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アベノマスクは「失敗だった」、コロナ対策は「結果オーライ」 初めての民間調査で見えた政府の本音

「一番難しかったのは緊急事態宣言」「泥縄だったけど、結果オーライ」民間の調査会がヒアリングを重ねる中で見えた政府関係者の本音とは。

一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブが、日本の新型コロナウイルス感染症に対する対応を検証するために設置した「新型コロナ対応・民間臨時調査会」。

同調査会が10月8日、日本記者クラブで会見を開き、報告書について発表を行った。

報告書は安倍晋三首相(当時)、菅義偉官房長官(当時)、加藤勝信厚生労働相(当時)、西村康稔新型コロナウイルス感染症対策担当相、萩生田光一文部科学相をはじめとする83名への101回におよぶヒアリングをもとにまとめられたものだ。

今回の調査対象期間は、日本国内で初めて感染者が確認された1月15日から緊急事態宣言が解除され、通常国会が閉会する7月までとなっている。

この報告書には政府首脳や官邸スタッフや官僚など、様々な関係者の生の声が収録されている。調査の過程で一体どのような声が聞こえてきたのか、その一部を抜粋する。

安倍首相「一番難しかったのは緊急事態宣言」

時事通信

安倍首相は同調査会のヒアリングに対し、一番難しかった決断は緊急事態宣言を出すことであったと振り返っていたという。

日本においては、緊急事態宣言は法的拘束力を持たないため、8 割削減が達成できるか「心配だった」とし、不安の中で宣言を発出していたと同調査会はまとめている。

都知事のロックダウン発言で「結果としては緊急事態宣言が遅れた」

時事通信

西村康稔新型コロナ担当相

緊急事態宣言をめぐっては、もう1つ興味深い発言が報告書には記録されている。

それが、西村新型コロナ担当相の言葉だ。

西村新型コロナ担当相は3月23日の小池百合子都知事の「ロックダウン」についての発言が、「1つのターニングポイント」になったと指摘。

都知事の発言後、、東京都で食料品の買い占め等が生じた様子を目の当たりにし、官邸は緊急事態宣言発出により国民が一層のパニックに陥るのではないかと懸念したという。

そのため、西村新型コロナ担当相は小池都知事のロックダウン発言によって「結果としては緊急事態宣言が遅れた部分があったと思います」と語ったという。

一斉休校要請「もう決めたんですか」

時事通信

萩生田光一文科相

緊急事態宣言と合わせて、国民に大きな影響をおよぼしたのが2月末に発表された全国の一斉休校要請だ。

2月24日に専門家が感染拡大の「瀬戸際」と発表したことを受け、総理室は急遽方針を転換して大規模イベントの自粛と全国一律の一斉休校要請を決断したと調査会はまとめた。

その際、萩生田文科相は「もう決めたんですか」と不満を述べ、「本当にやるんですか、どこまでやるんですか」と疑問を呈したという。

安倍首相は「国の責任で全て対応する」と説明した上で一斉休校の要請を出した。

アベノマスクは「失敗だった」

時事通信

4月1日に安倍首相によって全戸配布することが発表された布マスク(通称アベノマスク)は厚労省や経産省との十分な事前調整なしに首相周辺主導で決定された政策であったと同調査会はまとめている。

配布の遅れなども後に問題となった。官邸スタッフは調査会のヒアリングに「総理室の一部が突っ走った、あれは失敗だった」と語った。

「8割だけ言うというのは採用できない」

時事通信

緊急事態宣言の発出も行われた中、政府と専門家の間でも「交渉」が続いていたという。

報告書の中で一例として挙げられてるのが「最低7割、極力8割」の接触機会削減の方針だ。

尾身茂会長は「理解したけれども、8割だけ言うというのは採用できないと、非常にはっきり言われました」と証言。最後は安倍首相と話し合い、7割も8割も両方とも残す表現にすることで合意を得たという。

「泥縄だったけど、結果オーライ」

8月28日、安倍首相はコロナ対応を振り返り、「今までの知見がない中において、その時々の知見を生かしながら、我々としては最善を尽くしてきたつもり」と述べている。

こうした中、官邸スタッフはその実態を「泥縄だったけど、結果オーライ」と表現したという。

調査会、報告書は菅首相に提出済み

日本記者クラブ

アジア・パシフィック・イニシアティブ代表の船橋洋一氏

三菱ケミカルホールディングス取締役会長で調査会の委員長を務めた小林喜光氏とアジア・パシフィック・イニシアティブ代表の船橋洋一氏は会見に先立ち、8日午前に官邸を訪れ、この報告書を菅首相に提出した。

アジア・パシフィック・イニシアティブは2011年3月11日に東日本大震災が発生した際にも、民間の臨時調査会を発足し、調査を実施している。

今回も9年半前と同様に、「課題はどこにあり、何をしたら良いのか、しっかりと検証する必要があるのではないか」と考えたと船橋氏は会見で語った。

また、今回の調査について、「あくまで政府の取り組み、対応措置、それによる人々の行動変容がどういった結果をもたらしたのか。法制度のあり方であるとか、意思決定のあり方、司令塔はどうであるか。ガバナンスを中心に検証しようではないかということで進めてきた」としている。

今回の調査を振り返り、船橋氏は2009年の新型インフルエンザの流行を経験し、専門家らが政府に対して検査体制等の拡充を求めていながら、感染症に対し「(日本は)備えをやめていた」と言及。

「本格的に備えようとすると、不安を煽る、不必要な誤解と不安を招く。これらは安全神話を生みますけれども、福島と似たものを感じます」とこれまで感染症への対策を行ってこなかった政府に対し苦言を呈した。

Contact Yuto Chiba at yuto.chiba@buzzfeed.com.

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