「炎上しても死なない。実験できないほうが怖い」なぜ、ロンブー・田村淳はネットを信じるのか

    ネットの全部が好きなわけじゃない。Facebookは苦手かも(笑)。

    「ブラックメール送信っ。ずきゅん

    こんな言葉を流行させ、PTAからの物議を呼んだロンドンブーツの田村淳さん。「新しいサービスがローンチしたら誰よりも早く使いたい」とネットにも詳しく、最近ではLINEのライブ配信機能を使った番組「アツシメーカー」を配信している。

    テレビのスターが、有象無象のネットに触れたとき、一体何が起きるのだろうか? 田村さんに話を聞いた。

    「おむつを履いて街なかでおしっこする」企画はテレビでは止められる

    LINE / Via live.line.me

    生配信の番組「アツシメーカー」は、主に夜に田村さんが散歩をしている。道行く人に挨拶をしても、まさか番組撮影をしている芸能人だと思われないほどに軽装備。

    --田村さんが、ネットにはまったきっかけはなんだったんですか。

    実験したかった。失敗できる場所がほしかったんです。昔の深夜番組って、テレビの実験的な枠だったんですよ。若手の作り手、演者がいろんなものに挑戦して、人気が出れば、ゴールデンタイムに上がっていく。

    でも、いつの日か、深夜番組ですら実験させてくれなくなった。すごい閉塞的だと思って。失敗できる場所がないと辛いなぁって思ってたんですよ。

    --テレビは、どのように変わっていったのでしょうか。

    僕はPTAに怒られる系の番組をやっていたんですけど、楽しく見てる視聴者がいる一方で怒る人もいる。だんだんと攻撃的な少数の意見に作り手が屈しはじめたんですよ。

    スポンサーからの評判とか、社内の出世とかも関係してるんだと思うけれど、がんじがらめになっているというか。どの番組も突き抜けられないし、でも刺激的なものにしなくちゃいけない。

    --それがきっかけでネットを使い始めた。

    そうですね、最初はmixi。自分がやってるバンドのファンクラブページの足あとを見るうちに、「会わなくても、この場所でコミュニケーションとれるな」と思った。それが原体験です。

    その後にTwitterを始めて、「ここで呼びかければ、人は集まるんだろうか?」と実験してみたんです。その中で、僕にiPhoneをずっと向けてるヤツがいたから「お前、何やってんの?」って聞いたら「生配信してるんです」と言われて。「何それ? 教えて」という感じで、配信のやり方を学んでいきましたね。

    LINE

    「アツシメーカー」の”小さな視聴者”が田村さんに会いにきた。

    お金をかけなくても、iPhoneひとつあれば、沢山の人にコンテンツを届けられる。それを知ったとき、「ここでたくさんの実験を重ねていれば、求められる日が来る」と思ったんですよね。みんな失敗を恐れて、挑戦しづらくなってるから。その日のために、たくさん失敗しておこうって。

    例えば、「大人用のおむつを履いて、街なかでおしっこできるか?」っていう内容は、テレビだと「そんなのやったって放送できないよ」って止める人が多いんですよね。面白がってくれる人がいるかもしれないのに。

    炎上しても死なないインターネット

    --ネットに対してポジティブな印象を持って活動されていますけれど、でも炎上のリスクもありますよね。

    罵詈雑言もあります。でも、彼らの意見って覆らないですよね。テレビはユーザー属性のよくわからない視聴者が見ているものだけど、ネットは違う指標で見ていますから。マイナスな意見が来ても、スポンサーが求める世代にアプローチできていれば問題ないっていう判断ができるんですよね。

    それに、攻撃的なコメントがあったとしても、僕の番組を見ていることには変わりない。影響力的には加算されるので「マイナスな発言をしてもいいから、とりあえず見てね。何かを感じてね」と思っています。

    でもテレビは否定的な意見が来たら怖いんですよ。「こんなに一生懸命作ったのに、どうして文句言う視聴者がいるんだ? 苦情はゼロ件にしなくては」みたいな。それは違うんですよ。

    僕はスルースキルがないので、ユーザーと喧嘩しちゃうこともあるんですけど、そっちの方が真実に近いじゃないですか。怒りの表現ってすごくいいことだと思うんです。めちゃくちゃナチュラルな人の感情だから。

    もちろん、ネットの全部がいいと思うわけではなくて。例えば、Facebookは意識の高い系のおじさんが多くて、説教臭いコメントがたくさん来た。だから、「自分にはあってないわ」と思って一回休止したこともありました。

    --実験を繰り返す中で「失敗した」と思ったことはありますか。

    ダメだと思ったことは1回もないですね。唯一、警察との口論をそのまま生配信した際は、各方面から怒られたんですけど、それは「ここまでやっちゃだめなんだな」という線引がわかりました。

    迷惑をかけた人やモラルに反する部分はしっかり謝罪しました。でも、警察との口論を生配信してはいけないと法律では決まっていないんです。いまもあやふやなまま。その部分に対しては、毅然としていたいと思っていますね。だってネットを知らない人が、配信のルールを取り締まるっておかしいじゃないですか。

    --炎上は怖くない……?

    炎上しても死なないですからね。本物の火事だったら危険だけど、ネット上で自分のTwitterが燃えてるくらいだったら、死なないんで。そんなことより、実験できなくなる環境のほうがもっと怖い。

    --契約事務所からは何も言われないのでしょうか?

    僕が2010年からやっている「淳の休日」っていう生配信は、「休みの日に僕が何やっててもよくないですか?」っていう理論で成り立ってます。

    5年〜6年前だったので、事務所は生配信という名前も知らなかった。ルールや法律ができる前にやっていれば、「このルールでずっとやっていましたけれど」と言えば納得してもらえる。だから、新しいメディアができたらいち早く飛びつくことにしています。

    そんな甲斐あってか、事務所からは「自由にやっていいよ」と。たまに、牽制球が来るくらいですね(笑)。

    ネットに「降りてきてる」という感覚はない

    --そもそも、テレビの人がネットに降りてくるってどういう感覚なのでしょうか。

    正直、僕は「降りてきてる」感覚って全然ないんですよ。むしろ、教えてもらっている感覚の方が強い。テレビは、メディアとしてはネットに劣ってる部分もあると思うんですよね。

    テレビって、嘘をついてないのに、嘘みたいに見える瞬間があるんですよ。よくディレクターと喧嘩しますね。「嘘っぽく見える演出はやりたくない」って。

    例えば、特別ゲストが隣にいるのに、知らないふりをして番組を進める演出とか。画面に写っていないだけで、ゲストはそこにいるんですよ。そういうの大っ嫌い。「視聴者はそういう演出を求めてますか?」って思う。

    --それに比べると、ネットはリアルということですか。

    特に生配信は、そう。いま起きている現象がすべてだから、嘘のつきようがない。編集されていないから、粗いけれども真実はある。いまの時代の人って、作り物よりも、真実の方を求めているような気がします。

    テレビは、一気にたくさんの人に届けるために重要だと思うんですけど、嘘くさいメディアは、これから熱い支持を得られないような気もするんですよね。若者の文化を作れなくなったメディアは衰退するしかない。