暗闇に怪しく浮かび上がる……その写真家が夜、公園の遊具を撮る理由

    幻想的で、すこしふしぎ。

    彼は小ぶりの黒いリュックサックを背負い、ママチャリに乗ってやってきた。

    黒縁メガネをかけた少し細身の“おじさん”カメラマン、木藤富士夫さんが撮るのは、夜の公園にひっそりと佇む遊具たちだ。

    「2、30年前か、もっと昔の人が作った遊具って、結構シュールで好きなんですよ」

    木藤 富士夫

    (場所:千葉県 香取市わんぱく公園)

    以前は屋上遊園地を撮影していたが、2014年ごろ主要な屋上遊園地の閉鎖が相次いだのを機に、次の作品として公園の遊具を選んだという。

    「屋上遊園地もそうだったんですけど、こういうのがちょっとでも長く残ってもらいたいと思っているんで、ネットにアップする時も必ず住所と場所を書いています」

    「やっぱり行ってもらいたいんですよね」

    木藤さんは自身のサイトやTwitter(@ParkPGE)などのSNSで作品を公開している。

    実際の作品を見ながら、木藤さんに話を聞いた。

    木藤 富士夫

    (場所:東京都 北区王子6丁目児童遊園)

    「これは、すぐ隣に保育園か幼稚園があるので、撮ってて怪しまれて声をかけられました『怖いんですけど』って」

    撮影方法は明かされなかったが、1カットの遊具の撮影に長い時で5〜6時間かかることもあるという。夜間の長時間に及ぶ撮影を木藤さんは「肉体労働の塊」と形容する。

    「1カット3時間かかって途中から雨とか降ってきたりすると泣きますよね。もう少しで撮り終わるのに……」

    「もうちょっとで終わるという時に高校生がたむろしてきたりということもあって、『すみませんが……おじさん今ここでやってるんです……』とお願いしたことが何回かあります」

    木藤 富士夫

    (場所: 神奈川県 藤沢市後河内公園)

    「これはたまたまGoogle Earthで見つけたんです。怖いですよね。可愛さゼロ。不気味。隣は墓地だし」

    木藤 富士夫

    (場所:東京都 町田市つくし野ながぐつ児童公園)

    「駅から歩いて10分くらいのところですけど、ここは住宅街の真ん中なので怪しいですよね。早く終わらせたくてしょうがないのでドキドキしながら撮ってます。常に」

    木藤 富士夫

    (場所:北海道 紋別市ホワイトビーチ)

    「これは紋別市。旭川からバスで2時間くらいのところにある街ですね。オホーツク海沿岸で、砂浜にある遊具です」

    「秋に行ったんですが、ホテルの人も『流氷がないのになんで人が来たんだろう』みたいな顔をされましたけど……。いいところですよ」

    木藤 富士夫

    (場所:沖縄県 那覇市三重城団地内)

    「1週間、家族旅行で沖縄に行ったんですよ。カミさんには、『1日1体沖縄で遊具を撮る』と言っていたんですけど、子供と遊ぶのが楽しすぎて、夜になると寝ちゃって。最終日の夜に『いい加減撮りに行けよ』と、『この機材なんのために持ってきたんだよ』と、沖縄で言われて。渋々撮りに行った、その1枚です」

    木藤 富士夫

    (場所:千葉県 柏市柏公園)

    「これは、かなり真っ暗なところで撮ってましたね。よく見ると受話器があるんですね。いらないと思いながら作る。この素晴らしさ」

    --いらないですか?電話なら受話器が欲しくないですか?

    「ずっと(電話を)かけっぱなしですよ。しかも、今これ若い子に見せると『電卓』って言うんですよ」

    木藤 富士夫

    (場所:東京都立川市錦第二公園)

    「立川駅前です。ここ人通りが多くて、高校生カップルとかがイチャイチャしているんで、撮りづらかったですね。ここは1回撮り直しています」

    いろんな遊具を撮っていると、撮影の技術も向上してくる。撮影後に納得のいかない遊具はもう一度撮りに行くこともあるという。

    「もし、壊された時に僕が持っているベストな状態で写真を撮っておきたいと思っているんです。勝手にこれがベストだと思っている。失礼な話だけど」

    木藤 富士夫

    (場所:和歌山県和歌山市 和歌山交通公園)

    「これは、撮影に5、6時間かかってて、嫌ですよね」

    「この公園は和歌山市の交通公園の遊具でしたが、知り合いの和歌山の本屋さんがツイッターで遊具が壊されるかもしれないとつぶやいていたので、和歌山県に問い合わせをしてみるとバイパス工事で、あと数日後には取り壊しが開始してしまう状況でした。和歌山県の担当者の方に、写真を撮りたいから取り壊しを待ってもらえないかと問い合わせをしたら、工事の順番を変えるから撮影に来てもいいとの連絡をいただいて、すっ飛んで撮りに行った写真です。ですので、今はもう存在しない遊具です」

    木藤 富士夫

    (場所:大阪府八尾市久宝寺緑地)

    「カメラマンやフォトグラファーは被写体のありがたみを知らなきゃダメですね。苦痛だけど、遊具を作った人がこんな面白いものを作っていることをベストな形で紹介したいんです」

    「昼間に撮ってもいいんですけど、僕は撮る仕事をしているから、僕が今持っている技術の最大限を生かしたい。昼間見るときよりも、もっと綺麗に撮れたらいいなと」