18歳以下の子どもは、一人で見ないように。賛否両論のドラマ『君の名は。』に背中を押された

    Netflixで世界同時配信され、社会現象を起こしているドラマ『13の理由』。スターは、ほとんど出演していない。暗いミステリーになぜ人々は心が動かされたのか?

    2017年、世界で最もバズったドラマがある。それがNetflixの『13の理由』だ。

    主人公のハンナは、1話目から「死んでいる」。可愛らしい外見で華やかにも見える。思いを寄せる少年のクレイ存在もいる。けれども、彼女は手首を切って自殺した。

    彼女は「自ら命を断った13の理由」を、カセットテープに録音し、クレイに託す。テープを聞くと、周りの友人たちが彼女の自殺の「理由」になっていたことがわかった。もしかして、自分も理由の1つなのか――。

    このあらすじを聞くだけで、「学校で何かあったんだろうな。いじめ? 恋愛のいざこざ?」というところまでは、想像できるだろう。

    でも、ただのドラマではない。この『13の理由』は、公開から1ヶ月で1100万Tweetされるほど、口コミ力が異常に高いのだ。

    13の理由一気に観終わった。 観終わった後の、身体がぐたっと重くなる感じ。なんだろうこれは。色々辛すぎる。 でも来週から始まるシーズン2も観てしまいそう。 #13の理由

    1話目から引き込まれるぞー、続きが気になる過ぎる

    胸糞悪い内容だけど考えさせられる🙄

    自殺.薬物等ヘビーな内容で、最終話は生半可な気持ちでは見れなかった

    どこかネガティブかつ意味深なつぶやきが世界各国でなされている。口コミで広がる作品の多くは、ポジティブな感想が多いが、『13の理由』は不思議な現象を巻き起こした。

    その反響の大きさから、続編の制作が決定。まもなく18日より全世界で一斉に配信される。

    「13の理由」は学生の時に観たら特別なドラマのひとつになっていだだろうし、今の若い人達が観たら昔より共感できる要素が大きいからきっと私よりも感じるものがあるんだろうよ。 #13の理由 #Netflix

    国が違えば、文化や風土も違う。それでも世界中で議論が巻き起こるのは、きっと何か方法があるはずだ。

    脚本・製作総指揮を務めたブライアン・ヨーキーさんに話を聞いた。「どうすれば、世界で一番バズる物語を作れるんですか?」と。

    「僕、全然Twitter見ないんです」

    ――なぜ、『13の理由』は、たくさんTweetされたんだと思いますか?

    あはは、実のところ僕はTwitterを普段、ほとんど見ないんですよ。だから、びっくりしました。そもそも、多くの人に見られるとは思ってませんでした(笑)。アメリカの一部の層には、響くかなとは思ったんですよ。リアルに作ったので。

    ただ、姪が原作の小説を読んでいたのを見て、僕も読んでみて。世代が違うのに、すごく面白くて、この話にしようと決めました。なので、何か普遍的な魅力はあると思ってました。

    ストリーミング配信だから有効になる、とある演出

    ――普通の連続ドラマとは違い、『13の理由』は、一気に全エピソードが見られます。連続ドラマよりも逆に敷居が高そうですが、何か工夫はしましたか?

    僕は今まで演劇界で生きてきたんです。舞台だと2時間の物語が中心。でも、今回はもっと長い時間の世界を作らなくてはいけなかった。オーディエンスに見続けてもらう工夫はしましたね。

    よくある話ですが、1話終わる最後の方に「次はどうなっちゃうの」と思う展開を作る。2話までに、各登場人物にはみんな「裏」があるというような種まきをしてみました。

    ――ヒントだけ与えてすべては語らない…みたいな?

    そうそう。ヒントだけあると、見ている人は「どうしてだろう? これってどういうこと?」と思うでしょう? 伏線だけひいておくと、ディスカッションが生まれる。

    あと、「すべてを描かない」と、2周目を見たときに「あれはこういうことだったのか!」と発見があるんですよ。

    ――ネットっぽいですね。私も憶測ブログやTweetを検索しながら見てしまいました。謎が多すぎて。

    そう、すごい強みだと思いました。スマホやPC、テレビ……Netflixはいつでもどこでも見られるから。何度も見る。「最初は驚きを、2周目は発見がある」ように作れるんです。

    例えば、ハンナ以外で、とあるキャラクターが自殺を試みるんですけれど、1周目は、シンプルにショックを受ける。「どうしてあなたが自殺しちゃったの?」と。でも、実は伏線が各話にひいてあるんですよ。これは2回見ると、わかるように作っています。

    『君の名は。』を見て号泣。そこからわかったこと

    ――キャラクターの作り方はどうでしょうか? 感情移入させる工夫とか。

    登場人物が多いですからね。可能な限り、全員に「裏と表」があるように描きました。「何か隠している」というか。かっこよくてモテるけれど、家庭環境で悩んでいる。誰からも好かれる優等生だけれど、実は触れられたくない秘密がある、とか。

    これって実社会でもそうなんです。見た目で判断すると、中身は全然違うっていう話はよくありますからね。

    ――人には誰しも光と闇がある、と。

    その通り! よく脚本家同士で話し合ってることなんですよ。善か悪ではなくて、みんなそれぞれ複雑な面を持っている。どこまで描くのかがすごく大事。

    『13の理由』では、各キャラクターの裏の顔を、ヒントを与える形で伏線にしたんです。キーワード的に「パーティーで何かあった」ということを何度も漂わせる。しかめた顔をする人もいれば、怯えた顔をする人もいる。楽しいだけじゃないんだ、みたいな感じで。フックになるように何度も描きました。

    ―― 国が違えば文化も違う。その中で、共感を生むのってなかなか難しいと思うのですが。日本人は、パーティーしないですし。

    そう。同時に100カ国以上の人に届けるのは僕も初めてだったので、最初は頭がパンクするほど悩みました。世界が広すぎるから。

    でも、意外な発見がありました。パーソナルの話が最強ということです。僕は、2日前にローマにいたのですが、文化も違うのに、『13の理由』について話している人がいて驚いたんです。狭い世界の個人的な話が、響く。

    そういえば、僕も似た体験をしているなと思いまして。『君の名は。』を字幕で見て号泣したんです。大好き。あの作品もすごく限定的な話ですよね。東京のここでデートして、携帯でやりとりして、とか。でも、すごく自分に響いた。

    100カ国を意識して作ってはいけない。パーソナルで狭い世界を描くのが、結果的に良いんだなとわかりましたね。「表と裏」みたいな普遍的な部分と、狭い世界の細かいディティール。クロスボーダーするためには、個人的な世界もいい。これはポジティブな発見でした。

    きれいなところだけ見せるのは「嘘っぽい」

    ――Netflixはデータを見て「絶対に見られるコンテンツを作ってる」という話を聞きました。「どの俳優を使って、どういう物語が今一番見られるのか?」みたいな。それって、本当でした?

    僕もそのニュースを見ましたよ! でも、今回の場合は全然違いました。データは……いろいろ持ってるみたいですけれど、制作現場では教えてくれませんでした(笑)。

    Netflixがデータを駆使するのは、「どういう人にこの作品が合うのか?」、「どういう見せ方なら作品に興味をもつのか」というレコメンドの場で使っているようですね。多分ですけど。

    現場ではかなり協力的で、僕たちが作りたいものを最大限活かしてくれるようなスタンスだったので、とても作りやすかったです。

    ――だから、ハンナが自殺するシーンも描けたんですか? かなりショッキングでした。

    あのシーンはかなり慎重に作りました。ショッキングなので、オブラートに包んだ描き方をした方がいいというのもわかる。けれども、この物語は「ハンナの自殺」から始まるので、実際にそのシーンがないと、オーディエンスに嘘をついているような気がしたんです。

    痛々しくて醜くい。それがないと、自殺を美化しているようにすら見える。彼女の自殺は、親や友人たちを狂わせていく。そこまで描きたかった。

    ――でも、その過激な描写から、各国で「10代の人は一人で見ないように」という禁止令がでたとも聞きました。

    そうそう。この前、朝番組にゲストで呼ばれて同じ話をされました(笑)。カナダの一部高校とか、ニュージーランドとか、色んな場所で物議を醸していると。

    司会者が「子どもたちは、親と見てください」と言ってて、すごく良いなと思ったんですよね。この作品をきっかけに、普段しづらいヘビーな話を議論できるようになればいいと思ってます。

    Twitterでも、そういった議論がなされていているのを目にします。議論の種になるように作ったら、想像以上にバズってしまった(笑)。でも、個人的には良かったと思っています。それが本来の目的だったので。