話題の「ピザ自販機」、上陸させたのは元トラック運転手 執念がやばい…!

    「深夜1時まで働くと、宅配ピザは食べられないんです」

    世の中には、おでんやうどんなどいろんな自動販売機がありますが、この度「ピザ」の自動販売機、『Pizza Self』がTSUTAYAに設置され、注目を集めています。

    7月末に広島のTSUTAYA 楠木店に導入された”変わり種”の自販機に、道行く人は興味津々。焼き上がるまで3分。周囲にはチーズが焼ける香りが漂います。

    もちろん、Twitterでも「自販機はここまできたのか」「地元のピザ屋は潰れてしまったので、田舎にこそ欲しい」といった声が集まりました。

    メニューはマルゲリータ(980円)と4種のチーズピザ(1280円)の2種類。どちらも直径27センチと、なかなか食べごたえのあるサイズです。

    日本初のピザ自販機が広島に上陸……ということで、実際に物見遊山へ。 自販機から出てくるピザとしては、期待を良い意味で裏切ってくれるクオリティ。 調理には5分程かかるが、通行人も匂いに誘われ興味津々…これはある意味テロ。 お近くの方は是非一度お試しあれ。 https://t.co/boTIYfBa6p

    どうやらこの自販機は、ある一人の元トラック運転手が、自力で日本に導入したらしい。御本人、谷口佳陽さんに話を聞きました。

    トラック運転手をしていると、宅配ピザが頼めない

    8年前、物流系の会社を運営しつつ、トラックの運転手としても働いていた谷口さん。

    「朝5時から、深夜1時まで働く毎日でした。ピザが食べたいなぁと思っても、時間が遅いので宅配も頼めないんですよね。24時間いつでも注文できるといいのに……と思っていたんです」

    そんなときにYouTubeで見つけたのが、イタリアの企業が手がけるピザの自動販売機「Let’s Pizza」の動画でした。

    「これなら24時間、いつでも焼きたてのピザが食べられる……! なんとか日本でも展開できないか」と、一人でイタリアの会社にコンタクトを取り続けました。

    「問い合わせ先のメールアドレスに英語でメールを送って。もちろん最初は、本気にしてもらえなかったんですけれど、しつこく連絡して(笑)。しばらくするとその会社の社長とやりとりするようになり、イタリアに呼ばれたんです」

    単身、渡伊した谷口さん。「一緒にビジネスをやろうよ」と誘われます。しかし、「Let’s Pizza」の会社はほどなくして経営破綻してしまいました。

    なぜ「Let’s Pizza」は失敗したのか? その答えは…

    すでに「Let’s Pizza」の動画を見てから4年が経っていました。

    せっかくイタリアまで来たのに……。

    諦めきれない谷口さんは、「Let’s Pizza」経由で別の自販機メーカーを紹介してもらい、新しく共同開発することになりました。

    「Let’s Pizza」はなぜ失敗したのか?

    考え抜いた結果、「ピザの品質」にたどり着きます。

    「ピザの生地は、発酵させないと美味しくないんです。『Let’s Pizza』の生地は発酵させていないものを使っていました」

    「手でこねた自然発酵させた生地」を使う――自販機メーカーの他にベネチアのピザメーカーと手を組むことにしました。「10社くらい回って、ようやく良いメーカーさんに巡り会えました」。

    「無理やり短時間で発酵させて作れる生地もありますが、基本的に人の手でこねて、1日寝かさないと美味しくならないんです。チーズも大事ですね。とことんこだわりました」

    せっかく作ったのに日本語非対応…!?

    ベネチアで作られたピザ生地を手に入れ、自動販売機が無事完成! この自動販売機は、Windowsが搭載されており、温度管理はもちろん、タッチパネル操作もできます。

    「イタリアで作ったので日本語のフォントが入ってなかったんです。そこをまず改善して。あと、日本とイタリアだと気候が違うので壊れやすいんです。耐久性もあげて日本に持ってこれるようにしました」

    でも、認可が下りるまでかなりの時間を要しました。ピザ自販機は「飲食業」にもあたるからです。新しい形態の申請に、広島県をこえ、厚生労働省にも話が及びました。「無事、国からも許可が降りたので設置できるようになりました」。

    YouTubeでこの動画を見る

    自販機の使い方 / Via youtube.com

    「Let’s Pizza」を開発したいと思い始めてから8年。その間、一度企業で勤め人となり、開発資金を貯め、その後自分で会社を起こし、今に至ります。

    広がるピザの夢

    無事、日本展開のめどがたった際、谷口さんは広島県の中小企業の経営支援を申請。これを見たツタヤから声がかかりました。こうして7月末にツタヤ楠木店に設置することになったのです。

    「Pizza Self」には連日人だかりができるほど、大盛況。

    「今だけだと思いますけどね(笑)。行列もできて、本当に嬉しい限りです。日に何度か生地の補充に行くのですが、間に合わないくらいです」と谷口さん。

    ほぼ一日中、自ら自販機にはりついてメンテナンスや補充に明け暮れています。

    実は、さらなる野望があります。それは、日本製のピザ自販機を開発し、全国展開すること。

    「イタリアから『Pizza Self』を2台日本に持ってきたんです。1台はこれ。もう1台は解体して、改良して増産しようとしてるんです。今すでに複数のメーカーさんと一緒に開発を始めています。ディスプレイで広告枠を販売できるようにしたり、アメリカピザの自販機も作る予定です」

    目標は3年で100個の設置。「24時間365日、おいしいピザを皆さんに提供できるようにしたい」。