「ここはおごるからお金を貸してください」人気芸人の愛され技術が斜め上すぎた

    2019年に『全力!脱力タイムズ』で10年ぶりに突如復活を遂げたアンタッチャブル。2003年のM-1グランプリで敗者復活し、ブレイクした彼らは2004年に優勝を果たした。人気絶頂のなか長期間のコンビ活動休止。現在はブランクを感じさせないコンビでの活動を見せる。

    2019年に『全力!脱力タイムズ』で10年ぶりに突如復活を遂げたアンタッチャブル。復活劇にはファンだけでなく、同業者からも「待ちわびた」との声が相次いだ。

    映画『それいけ!アンパンマン ふわふわフワリーと雲の国』で、雲の長老役を務めるアンタッチャブル・山崎弘也は「自分たちは可愛がってもらえる後輩力が高い」と自身の強みを分析する。老若男女から愛される存在になるためにはどうすれば良いのか?

    『それいけ!アンパンマン ふわふわフワリーと雲の国』は、左手に持っているフワリーとドキンちゃんの友情が描かれる。

    「もしかしたらいつか復活するかも」みたいな状態で一生引き伸ばしてもよかった

    ──2019年に『脱力タイムズ』でのアンタッチャブル復活は、くりぃむしちゅー・有田さんからの打診があって実現したそうで。そもそも、アンタッチャブルはなぜ活動休止していたんでしょうか。

    冗談っぽく聞こえちゃってるかもですけど、本当にひとりが楽だったんですよねえ……(笑)

    スケジュール合わせるのも2人だと大変じゃないですか。相方も、ピンでめちゃくちゃ仕事してましたから。「飯、食おうよ」って言っても「ごめん、今仕事で日本にいないわ〜」って返事が来るぐらい。

    お互い仕事ができてるなら、このままでもいいんじゃないかっていう気持ちがあり。僕たちは活動休止中も普通に飯を食ったりしていたから、感動の再会でもないし。

    「アンタッチャブルとしてまた漫才をやって欲しい」と声があるのは聞いていたんですけど、「やってもらいたい」って思っているうちが一番楽しかったりするじゃないですか。「もしかして、俺たちに復活してほしいと思ってんの〜?」みたいな(笑)

    実際やると「あ、こんなもんだった……」って思われかねない。だったら「あの2人がいつかまた共演する日は来るのかな」みたいな状態で一生引き伸ばしてもいいかなって。

    ──有田さんからはいつ打診があったのですか?

    2019年の8月ぐらいですね。毎年、ゴルフをしに軽井沢へ行ってるんですけど、その場で「復活するんだったら、脱力タイムズでどう?」って。「脱力タイムズ」は、相方が1人で出るときに、何度も「アンタッチャブル復活か!?」と伏線を張り続けてくれていたんです。柴田が出演するとき、僕ではなくバービーちゃんが出る、みたいな(笑)

    復活のときも、いったん俳優の小手伸也さんに出てもらってからの、僕が登場っていう座組みにしようって。

    ──小手さんは、スケジュール的に出演は厳しかったんですよね。

    そうそう。有田さんが楽屋で「小手さんじゃなきゃダメなんです」って頭を下げてくださったそうで……「あざーす!」って感じですよね。

    8月に有田さんと話したときは「柴田、腰抜かすぞ」みたいな感じで、「しめしめ……」って思ってたんですよ。でも、収録前日から緊張しすぎちゃって、テンパってましたね。収録のときのこと、覚えてないですもん。

    表舞台から去る寸前だったM-1前夜

    合コンで盛り上げるときの山崎さん

    ──有田さんとは、いつ出会ったんですか?

    僕が19歳ぐらいのときですね。人力舎がやってる「バカ爆走!」っていう若手のお笑いライブにくりぃむしちゅーのお二人が来てくれて、楽屋で話すようになったのが出会いです。当時は、くりぃむしちゅーではなく、海砂利水魚っていうコンビ名でしたけど。

    それから、有田さんの仕事現場についていく感じで、車の運転をするようになった。有田さんの仕事の後、しゃべって飲みに行っての繰り返し。

    有田さんと山崎さんの関係性に似ているドキンちゃんとフワリー。© やなせたかし/フレーベル館・TMS・NTV ©やなせたかし/アンパンマン製作委員会2020

    ──今回、山崎さんが声優を務める「アンパンマン」でいうと、有田さんがドキンちゃん、フワリーが山崎さんみたいな感じですね。お姉さんが小さな子をお世話する、みたいな。

    そうです、そうです。僕がフワリー的に有田さんについていってました。毎日、ほぼ一緒にいるから「いっそのこと座付きの作家になっちゃいましょうか」って、たとえ話をしていたんです。月に20万とか30万で雇ってもらう、みたいな。コンビとしてM-1に出られるのもそろそろ最後になるし。

    ──M-1って、昔はコンビ結成から10年以内じゃないと出られなかったですもんね。

    そうそう。M−1の出場資格もなくなるから、いよいよだなと。有田さんから直接打診があったわけじゃないんですけど、たとえ話が現実味を帯びてきたのが2003年の年末でした。

    ──「このままでいいのか」という焦りは?

    焦りがなかったわけではないけど、毎日が楽しすぎたんですね。一緒に現場行って、収録現場で賑わっているところを見られるし、お弁当ももらえる。「有田さんが売れてるし、いいかな〜」みたいな(笑)

    このまま楽しく過ごせる生活が一生できたら、それはそれで幸せなんじゃないかって思ってました。僕の良いところでもあり、悪いところでもあるんですけれど、状況が楽しければ満足しちゃうんですよね。そこから一歩出る野心よりは、現状維持したい気持ちが強い。今でもそう。

    当時だと、北陽やドランクドラゴンが「はねるのトびら」に出ていて、アンジャッシュは「エンタの神様」かな。売れてる人たちを見ると、純粋に「すげえなぁ」って思ってました。自分とは違う世界にいるように見えて、嫉妬の感情はなかったですね。「頑張れーっ」て感じ。お笑いは戦場っていう考えの芸人もいると思うんですけど、僕はそうじゃなかった。

    人力舎は傷のなめ合い精神。スベっても「逆に面白かった!」みたいな感じで誰かが励ましてくれるんですよ。うまくいかないことに対してビビりがない。

    ……だからこそ……無茶振りしちゃうんでしょうね(笑)スベったっていいじゃないかっていう。人力舎の社風なんだと思います。

    有田さんとは「お笑い」について話したことがない

    無茶振りに戸惑う山崎さん

    ──そんな山崎さんが、芸人としてやっていこうと腹に据えたのはいつだったんでしょう?

    2003年のM-1でした。M-1も僕たちは一回敗れちゃってたんで、有田さんと決勝をテレビで見る約束をしてたんですよ。でも、敗者復活で残っちゃった。そこで有田さんに「すみません、M-1に出ることになったので一緒に見られません」って電話したぐらいです。

    ──その後、2004年にもM-1に出場して優勝してますが、これもハングリー精神は……?

    なかったですね(笑) 2003年のM-1で敗者復活してから仕事がいっぱい来るようになって、毎日が楽しくなっちゃった。それまで仕事が全然なかったから、その時点で満足してたんでしょうね。「最高だな〜」みたいな。

    「M-1、優勝したい!!!」「次こそ王者だ!」よりは「もう充分、充分」って感じだったから、逆に優勝できたのかもしれない。

    ──有田さんからアドバイスってもらったりしましたか?

    お笑いに関しての話自体、出会ってからほとんどしてないですね。有田さんと一緒にいると、ただ毎日が面白いから、純粋に今をどう楽しく過ごすかってことばかりを考えてました。暗黙のルールみたいなのがあって、有田さんが無茶振りをしたら、それをやらなきゃいけないんですよ。

    ──暗黙のルール……?

    合コンに行くと、有田さんが「こいつは、大金持ちのボンボンで、自分で支払いをしたことがないから、お金を見たことない」みたいな無茶振りをするんですよ。千円札を見て「なんすかこれ?」ってボケて「えーそんなことも知らないの?」ってツッコんでもらう。合コンが終わって「あのフリ大変でした」って話すぐらいで、「お笑いってどうしたらいいんですか」みたいな話はしませんでした。

    ──漫才の瞬発力は、自然と高まっていったとか?

    そういうことなのかも……? 何かを教わることは全くなかったけど、突然の無茶振りに対応しなきゃいけないから。大変ですよ、本当に!

    「自分をよく見せる」よりも「できないヤツ」を演出したほうが得

    後輩力の高い山崎さん

    ──有田さんもですが、先輩に可愛がってもらえる秘訣ってありますか?

    えっ……なんだろ……しっかりおごってもらって、金も借りることですかね(笑)下積み時代は、消費者金融か有田さんか伊集院光さん。先輩って……やっぱりお金を貸してくれるんで。

    ──……お金って、先輩からどうやって借りるんでしょうか?

    「ここは僕がおごるんで、金貸してもらっていいですか?」って。

    ──おごるからお金を貸して?

    「貸しおごり」っていうシステムです。先輩たちとご飯を食べに行っても、下っ端だから金がないんですよ。でも、いつもお世話になっているからおごりたい。おごりたいんだけど、金がない。どうしたらいいか……? あ、有田さんに借りれば良いんだ!

    ──有田さんにおごるために、有田さんにお金を借りる。

    そうそう。「ここは俺が支払うんで、金貸してもらっていいですか?」って。有田さんは「いいよいいよ」って言って5万円貸してくれる。「後払いで5万円返します!」って言い続けて、結局「貸しおごり」の山積みは、かなりの額になりましたけど(笑)ちゃんと返しましたよ。有田さんはそういうシステムを許してくれる。

    ──どうしたら「貸しおごり」システムが受け入れてもらえるんですか……?

    包み隠さず「お金がない」って言うことですね。先輩に感謝の気持を伝えたかったら、お金を借りてお礼をすればいい。そのあと、稼げるようになったらきっちり返す。まぁ……僕が25歳ぐらいのときに付き合った女の子に「貸しおごり」をしようとしたら、ちょっと変な感じになりましたけどね。

    「貸しおごり」を再現する山崎さん

    ──彼女にもしたんですか!?

    ラスベガスへ旅行に行ったときに、指輪をあげたいと思ったから「300ドル貸してほしい」って言ったんですよ。いつもありがとうって思って。でも、ラスベガスだからね、カジノで金がなくなっちゃって。「貸しおごり」って自分の中では当たり前だと思ってたんですけど、彼女から「え? 何それ?」って言われて、初めて普通じゃないんだってわかった。

    ──借りられたんですか?

    はい。一応、何かしたい気持ちは伝わったのかな……。もちろん、彼女にもきっちり返済しました。

    ──それをやっても許される、愛され気質ってすごいですね。

    アンタッチャブルって、2人とも後輩気質なんですよ。僕はくりぃむしちゅーの有田さんの、柴田は上田さん。どっちも、成り行き任せ。流されやすい、引っ張ってもらいたいタイプです。

    彼女に謝る山崎さん

    ──後輩力ってどうすれば高まると思います?

    何か頼る。自分で解決しない…おんぶに抱っこ。「もう、しょうがないな〜」っていうぐらいが逆に可愛がられるんじゃないですかね。

    一緒に飲んでる時に先輩のグラスを見て「お酒大丈夫ですか?」と聞きはするんだけど、お酒を注ぐとこぼしちゃう、みたいな。「ちょいこぼし」ぐらいがベストですね(笑)

    「ちょいこぼし」をする山崎さん

    ──尊敬する人の前だと、無能な人間だと思われたくない、みたいな気持ちが先走りそうですが……?

    他人によく見られたいってやつですね。僕は逆です。悪く見せたほうが得でしょ。

    能ある鷹は爪を隠すじゃないけど、できないヤツを演出すれば、ちょこっとできたぐらいで、めちゃくちゃ評価してもらえる。逆に完璧な人間だと、ミスに目がいくじゃないですか。

    後輩として可愛がられるためには、ちょっとできないぐらいがいい。できないけど、一生懸命なヤツ、みたいな。

    ──逆に山崎さん自身は、後輩にお金を貸したりするんでしょうか?

    僕はそんなに……後輩って言ったら、ドランクドラゴンの塚っちゃん(塚地武雅)とか、東京03の角ちゃん(角田晃広)になるんですけど、厳密には2人歳上だし……2人とも地に足がついてるので、お金を貸す状況にならない……。はははははは!


    映画『それいけ!アンパンマン ふわふわフワリ―と雲の国』

    6月25日(金)より 元気100倍!ロードショー