「子育ても恋愛もやったほうが良い」双子の母、蓮舫からの一喝

    彼女の一人称は「ママ」だった。

    「いいなぁ。だって、これから恋愛して、結婚のワクワク感があって、育児するかもしれないわけでしょ? こんな楽しみ、絶対味わえないから」

    蓮舫議員は目を輝かせてそう言った。

    鋭い質問で国会に切り込む姿とは、異なる印象の女性がそこにはいた。現在48歳。議員を務めながら、男女の双子を育て上げた母でもある。政治の最前線で活躍する傍ら、どうやって育児を全うしたのだろうか。

    19歳。娘と息子が揃って誕生日。 1850g、2350gと小さく生まれた娘と息子は随分大きくなりました。 支えてくれた多くの人々に心から感謝を。私に幸せをくれる双子にお礼を。 ママは、あなた達のママで良かったといつも思う。

    毎朝5時起き、2人分のお弁当を作った後に国会へ

    ――蓮舫さんは議員になる前からずっと働かれていますが、育児のやりくりはどうしていたんですか。

    やりくりは「できるもの」ではなくて「するもの」です。当時、我が家は夫婦ともにフリーランス。育児する時間があると判断されるので、保育園に入るための点数が低かったので幼稚園に入園しました。これは住む地域にもよりますけどね。

    ただ、私の場合は本当に恵まれていて、母と一緒に住んでいたのでなんとかなりました。旦那にも有無を言わさず手伝ってもらいましたね。

    でも睡眠時間だけは諦めました。双子なので片方が起きると、もう1人も目を覚ます。断続的に4時間眠れるか、という感じでした。

    ――体調は崩さなかったのでしょうか。

    ないない。だっていつか終わるんだもの。ノイローゼ気味になったことはありますけれど、子どもは中学に上がったら自立し始めるので、ゴールが見えてるんですよ。

    育児って、実際それどころじゃない。イメージで「子育ては大変そう」とか「いろんなものを我慢しなくちゃ」と言いますけど、子どもは育ちますから。案ずるより産むが易しってよくできた話で、なんとかなるんですよ。

    ――議員になったときは?

    子どもは7歳で、小学校に上がった年の夏が選挙でした。街頭演説にも来てくれました。

    育児休暇を提案した男性議員が話題になりましたけど、議員はフレキシブルな仕事の体系なので、両立しやすいんですよ。本会議が週2〜3日定例であって、委員会は10時〜17時。それ以外の時間は自分の裁量ですから。

    小学校は給食だったので週1日お弁当を作っていました。中学校は毎日5時に起きて、2人分を作るのに1時間。男女で好みが違うから大変なんですよ。息子は野菜を一切食べないんだけど娘は好き、とかね。7時過ぎに2人を送り出して、すぐに出発。8時から会議があるので。

    おはようございます。 双子、中学生活最後のお弁当。 それぞれの大好物、天丼と細巻き寿司弁当。運動会と遠足が重なったかのような朝の作業。 三年かぁ。過ぎれば早い。

    息子が、ママに"1文字"しか言わなくなった反抗期

    ――学校行事はどうしていたんですか。

    授業参観も運動会も可能な限り全部行きました。成長するほどに、彼・彼女と一緒にいられる時間がなくなっていくのがわかりますからね。

    小学校高学年〜中学時代は一番大変だった時期かもしれません。塾に任せる前に、親が勉強の責任を持つ時期だし、買い食いをするようになってくるので食事も偏る。反抗期で内面も不安定。栄養、学習、個性の分岐点が重なるんですよ。そこを乗り越えちゃえば、自分たちで全部できるようになるんですけどね。

    だってね、男子って、反抗期になると「え」とか「あ」とか、1文字しか返ってこないのよ。ママに「え」しか言わないの。「え」の次は「なんで?」とかあるでしょう。 「2文字以上発してみなさい!」みたいな。言葉さえも面倒くさいんだよね。

    でもその子がスーパーに行ったときに、すっと荷物を持ってくれるようになる。こんな感動、他にはない。高校2年生くらいかな。嘘みたいでしょ? 学校の人間関係でぴーちくぱーちく言ってた娘が、ママの化粧品を選んでくれるんですよ。そういう楽しみが絶対に帰ってくるのが育児だから。絶対楽しいって。本当に楽しい。

    育児を1人でやるなんて「無理言うな」

    ――そこまで行き着くには、かなり大変そうです。仕事をしていてよかったと思うことはありますか。

    世界が広がることです。例えば、子どもたちの将来への理解度もそう。LGBT、非正規雇用……いろんな人にお会いするので視野が広がります。つい、「自分のスタンダード」ができてしまいますから、若い世代にいろんなことを教えてもらっていますね。

    最近はSnapchatにはまっていて、娘と息子の友だちから、変顔とか、女装とか、おかしい動画が送られてくるんですよ。LINEのスタンプも教えてもらいます。最近はマグロのスタンプがお気に入り。断然、マグロ(笑)

    専業主婦で育児をしている方たちの人生設計、人生観も素晴らしいと思います。ただ私の場合は、働いていてよかったと断言できますね。

    子どもはいつか離れるんだし、自分の自立を考えると、仕事は良いキャリアになる。失うものは何一つないんですよ。私は好きな仕事をしていたので、育児の気分転換になった部分もあります。

    手段としてベビーシッターにお願いしたり、家事の代行を頼むのも全然ありだと思う。ダメだという意味がわからない。使えるものは使った方がいい。

    女性が働いたら旦那さんが白い目で見られる時代もありましたけど、今はそんな時代じゃない。労働者で、納税者で、一個人。その上で育児も一人でやるなんて「無理言うな」って感じですよ。

    育児に専念している方も、美容院に行ったり、映画を見たり……そんな2時間に子どもを預けるのも当然だと思っています。それぐらいしないと本当に疲れちゃう。疲れた矛先は子どもや家庭に向くので、お互い不幸になりますよね。

    預けられるのであれば預けたほうがいい。だからこそ、預けられる場所はたくさんあったほうがいい。孤独な育児をなんとかして防ぐ必要があります。

    子育ても結婚も恋愛も絶対にやった方がいい

    ーー待機児童などの問題もあります。

    でも、子どもは生まれちゃってますから。「何カ所も審査で落ちてしまって、引っ越ししても無理だった」という話は私のところによく届きます。

    一方で「認証保育所、無認可保育園で頑張ってます」って声もあるんですよ。認可保育園に子どもを預けられて、自分も働ける……これがある意味ベストな環境かもしれません。

    でも、育児をする上でベストってないんですよ。私は幼稚園でしたし。だからこそ、ちゃんと理解してくれるパートナーと出会うことは大事。育児はみんなでするものです。

    今って、少子高齢化だとか次の世代が暗いとか、子ども持ったら大変だとか、ネガティブなことを報道しすぎなんですよ。そんな情報ばかりだと、若い子たちも頭ばっかり大きくなって、踏み出せなくなりますよね。本っ当に残念。問題が山ほどあるのは事実だけれど、それを好転させるのは次の世代ですから。

    みんな、深刻すぎ。こんな楽しいことがあるのに、経験もしないで「私には無理」っていうのは、本当にもったいないと思う。産んだらなんとかなるって。絶対になんとかなる。

    いいなぁ。だって、これから恋愛して、結婚のワクワク感があって、育児するかもしれないわけでしょ? こんな楽しみ、絶対に味わえないから。断言する。どんなに仕事をしても、この3つに匹敵する達成感は絶対にない

    取材日:2016年4月1日

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