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アメリカにダンス留学をして見た衝撃。女子ラッパーをハッとさせたこと

「死にたい」という感情には、こう向き合った。

はなからいらねえ、共感 うざってえ評判

黙れよ半端 お家へ帰んな

痛快な言葉を刻む、ちゃんみな(@chanmina1014)。高校生ラップ選手権で頭角を表した彼女は、17歳でメジャーデビューをはたした。

キレのあるダンスと、力強い言葉を放つ姿についた通り名は「練馬のビヨンセ」。今でこそパワフルに活動するものの、ラップを初めたきっかけは「いじめ」だった。日本人と韓国人の間に生まれたハーフとして「異端者」とされていたのだ。

ラップに出会い、自分を獲得したものの、突如としてステージに立たされることとなった女子高校生は、何を見てきたのか?

デビューから2年、2018年9月よりワーナーミュジックに移籍し、海外活動を視野にいれるため、改めて活動をスタートした。

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ワーナーミュージックに移籍後、第一弾配信楽曲『Doctor』 / Via youtube.com

注目を集めるようになってから「死にたい」と思った日もあったという。「練馬のビヨンセ、びくともしねぇよ」と歌っていたのに――。

17歳。注目される「功罪」を味わって

――「練馬のビヨンセ」と呼ばれてから、2年くらい経ち、デビューもして。何か変わったことってありましたか?

いや……なんかその…。本当に勝手に言われたんですよ、「練馬のビヨンセ」って(笑)。ビヨンセのカバーして欲しいって言われたりもするんですけれど、その度に「え? 私、ビヨンセあんま知らないんだけどな」ってちょいちょい困りつつ……。でも、光栄ですよね。

最近は、歩いてたら「あ、ビヨンセだ」って言われますし。

――「練馬」が省かれている。

さすがに恐縮って思いました(笑)。

――突然、脚光をあびて、ストレスで痩せてしまったと。

メンタルはもともと強い方だと思ってますが、Twitterとかで誹謗中傷がすごい増えたりもした。アンチっていうのかな。「死ね」とか「ブス」とか、そういう暴言は受け流せるんですけど、間違った情報が流れるのがストレスでした。

――どんなことを言われるんですか?

「ちゃんみなはアル中」とか「クスリやってそう」とか。

――偏見ですね。

無視してると「図星だろ?」って言われるんですよね。返したくなるじゃないですか。でも、我慢する。本当は言えるのに。全部、論破できる内容なのに。

今までは、言いたいことははっきり全部言うタイプだったのに、仕事もあって、関わる人も多いから、簡単に言い返さないです。責任があるから。それが、ストレスになってた時期はありました。もう慣れましたけどね。

でも……今だから言いますけど、当時は「死にたいな」とは思いましたね。

――どうやって変わっていったんですか? 「今はもう大丈夫」って。

結局、「ああ、生きててよかった!」って思うことの方が多かったって気がついたんです。私がずっと尊敬してきたアーティストさんから「ちゃんみなの曲、よく聴いてるよ」って言ってもらったり。ライブで私の曲を一緒に口ずさんでる子を見た時。曲ができた時。ダンスを超ストイックに練習した後にアクエリアス飲んだ時とか……快感っていうか、「生きててよかった」って思う。

「死にたい」って思ったのは、たった1回だけど、「生きててよかった」って思うのは、数えきれないぐらい多いから。

……でも、昔一度だけ、中学生の時に病み期がありましたね。包丁を喉元に持っていくぐらいに。

その時は、自分が決定的に誰かを傷つけたときなんですけれど。自暴自棄と言うか「私がいなくなればいい」と思ってましたね。その時の日記があるんですけど「いなくなりたい」とか「いつになったら、ここから抜け出せるんだろう」とか、めちゃめちゃ書いてるんですよ。今でもたまに読み返します。

――ラップに目覚めたのは、いじめられた経験が元になっていると聞いていたので、その時に死にたくなったのかと思ったんですけれど、そうではないんですね。

「人から何かされる」のは、自分の受け止め方次第で変わるじゃないですか。でも、「人に何かをしちゃった」っていうのは、変えられない事実だから。落ち込みましたね。

――それがきっかけで音楽に没頭しようと思ったんですか?

もともと、高校生のうちにメジャーデビューする気でいたので、腹を決めたって感じですね。なんか、結局そのときつるんでいた間柄では「地元の地位」がすごく大事だった。地位なんて、何も生み出さない。でも、そのために私は人を傷つけて、怒って、「何やってんだろう?」って思ったんです。

――「ムラ」とか「群れ」みたいな。

そう。

――それって大人の世界でも結構ありますよね?

ありますね。多分私、ヒップホップの「群れ」の中にいないと思います。ラッパーの人って割とみんな仲いいじゃないですか。私、今はそういう関わりがあまりないんです。孤立してるわけじゃないけど。

――なぜですか?

日本語ラップの世界に飛び込んだ時に、誰かに影響を受けて「自分が進みたい道を見失うのは嫌だ」と思ったんです。だから、一定の距離をもって接する(笑)。自分を見失わない程度の距離を持つ。最初からそういうスタンスでした。

SEKAI NO OWARIでハッとした

――かっこいいなと思いつつ、距離間もってるとディスられたりしませんか? 「あいつかわいげないよな」とか。

ゴマをするのは絶対にやりたくないんですけれど、かわいげは振りまいている方なので。最近、めんどくさい人と話す時、馬鹿なふりするんですよ。「それはアゲー」とか(笑)。もしかしたら「かわいげない」って、陰で言われてるかもしれないですね。でも、「勝手にしてください」っていう感じですね。

――他人の評価はあまり気にしない。

ですね。と言いつつ、1〜2週間くらい前……ふいに「あの人に嫌われてるのかな」、「私のことダサいと思ってんのかな」って考えちゃってたんです。無意識に他人の目を気にしていた。

でも、「なんで他人の目を気にしてるんだろう? っていうか、私はあいつのために音楽やってるわけじゃないし。違くない?」って気がついた。

――じゃあ、例えば誰のために音楽をやってるんですか?

多分、今までもがいた過去の自分のため。最近、SEKAI NO OWARIさんの『サザンカ』って曲を聴いたんですね。「ここで諦めたら今まで頑張ってきた自分が可哀想なんだよ」っていう歌詞があって「ああ、それだ」と思いました。

――もがいてきた自分っていうのは、いじめだったり、死にたいと思った自分ってこと?

そう。あと、小さいときから、気付いたらピアノを弾いていて、楽しくて。絶対これを一生続けたいって思って、泣いたり笑ったりした、過去の自分。

「わからない」が答えでもいいってことに気がついた

――ちゃんみなさんは、日本と韓国のハーフで、日本語が最初はうまく話せずにいじめられたという過去がありますよね。

幼少期は、英語圏と韓国語圏にいたから、日本語がうまくなかったんですよね。結構、エグいいじめをうけましたね。無視はいい方。モノとられたり壊されたり。

あと、居場所がないっていうか。例えば、今年ワールドカップがあったじゃないですか。韓国と日本が戦ってたら、どっちを応援していいかわかんないんですよ。「お父さんとお母さん、どっちが好き?」って言われてるみたいで、答えられない。

でも最近は、同じようなことを感じている子は多いんだなと実感しますね。

せっかくだから曲にしようと思ってみたものの、「この感情を言葉にしたいけど、なんて言っていいかわかんない。どうしよう」って、かなり悩んでたんです。その時、「わからない」が答えだったって気がついた。自分の居場所とか、国籍とかも、「わからないでいい」って思いました、最近。

――白黒つけなくてもいいんですよね。

そう。一緒にステージに立つダンサーは、LGBTの人も普通にいて。近いかもしれないですね、もしかしたら。話してると「ああ、私も似てるな」って思います。

「わかんない」のは、結構強みでもあって。将来的には、韓国語とか英語オンリーの曲を作るつもりです。日本にこだわらず、自由に。

アメリカで見た衝撃

――最近、ダンス留学されてましたよね。どうでしたか?

ダンスをもうちょっと究めたいなって思ったので。ライブはエンターテインメント性を重視してるので、ダンスのスキルは必要になってくる。だから1ヶ月アメリカに行きました。

――印象に残ってることってありますか?

上手い下手とかじゃないってことに気がついた。

向こうでスポットライトを浴びる人って、日本で私が見てきた「上手い人」とは違った。ターンもできてなかったり、バランスも取れてなかったりするけど、自信がある。スキルよりも「私、最高でしょ?」って人が選ばれるんですよ。体重が100キロぐらいあるような人が、めちゃめちゃ自信満々で踊ってて。先生も超褒めるし、とにかくブチアゲで、一番人気者だったんですよ。自分を愛するっていいなと思いましたね。衝撃だった。

――それまで、「上手さ」=「良さ」だと思ってたから?

だと思います。パッションはもちろん、「自分が一番かっこいい」って思うことは大事なんだってわかりました。

とはいえ、自分を信じるのって大変で、病みそうになるんですけど、留学先で見たその光景がすごかった。何日かポカーンとしたくらい。上手さにこだわっていた自分が壊れた(笑)。

夢を叶える、たったひとつの方法

――ちゃんみなさんは、着々と夢を叶えてますが、秘訣ってありますか? 「いつまでにこうする」と期限を決めたりしているんですか?

決めてますね。小さい頃から、高校生のうちに絶対デビューするって決めてたので。そういうポジティブな目標は声に出して言うようにしてます。そっちの方が本気ってことだし、実現させるために逆算するようにもなる。

――願いは声に出すと叶う説。

ある。最近O-EASTでライブをやったんですけれど、ソールドアウトしたんですよ。その前のライブはもう少し小さいハコだったんですけれど、完売しなかった。でも、マネージャーに「次、もっと大きいハコに挑戦しちゃう?」って煽られたので、絶対埋めてやろうって思った。公演前にソールドアウトして嬉しかったですね。10月はZeppなので、更に大きなハコ。頑張りたいです。

――ポジティブ。

ネガティブになることもあるんですけどね。でも、前に「死にたいな」って思った経験は、二度繰り返さないっていうか。見たことある景色だから。だったら、見たことない高い景色を見たいなって思うんですよね。

――もうすぐ20代ですし、他には何か挑戦したいことってありますか?

私、アルバムタイトルにつけるぐらい「未成年」って言葉大好きなんですよ。だから、腰に「未成年」ってタトゥーを入れたいと思ったんです……が、裸になったときに「未成年」って文字が入ってたら、超嫌じゃないですか? (笑)

――!?……一瞬、何かが止まるかもしれませんね。

「えっ?」ってなりますよね。それを考えた時に、ちょっとやめようかなと思って。あはは。

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BuzzFeed Japanは10月11日の国際ガールズ・デー(International Day of the Girl Child)にちなんで、2018年10月1日から12日まで、ジェンダーについて考え、自分らしく生きる人を応援する記事を集中的に発信します。「男らしさ」や「女らしさ」を超えて、誰もがなりたい自分をめざせるように、勇気づけるコンテンツを届けます。