愛知県・大村秀章知事の解職請求(リコール)を求める署名活動で、43万5千筆の83%に不正が疑われている。
愛知県選挙管理委員会は2月15日、愛知県警に被疑者不詳で刑事告発する方針を決めた。告発状は同日、県警に受理された。
署名活動は「高須クリニック」の高須克弥院長らによって行われ、名古屋市の河村たかし市長が後押ししていた。
何が起きているのか。経緯を振り返る。
発端は「表現の不自由展」の展示への批判

大村知事のリコールを求める署名活動は2020年8月にスタート。発端は「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」に対する批判だった。
高須氏らは「お辞め下さい大村秀章愛知県知事 愛知100万人リコールの会」を設立し、署名活動や資金集めをしていた。
署名活動はその後、昨年11月に高須氏の体調悪化を理由に休止している。
この段階で集まっていた署名は約43万5000筆。リコールに必要な署名数は86万6000筆のため、必要な署名数には到達していない。

名古屋市の河村市長も高須氏と共に街頭に立ち、署名への協力を呼びかけた。現職の名古屋市長が愛知県知事の解職を求めるという異例の事態だ。
河村市長は「あいちトリエンナーレ2019」や「表現の不自由展・その後」への批判を繰り返しており、昨年3月には名古屋市が負担することになっていたトリエンナーレの開催資金の一部である3300万円を支払わないことを決定している。
大村知事はこの名古屋市の決定を受けて、トリエンナーレの実行委員会会長として名古屋市を提訴している。
署名、83%に不正が発覚
署名が不正に水増しされているという疑惑が浮上したのは、昨年11月。
書いた覚えのない署名が提出されているといった声を受け、県選管は提出された全署名の見直しを各市町村の選挙管理委員会に求めていた。
県選管は今年2月1日、提出された署名約43万5000人分のうち約83.2%が有効と認められなかったとの調査結果を発表した。
県選管の調査によると、無効と判断された署名の約90%は同一の筆跡とみられ、約48%は選挙人名簿に登録されていない人の署名だったという。
中日新聞によると、すでに転居した人や死亡した人の署名も複数確認されているという。
大村知事「偶然の一致とは思えない」

大村知事は2月1日の会見で、この署名の不正について、以下のように語っている。
「率直に言ってですね、驚愕をしております。驚くべきことだと思っております。署名と称するものの83.2%が有効でない、無効だと」
「そして県内のほぼほぼ全市町村が83%、名古屋市が83.1%。名古屋市以外の市が83.21%。(全体に占める不正署名の割合の)数値が県内全市区町村でほぼ並んでいる。これは、偶然の一致とは思えない」
「同一人による筆跡が90%。選挙にん名簿に登録していないのが48%。選挙人名簿にない受任者が24%。驚くべきこと、驚愕すべきことだという風に思っております」
河村市長「私も被害者」

こうした事態を受け、県選管は2月15日、地方自治法違反の疑いで、愛知県警に被疑者不詳で刑事告発する方針を決めた。
署名の不正をめぐっては、同県弥富市の市議会議員5名や碧南市の市議会議員3名が、自身の名前や住所などが不正に署名に利用されているとして、容疑者不詳の告訴状を名古屋地検に提出。
一方の高須氏も「何者かが署名簿に偽造署名を紛れ込ませて活動を妨害した」として、名古屋地検に地方自治法違反などの容疑で容疑者不詳の告発状を提出している。
なお、高須氏や河村市長は一連の不正への関与を否定。河村市長は「私も被害者」と訴えている。
高須氏は15日、自身のTwitterで県選管が刑事告発したニュースをシェアし、「やっと動いてくれた。全容の解明を望みます」とコメントしている。