Updated on 2019年6月2日. Posted on 2019年6月1日

    ハリウッド版『ゴジラ』、芹沢博士はなぜ8時15分で止まった時計を持ち続けているのか

    ハリウッド制作の『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』。世界中でヒットした『GODZILLA ゴジラ』(2014年)の続編にあたる本作は、渡辺謙が芹沢博士役を続投。大のゴジラファンであるマイケル・ドハティ監督がメガホンを撮った。

    「ゴジラが他の怪獣映画と一線を画すのは、人類たちへ本質的な問をつきつける物語だから。それを描きたかった」

    そう語るのは『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』のメガホンをとるマイケル・ドハティ監督だ。

    マイケル・ドハティ監督

    モスラやラドン、キングギドラといった怪獣たちが、地球の存亡を巡って闘う本作。ワシントンやボストンといった大都市が破壊される戦闘シーンは圧巻だ。壮大なバトルをメインにおきながら、どんな「本質的な問い」を描くのか。

    怪獣は「悪」ではなく、巨神であり「王」

    本作は、2014年にヒットしたハリウッド版ゴジラ『GODZILLA ゴジラ』の続編だ。怪獣による奇襲に立ち向かう軍人を中心に描かれた前作とは異なり、研究者たちにスポットが当てられる。

    彼らは、地上に現れては都市を崩壊させる未確認生物たちを、一概に「悪」としない中立的な立場を取る。

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    「今回、怪獣たちは『神話』の生物という設定を設けました。ゴジラやモスラたちは、地球の奥深くで生息しており、人間が一線を越えた際に、警鐘を鳴らしにやってくる神的な存在です」

    「1954年版のオリジナルのゴジラを強く意識して物語を作りました。ゴジラは、もともと原水爆の実験によって出現したという設定です。独善的な科学技術の産物なんですね。この風刺的なニュアンスを踏襲したかった」

    ゴジラは1954年版に基づき、咆哮を中心にリデザインされた。崇高な外見にしたかったという。なお、伊福部昭が作曲した「ゴジラのテーマ」もふんだんに使われる。(©2019 Legendary and Warner Bros. Pictures. All Rights Reserved.)

    本作では2014年版では脇役の位置付けだった芹沢猪四郎博士を物語のキーに据えた。怪獣に対する考え方が監督自身と似ているところもあり、気に入っていたキャラクターでもあった。

    研究者たちを束ねる芹沢博士は、物語の序盤で「怪獣は悪ではなく、自分たちの世界を取り戻そうとしているだけ。我々(人類)こそが、ペットなのです」と発言する。

    怪獣たちよりも後に現れた人間によって地球が危機を迎えていることを、研究者たちはよく知っているのだ。

    芹沢博士が持ち続ける、広島で他界した父の遺品の意味

    渡辺謙演じる芹沢猪四郎博士。未確認生物特務機関「モナーク」に所属し、ゴジラを研究している。(©2019 Legendary and Warner Bros. Pictures. All Rights Reserved.)

    芹沢猪四郎は広島出身の設定で、原爆によって父を亡くしている。前作では、原爆で怪獣を撃退しようとする軍隊に向かって異議を唱えた。その際に、提示されたのが父の遺品である8時15分で止まった懐中時計だった。本作でも、これが象徴的に描かれるシーンがある。

    「僕は、時計という存在は人類の傲慢さを象徴しているものだと考えています。母なる自然の法則を人類の尺度で計る。8時15分は広島に原爆が落ちた時刻。つまり、人類が自然を壊した時です」

    「科学技術の発展は確かに素晴らしいけれど、人間の傲慢さも有している。行き過ぎれば、代償が伴う。だからこそ、芹沢博士は失敗の象徴である8時15分で止まった懐中時計を持ち続けてきた」

    HIROSHIMA DAY. 72 years since the U.S. dropped the atomic bomb. https://t.co/NiHrjBSRiH

    芹沢博士はこの遺品を持ち続ける。この演出は、演者である渡辺謙からの強い打診があり、台本を書き換えたという。

    「もとの台本では、本作の主人公であるカイル・チャンドラーに時計を託すように描いていました。バトンを次に繋ぐ意味ですね。しかし、謙が『芹沢は時計を持ち続けるべきだ』と拘ったんです。彼が正しかったと思います。懐中時計は自分のあるべきところに戻っていく」

    本作では、1954年版でゴジラを殲滅するオキシジェン・デストロイヤー(水中酸素破壊剤)が物語の重要なシーンで登場する。ドハティ監督いわく「核兵器と同じような存在。自然を否定する脅威。使うと恐ろしいことが起きる」という。


    芹沢博士は原爆で父を失い、それによって突然現れたゴジラの研究に打ち込む。ドハティ監督は、彼を「どこか自己犠牲的なところがあり、誰よりも愛情深いキャラクター」と捉えている。

    本作で芹沢博士は大きな決断を迫られる。その際に、彼への敬意を評してある行為を許す。

    ゴジラに触れ、言葉をかける。

    「この作品では、芹沢博士のゴジラに対する想いを描きたかった。広島で父を亡くした彼が、原水爆から生まれた神とひとつになって世界を救うようにしたかったんです。人間が初めてゴジラに触れる。コミュニケーションをとる。その描き方は、とても慎重に意義深いものにしました」

    65年という長いゴジラの歴史の中で、初めて人がゴジラに触れる瞬間だった。

    ©2019 Legendary and Warner Bros. Pictures. All Rights Reserved.

    芹沢博士の存在がなぜ重要なのか?

    ドハディ監督によると、それこそが本質的な問であり、ゴジラが愛され続ける理由だと語る。

    「ゴジラ映画は現実世界に向けた問題提起の寓話だと思う。人類は何度失敗を重ねてきてもなお、愚かな選択をし続けている。特に自然に対して。すべてのゴジラ映画はこうした問いが受け継がれているからこそ、単なる怪獣映画に止まらない、本質的な魅力がある」

    初代ゴジラが誕生して間もなく65年。王は何度でも覚醒する。

    バズフィード・ジャパン スタッフライター

    Contact Yui Kashima at yuuuuuiiiiikashima@gmail.com.

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