米大統領選、期日前に1億人投票済み 大勢判明はいつ?結果確定の前に勝利宣言?「赤い蜃気楼」シナリオとは

    世界が注目するアメリカ大統領選の投票が11月3日(現地時間)に行われる。仕組みと見所、そしてささやかれるシナリオとは。

    頂点の決戦。投票できるのは2億3900万人

    AFP=時事

    アメリカ大統領選の投票が11月3日(現地時間)に行われる。

    投票日は法律で11月の第1月曜日の次の火曜日と決まっており、2020年の選挙は11月3日となった。なお、2016年の前回選挙では、11月8日だった。

    大統領選には、アメリカ市民権(国籍)を持つ18歳以上であれば投票できる。

    ただし、住民登録していれば地元の自治体で有権者として自動的に登録され、投票券が送られてくる日本と異なり、連邦制で州の権限が強いアメリカでは、有権者は地元の選管に自ら連絡を取り、有権者登録を行う必要がある。その方法や受付期間も州ごとに違う。

    だから各地で、投票を呼びかける運動とともに、有権者登録を呼びかける市民活動も活発だ。そして、全国統一の有権者名簿は、存在しない。

    フロリダ大学のマイケル・マクドナルド教授は、全米の有権者数を2億3900万人と推計している。

    立候補できるのは、アメリカで出生した、35歳以上で、14年以上アメリカ在住のアメリカ人。

    今回の選挙は、共和党の現職ドナルド・トランプ氏と、これに挑む野党・民主党のジョー・バイデン氏の間で、激しい選挙戦が続いてきた。

    二大政党制が確立しているアメリカでは、当選可能性があるのは、この2人に限られる。しかし、実際に立候補を届け出る人は多数いる。

    日本時間11月2日現在、米連邦選挙委員会には1225人が立候補を届け出ている。

    「直接投票」ではない。

    BuzzFeed News

    大統領選挙では、それぞれの候補に集まった票を直接、集計して当選を決めるわけではない。

    50の各州と首都ワシントンDCには、州ごとに人数の異なる「選挙人」がいる。一部の例外を除き、その州で最も得票を集めた候補が、選挙人を全員獲得する。

    選挙人は全国で計538人。過半数の270人を全国で獲得すれば、勝利となる。米国のメディアは各州ごとに優劣を判定し、想定される獲得選挙人数を積み上げることで、いずれかの候補の「当選確実」を打つ。

    上のマップは、2016年大統領選での州ごとの選挙人の数と、それを共和党のトランプ氏、民主党のクリントン氏のいずれが獲得したかを示したものだ。

    選挙人が最も多いのはカリフォルニア州の55人。次いでテキサス38人、フロリダとニューヨークが29人。最も少ないのは、アラスカ、ワイオミングなどとワシントンDCで、いずれも3人だ。

    候補者の側から見ると、人口と選挙人が少ない州よりも、カリフォルニアやテキサスといった「大票田」を固めつつ、選挙ごとに支持動向が変わる州に注力することが重要になる。

    2016年は、もともと民主党が強かった中西部のミシガン州やウイスコンシン州などをトランプ氏が抑えたことが、勝因となった。

    獲得した選挙人の数が勝敗を決めるため、全国で投票総数が最も多い候補者が敗れることもある。2016年大統領選でも、敗れたクリントン氏の方が、得票総数ではトランプ氏を上回っていた

    焦点は郵便投票の行方

    AFP=時事

    アメリカでは州ごとに制度が異なるうえ国内に時差もあるため、投票の開始時間と締め切り時間も、地域ごとに異なる。おおむね、東から西へと締め切りが広がっていく。

    有権者は、

    1)投票日に投票所での投票

    2)期日前投票

    3)郵便投票

    を選ぶことができる。

    日本時間11月4日午後1時には、カリフォルニア、オレゴンなど西海岸諸州で投票が締め切られ、残るはアラスカとハワイだけになる。普段の選挙であれば、このころには大勢が判明し、「当選確実」が出てもおかしくない。

    しかし、今回の選挙は違うかもしれない。

    2020年の選挙は新型コロナの影響で、多数の人が集まる投票所を避け、期日前や郵便投票を選ぶ有権者が増えている。州によっては郵便投票を基本とするところもある。

    そして、郵便投票で投じられた票をいつ、どう開票するかによって、今回の選挙で混乱が起きる可能性が出ているのだ。

    期日前と郵便で1億人が投票。投票率も上昇か

    AFP=時事

    前出のマクドナルド教授らが運営する「アメリカ選挙プロジェクト」の集計では、11月3日現在、投票所で期日前投票をした有権者と郵便投票の用紙を請求した有権者を合わせると1億人を超えた。

    うち6524万人は郵便投票用紙を請求したが、2685万票は3日現在、各地の選管にまだ届いていない。

    期日前と郵便投票で投じられた票は、すでに2016年選挙の投票総数の7割を超え、記録的な勢いだという。同教授は、全体の投票率も上昇すると予測している。

    「郵便投票で不正が起きる」と主張してきたトランプ氏の狙いは

    RIGGED 2020 ELECTION: MILLIONS OF MAIL-IN BALLOTS WILL BE PRINTED BY FOREIGN COUNTRIES, AND OTHERS. IT WILL BE THE SCANDAL OF OUR TIMES!

    トランプ氏は、早い段階から「郵便投票で不正が起きる」「外国がつくった偽造票が紛れ込む」などと、根拠を示さないまま主張し続けてきた。

    5月には、郵便投票で不正が起きると主張するトランプ氏のツイートに、Twitter社が「郵便投票に関する事実はこちら」と警告を付けて報道機関などのツイートやリンクを紹介するページに飛ぶようにした。

    連邦選挙委員会や各州の選管当局、そして米郵政公社はこうした「疑惑」を否定してきたが、トランプ氏の批判は止まっていない。

    一般的に国政選挙での不正は、独裁的、強権的な政権が、国政選挙を行うことで「民主的」な装いを繕い、裏で自らの勝利を確実にするため権力を使って結果をゆがめるために行うものだ。

    民主主義国家のアメリカで、現職大統領の座にある人物が選挙前から不正が起きると叫ぶのは、極めて異例だ。それに、もし本当に不正が懸念されるというならば、行政府の長として自らの権限を使い、不正対策を徹底するのが先決だろう。

    過激なツイートを続けるには、何か狙いがあると思われてきた。

    郵便投票はバイデン氏支持層が多そうだ。理由の一つはコロナ対策

    AFP=時事

    トランプ氏が郵便投票を警戒する理由は、郵便投票や期日前投票を利用するのは、バイデン氏支持層が多いと考えているからだとみられる。

    その背景にあるのが、世界最多の930万人超の感染者と23万人の死者を出した、米国での新型コロナウイルスの蔓延だ。死者数が1700人台の日本とはケタ違いの被害を出している。

    トランプ氏は抗マラリア薬の服用を勧めるなど、医学的根拠の怪しい言動を繰り返したうえ経済対策を優先させる姿勢を取った。10月に自らの感染が明らかになるまでは、トランプ氏自身が公の場でマスクをすることは少なかった。

    一方、バイデン氏と民主党は、トランプ政権の対策を批判。民主党の知事がいる州ではロックダウンなどによる対策が積極的に行われた。

    民主党知事のミシガン州では4月、マスクをせず銃で武装した市民らが州議会でロックダウン解除を求めて抗議する騒ぎも起きた(写真)。

    こうした人々は、おおむねトランプ氏支持層。ロックダウンや銃規制を含む政府によるあらゆる規制を嫌い、「自衛」の権利を重視する保守層だ。

    つまり、マスクをつける、行動制限をかけるといったことが、科学的必要性に基づいた「感染対策」の枠を超え、党派的な政治対立の焦点となっているのだ。

    こうしたことから、高齢者や身体の不自由な人、当日に外せない用事がある人だけでなく、バイデン氏支持層が郵便投票や期日前者投票を選び、投票所の人混みを避けようとしているとみられる。

    実際にマクドナルド教授らの集計では、これまでに期日前や郵便で投票した有権者のうち、45%が民主党=バイデン氏支持、30%が共和党=トランプ氏支持。残りは無党派か弱小候補支持だったという。

    郵便投票の開票は1日では終わらない

    BuzzFeed News

    郵便投票の仕組みは州ごとに異なる。上記の表は、各州アルファベット順にルイジアナ州までの受け付け期間を示している(紫字は激戦州)。

    州によっては、11月3日(現地時間)の投票締め切り時間必着。郵送が間に合わなければ封をしたまま各投票所のボックスに投じることができる。

    投票日の当日消印有効の州もある。カリフォルニア州の場合、投票日の消印が付いた郵便であれば、その後17日間、つまり11月20日まで受け付けるとしている。

    ただし、伝統的に民主党が強いカリフォルニア州では、バイデン氏優位は動かないとみられている。問題となるのは、勢力が拮抗している「激戦州」だ。

    米国版BuzzFeed News編集部は、アリゾナ、フロリダ、ジョージア、ミシガン、オハイオ、ペンシルバニア、ウイスコンシンなど10州を激戦州とみて、動向を注視している。特に注目が集まるのは、選挙人が多いうえ、どちらに転ぶか分からないフロリダ州だ。

    各州当局は、なるべくスムーズに開票できるよう、投票日の1週間前までに郵送を済ませるか、市役所や期日前投票所などに設置される郵便投票専用ボックスに投函することを、有権者に呼びかけてきた。

    一方で郵便投票では、所定の場所への署名を忘れる、署名が選管に登録されている書体と異なるといったことで票が無効になる可能性もある。当日消印の票や、こうした有効性に疑問がある票の集計などで、開票には時間が掛かるとみられている。

    2000年の大統領選では、フロリダ州でパンチカード形式の投票が機械で自動集計されたが、これに欠陥があるのではないかという疑惑が持ち上がった。

    民主党のゴア陣営と共和党のブッシュ陣営で、手集計による開票のやり直しを巡る訴訟合戦となり、選挙結果の確定が大幅に遅れた。

    こうした争いで、開票プロセスの長期化が起きる可能性が懸念されている。

    民主党が恐れる「赤い蜃気楼」と、トランプの一方的勝利宣言

    Taylor Hill / Getty Images

    選挙の帰趨を決めるとみられるペンシルバニアやミシガン、オハイオなどの激戦州で、3日に投票所で投じられた票が予定通りに開票される一方で、期日前や郵便投票の開票がもたつく可能性がある。

    すでに、前例のない数の郵便投票と期日前投票が集まっているからだ。

    そうなると、開票当日は、まず投票所の箱に入っているトランプ氏の票が多めに出て、「トランプ優勢」と見える可能性がある。

    ここから続くシナリオを、アメリカのメディアや政治アナリストは、共和党のシンボルカラーの赤から、「赤い蜃気楼」と呼んでいる。

    その時、これまで「郵便投票で不正が起きる」と主張し続けてきたトランプ氏が「投票所での開票は、私の勝利を示している。これが民意だ」などと一方的な「勝利宣言」を行う。

    その後、郵便投票の開票が進んでバイデン氏が追い上げてくると、「やはり郵便投票は不正の温床だった」などと主張し、開票の差し止めなど求める訴訟戦術に出る可能性がある。

    トランプ氏はすでに、11月3日以降に選管に到着した郵便投票を開票しないように求めている

    こうなると、選挙結果の確定が大幅に遅れるだけでなく、「自由と民主主義のリーダー」を自認してきた超大国・アメリカと、その選挙制度への信頼が、国際的に大きく失われることになるかもしれない。

    「Gゼロの世界」という概念を広めた国際政治学者イアン・ブレマー氏率いるユーラシアグループは2020年1月、同年に想定される世界リスクの第1位に、選挙の混乱を想定している。

    世界が固唾を呑んで見守る米大統領選。その結果は、日本にも大きな影響を与えることになる。日本時間11月4日からしばらく、アメリカでの動向に目が離せない日々となる。

    UPDATE

    郵便投票者数などのデータを最新版にアップデートしました。

    Contact Kando, Yoshihiro at yoshihiro.kando@buzzfeed.com.

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