Facebookの「死」の設定が頼もしいので、絶対に設定した方がいい

    Facebookには20億ものアカウントがある。2004年に誕生して以来、切っても切り離せないのが「死」である。死んだ後、私たちのアカウントはどうなるのか?

    私が死んだらSNSのアカウントはどうなるんだろう?

    こう思ったことはないだろうか。特に実名がベースで、出身校や勤務先、交友関係までが登録されているFacebookは気がかりだ。ただ、ネット上で彷徨うだけならまだいい。第三者に悪用される可能性もある。それは「私」だけでなく、家族や恋人なども同様だ。

    「父が他界したとき、父の友人たちがシェアした写真やストーリーの数に圧倒されました。SNSというのは、個人が把握しているもの以上の思い出が集積する場所なのだろう。人生に幕が閉じたとき、そこですべてが終わるのではなく、人を繋ぐ空間があったのです」

    Facebook社で追悼アカウント機能のチームマネージャーを務めるアリス・ベイリーは言う。

    同社では2009年に「追悼アカウント」機能をリリースした。これは故人のアカウントが乗っ取りや荒らしなど、第三者からの攻撃を防ぐために作られた。

    当初は、死後に近親者が必要書類をもとに申請をして、受理されれば「保存」されるものだった。2015年には「管理人」に自分の死後の「追悼アカウント」の運用を托せるようになり、Facebookフレンドは故人のプロフィールを閲覧できるようになった。

    死を悼み、弔う。まるでSNS時代における墓地のようだ。

    「私たちは2つのゴールを持っています。ひとつは残された人々が死者を悼み、冥福を祈ること。家族や友人たちが故人の思い出を共有し、お互いを支えるための場所を作りたい」

    「もうひとつは、故人の希望を尊重すること。自分が他界したあとに、プロフィールに何が起こるかを選択できるようにしたいのです。具体的にいうと、アカウントを完全に削除したいのか? 遺したいのか」

    かつては死後に申請が必要だったが現在、ユーザーは「管理人を指名して追悼アカウントの管理を任せる」か「Facebookからアカウントを完全に削除するか」を選択できる。

    「私たちは多くの宗教、文化、個人の志向に対応するため、日々フィードバックに耳を傾け、ヒアリングを重ねています。故人を悼むための追悼アカウントの機能自体は多くの方々に受け入れられていると感じますが、一部の地域では『生前の写真がこの世に残っていると天国にいけなくなる』という習わしもあり、『アカウントの全削除』も必要だと考え、現状の選択制をとりいれました」

    なお、追悼アカウントには管理者として指名されたユーザーも含め、誰もログインはできない。これは故人のプライバシーを尊重するために施された。そのため、管理者はプロフィール写真の変更など一部の操作はできるが、メッセージを読んだり、故人の名前でコンテンツを投稿することはできない。

    SNS時代の墓地

    「追悼アカウント」では、故人の投稿は生前のまま遺る。また、プライバシー設定によって遺族は故人のタイムラインにメッセージを書き込めるトリビュート機能がこの4月に追加された。年忌ごとに彼ら彼女らに哀悼の意を送れるようになったのだ。

    「生前の投稿と、死後に残された人々から寄せられた追悼コンテンツは分離されています。彼らの人生の間にユーザーのプロフィール上のコンテンツを分離します。思い出す場所と、亡くなった方の人生は別物だからです」

    「Facebookには20億のユーザーがおり、死はその一人ひとりにとって固有のものであって、一般化できません。異なる文化、宗教、そして国々……死生観は多岐にわたります。死にまつわる感情は実に複雑で繊細です。唐突に思い出させられて傷つく場合もあれば、思い出すことによって癒やされることもある。そのため、追悼アカウントは基本的に誕生日の通知は一般公開されないようになっています」

    AIによってユーザーの死を検知し、申請がない場合での「追悼アカウント」化を試みている。AIの仕組みに関しては、詳しく話されなかったが、アカウントの使用状況から、一定の精度をもってユーザーの死を判定できるのだそうだ。その場合、ユーザーは何もしなくとも、誕生日の通知などがフレンドに届かなくなる。「ただ、不意の悲しみを想起させることがないように隠すことに重きをおいている」と話す。

    Facebookによると、毎月3000万人以上のユーザーが「追悼アカウント」のプロフィールを閲覧し、死を悼んでいるという。

    私たちの「死」は変わり始めている。


    取材協力:Facebook