なぜ「フロントホックブラジャー」より背中ホックが多いのか? 意外な歴史がわかった

    ブラジャーのホックって後ろについているものが主流ですよね。前で留めるフロントホックのブラの方が楽なのにどうして少ないのでしょうか?老舗下着メーカーであるワコールさんに聞いてきました。

    どうして、ブラジャーのホックは後ろにあるものが多いんでしょうか?

    約40年前、大流行していたフロントホックブラ

    1978年に発売されたフロントホックブラは大流行します。ホックが背中にないため、後ろ姿に凹凸が生まれないフロントホックブラは、Tシャツやタンクトップを着るときに目立たないと話題になったそうです。

    便利そうなのに、今はどうして「後ろ」がメインストリームになったのでしょうか。

    ワコールに聞いてみました。ちなみに、ワコールは戦後の日本にブラジャーの概念を普及させた会社でもあります。

    答え:胸をキレイに見せるために「後ろ留め」が技術的にベター

    まず構造から説明します。ブラジャーは大きく分けて2つのサイズから成り立っていて、最も位置が高い場所をトップ、胸を支える下の部分をアンダーと呼びます。

    ブラジャーのホックはアンダーバストの調整のために使われていて、2〜3段階でサイズ変更できるものがほとんどです。例えば、「65」のタイプのものはアンダーバストが「62.5cm〜67.5cm」の人がつけられるようになっています。

    後ろと同じ形状のホックを前につけることは難しく、前留めのタイプは、「フロントホック」ならではの別の形状をしたホックを用いており、サイズ調整はできないものが多いです。

    フロントホックは胸が広がりやすい

    「谷間」は、90年代に生まれた概念

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    今ではすっかりおなじみになった「胸の谷間」という言葉は、90年代に登場しました。80年代後半からのボディコンブームに合わせる形で、女性の中に胸を大きく強調させたいというニーズが広がっていったそうです。


    「フロントホックブラ」が大ブームとなった70年代・80年代まではバストを寄せたり上げたり、大きく強調させて見せたいというようなニーズは低かったため、「前留め」の利便性や見た目の美しさの方が重視されたと思われます。

    しかし、90年以降はブラジャーの機能として、「寄せる」「上げる」「大きく見せる」などの要素が求められ、その機能を重視すると後ろホックのデザインの方が、好まれ、選ばれるケースが高くなったと言えます。

    後ろホックの方が谷間を作りやすい、と。

    日本人女性の身体は、進化している

    やや古いものの、ワコールは1960年代と70年代生まれの20代女性のボディサイズの比較データを公開しています。

    60年代生まれはCカップ以上の人は13%しかいなかったのに対し、70年代生まれは21%にまで上昇。さらに、全体はこのように変化しています。

    ・身長の伸びが止まった。痩せている人が増えた

    ・(バスト、ウエストなど)全身のほとんどの周径値が小さくなった

    ・ヒップのサイズは減らず、ウエストのくびれが大きくなった

    ・バストの位置が高くなった

    ・胴体は細めだがバストの大きい人が増えた

    昭和から平成へと時代が進むにつれ、女性の身体も変わり、それに合わせるように下着に対するニーズも変わっていきました。前留めの「便利さ」や「目立たなさ」から、後ろ留めの「寄せて上げて大きく」へと。ブラジャーはそっと力を貸しているのです。女性の「理想の体」のために。