそれらを集約したものは提言で出ています」

「議事録が公開されていないために、専門家会議が批判されているかどうかはわかりませんが、政府の方で決めている。構成員の中にはそういった(議事録公開を求める)意見を言う方もいます。そして、このことについては(構成員)全員に確認をしていることでもありません」

公開検討する要望、専門家の中からも

会見の中では、専門家会議の立場としてではなく、個人としてどのように思うのかを聞く質問も。

脇田座長は「私個人としてはどちらでも良い。議論についての考えや政府に対する提言は書面を作っていますし、記者会見でも十分にお話ししています」と答えた。

専門家会議のメンバーの川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長は、5月14日の専門家会議後の記者会見で「私たちも、誰がどう発言したか、責任を持ったほうが良いので、そういう方(議事録を公開)がありがたい」と発言し、議事録を公開しないという政府の方針に異を唱えていた。

尾身副座長は発言者を明記した議事録を公開するかどうかは「政府が決めること」と改めて説明。その上で、発言者を明記した議事録を公開することに「反対していると言う人はいないんです」と言及した。

また5月29日の専門家会議では、発言者を明記した議事録を公開することを検討するよう求めた構成員がいたことも明かしている。

「個人的には出しても問題ないと思います。名前を出すのは、全然問題ない。我々自身がどうこうと言う話ではありません。それよりも、我々の仕事はこの専門家会議でどのように提言し、政府にやっていただくか、それが一丁目一番地です」