遊助。上地雄輔として人気絶頂の2009年にソロとしてアーティスト活動をはじめてまもなく11年目を迎える。現在40歳。TV番組「クイズヘキサゴン」で生まれた羞恥心のメンバーとしてブレイクしてから10年以上の歳月が経った。
3月11日にリリースするアルバム『遊言実行』では、YouTuberフィッシャーズのメンバーである、んだほとコラボレーションした楽曲「HERO宴 遊turing んだほ」も挿入される。

ネットで活躍する若者を目の前に、どんな気持ちが芽生えただろう? テレビを中心に活躍しつつ、遊助に聞いてみた。
新しい世代を前に、焦燥感にかられることはありますか──?
フォロワー数は戦闘力じゃない
──遊助さんは主にテレビで活躍されてますが、YouTuberってどう映りました?
俺はね、実はネットに弱くて(笑)。YouTuberも、んだほを通して知ったんです。彼は俺のファンでいてくれた子で。
──んだほさんが遊助さんのファン。
YouTuberの子が自分のことを応援してくれているとは思わなくて。結婚相手とも俺のライブで出会ったんですよって言われて二度驚く(笑)。
そういう縁もあって、一緒に仕事ができたらなと思って声をかけさせてもらったんです。
もうひたすら勉強になった。プライベートとかある? つらくはない?とかいろいろ聞いちゃいましたね。俺にはできない仕事してると思いました。
──遊助さんも芸能人としては早い段階でブログを始めていたので、自分を出すのに慣れているのかと思いました。
いや……全然ですよ! 2008年くらいかな、ブログはマネージャーに頼まれて始めました。ずっと嫌だって言ってたんだけど「1週間だけでいいから」って言われてしぶしぶ……。そうしたら、数字が想定以上に出てしまって、やめるにやめられなくなっただけ……(笑)。
ネットって良くも悪くも数字が出ちゃう。YouTubeで刺激が大事だから目を引く派手さも必要だし、SNSで目立ちたくなる気持ちもわかるんです。フォロワー数が戦闘能力みたいに見えてしまう。
「これだけフォロワーがいてすごいですね」っていうのが褒め言葉になる時代。
──上地さんのオフィシャルブログが「世界で最も1日の閲覧ユニークユーザー数が多いブログ」としてギネス記録になったのを覚えています。
俺もすごく言われました……でも、違うから。勘違いしやすいけど、フォロワー数は戦闘力じゃない。
例えば、1000万フォロワーがいたとして東京ドームが埋まるほどお客さんが来てくれるとは限らない。ブログにたくさんコメントが付くとも限らない。逆にフォロワー数が100人でも、ライブに足繁く通ってくれるコアなファンをがっちり掴んでいるとか、すごく歌がうまいとか。
数値化されるとよくわからんくなっちゃうけど、直接肌で感じてみないとわからないから。
「劣化」ではなく「変化」
──若い世代を見ていると、焦りや嫉妬心を感じたり、マウントをとりたくなったりしませんか?
うーん……自分を重ねることはあるけど……マウント取りたくなることは、ほぼない。今の若い世代たちはすごく礼儀正しい。俺が20代の時よりも落ち着いていてちゃんとしているから……自分の方がガキだなって思う。
……あんまり、自分の年齢を意識したことがない……かな。
──体力の衰えも、ですか?
ない! 体力はなくなってないですね。超元気! 深夜にラーメン食べちゃったなぁと罪悪感を覚えることはあるけど、ライブで踊ったり走ったりしてるし。40代の今が一番元気で楽しい。
──芸能人に対して「劣化」と悪口を言う人もいますね。
「劣化」って人を悪く言いたいときに使う言葉ですよね。俺の中では「劣化」はなくて「変化」。芸能活動とか外見に関係なくそう思います。
──すごくポジティブ。
ポジョティブというか、問題が起きた時に「何をすればいいのか」「なぜ問題が起きたのか」をパッと考えてすぐ動いちゃうタイプなんだと思ってます。ぐるぐる同じことで悩んでいても先に進まないから。
もちろん、悩むときもある。そういうときは「どうして俺は同じことを考えてるんだろう?」と自分に質問をぶつけてみる。たいていは「今は悩んでいたい」という結論に行き着く。
その気持ちはその時しか生まれない。道徳的に良くないなとか、常識的にダメとか。自分の感情を押し殺しちゃうのはもったいない気もする。
「あの・・こんなんできましたケド。」のタイトル縛りをやめた理由

──不安になることはないですか? 例えば、音楽を始める時には「タレントがやれるのかよ」とバカにされたと聞きました。
あはは。「辞めたほうがいいんじゃない?」って言われました。でも、天の邪鬼で負けず嫌いな性格だから止められると前のめりになっちゃうんです。不安はあまりなくて、どうすればネガティブな意見を覆せるのかなってずっと考えてました。「ほらね、大丈夫でしょう?」って。
とはいえ、「音楽に本気じゃない」と言われても仕方がない気持ちもありました。だから、デビューアルバムが『あの・・こんなんできましたケド。』になったんです。
──どういうことですか?
音楽を始めるきっかけになったのが、『クイズ!ヘキサゴンII』の羞恥心というグループで。「やってみて」と声をかけてもらったものだった。羞恥心で活動していく中で「ソロで曲を作ってみなよ」って言われてできたのが『ひまわり』でした。
いざ、発表してみたら「歌詞がすごくいい」「元気が出た」と、予想外に褒めてもらったから、応援してくれた人たちに「あの・・こんなんできましたケド。」という気持ちだった。だからそのままタイトルにしちゃいました。で、あれよあれよと……気がついたらこんな感じになっちゃったっていうのが毎回。「あの、すみません、聴いてほしいです」みたいな感じ。
──ファンから愛されてきたタイトル縛りですが、今作から『遊言実行』とガラリと雰囲気の変えたのはなぜですか?
2009年3月11日にメジャーデビューして、まるまる11年が経つ。去年『遊助BEST 2009-2019 〜あの・・あっとゆー間だったんですケド。〜』もだして一区切り。新しい一歩を踏み出したかった。あの、控え目な感じでずっとやってきたけど、11年やってようやく自信がついた。

で、四字熟語「有言実行」と名前をかけ合わせてみました。みんなも一緒に実行に移そうぜっていう。
──アーティスト活動を始めて、自分の中で変化はありましたか?
うん。ありましたね。責任というか、チームを考えるようになりました。遊助は俺が中心の仕事だから、代わりが効かないし誰かが守ってくれるわけではない。だから、最初は「俺が俺が」という感じだったんですけど、それって周りあってのことなんだなぁ。何か不備があったり、事故が起きたらネクタイ締めて謝るのは俺。責任って「持つ」ものではなくて「とる」ものだなぁって。
20代って抑え込まれることも多いから反発心が生まれるのも自然。イライラしながらも自分は「これは譲れない」っていうものを見つけて、個性にしていかないとね。30代はそういう時期だと思います。そうしないと、若くて勢いのある人たちに嫉妬しちゃうんじゃないかな。
──すごく楽しそうに歳を重ねていますね。
嫌だなぁと思ったり、怒ることもある。「超楽しい毎日」が続くのは、それはそれでヤバい。
撮影の合間にライブのリハーサルとかレコーディングとか……ハードだけど、試練があるからライブが楽しくなる。毎日焼肉食べたら飽きるでしょう? それと同じ。
仕事も大変な面ってあるけれど、本当に辞めたかったら辞めてると思うんです。辞めないってことは辞められない理由がある。例えば「夢が叶わなくて不本意な仕事をしている」みたいな話ってよく聞くけど、履歴書を書いている時点で何かしらとっかかりがあるはずなんですよね。
どんな人でもストレス抱えて生きてるし、自分の悲劇って大きく言いたくなっちゃう。ムカつくことを誰かにプレゼンして、理解してほしくなる。でも、それって自分が嫌だったことを自分の口で言い、自分の耳で聞く行為でもあるから、普通に気分悪くなると思う。もったいない。相手も嫌な気持ちになるだろうし。自分の口から出る言葉くらい、気持ちのいいものにしたい。