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「ここで仕事を全うする」。タリバン復権でも日本人職員がアフガニスタンに残る理由

タリバンが復権したアフガニスタンに留まり、難民支援の仕事を続ける日本人国連スタッフが、オンライン取材に応じた。現地では女性スタッフの業務に支障が出始めているという。それでも現地で職務を全うしたいと語る。

イスラム主義勢力タリバンが復権したアフガニスタン。アメリカ軍の撤退後も首都カブールに留まり難民支援を続ける国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の森山毅・シニア緊急対応コーディネーターが9月9日夜、BuzzFeed Newsなどのオンライン取材に応じた。

アフガンには約300万人の国内避難民がいて、その8割は女性と子ども。タリバンの復権で、国連の女性スタッフも外で活動しにくくなっているという。森山さんは「今後も現地に留まり、女性の教育や難民帰還などの重要性を訴えていきたい」と話す。

BuzzFeed

オンラインで取材に応じる森山毅さん。パキスタン、イエメン、南スーダン、ソマリア、チュニジアなど各地のUNHCRでの勤務を経て、2020年9月より現職。

ーータリバンが復権して、仕事への影響は?

僕の仕事は、国内避難民の人たちのもとに出向いてニーズを聞き、支援をすることです。

避難民の方々が求めるのは、まず安全。紛争はもうこりごりというのが、彼らの言う最初のメッセージです。次に、食糧の確保と、教育です。

(第1次タリバン政権だった)1990年代は女性への中等教育がゼロだったんです。UNHCRとしては、行動の自由、表現の自由、教育の自由の保護をこれからもやっていくつもりです。

AFP=時事

8月17日、アフガニスタン西部で再開した学校で勉強する女子生徒ら

私たちはこの難しい状況下でも今、19の学校を建てています。うち2つは女子校です。

これからアフガンで政府がどう変わり、どんな風になっていくのかという点もあるのですが、我々のスタンスしては「ステイ&デリバー(留まって届ける)」を続けていきたいと思っています。

新政権がどうなるかは、まだ本当に分かりません。まだ女性の閣僚の名は上がっていないし、(かつてタリバンに抑圧された少数民族)ハザラ人の名前もありません。

女性スタッフの活動に制約が

我々が仕事をするなかで一番重視しているのは、女性です。

我々のスタッフを含め、女性が現場で働きにくくなっている現状があります。

東部のパキスタンとの国境などで状況を調査しているのですが、女性の調査員が行きにくくなっています。ほかの国境では女性スタッフも仕事できているのですが、最終的にタリバン側がどこまで女性の活動を制限するかは、今も不透明です。

タリバンは全体として、女性は現場に出るのではなく、例えばオフィスの中で仕事するという方向を求めているようです。

ただ、昨日今日の話なのですが、国連の職員に関しては今まで通りの活動を続けていいよという話も出てきました。どういう方針になるのか、まだ見ているところです。

ーー明示的に「女性も今まで通りに活動出来る」と言ったわけではないのですか。

「これからも仕事を続けてください」という話が出ていて、私たちは女性も含めて話を進めているのですが、タリバンはまだ、クリアには言っていません。

AFP=時事

アフガニスタン西部ヘラートで、抗議デモに参加した女性(左)と話すタリバン構成員

タリバンは難民帰還担当相を置き、今のところ私たちに人道支援の仕事を続けてもらいたいと言っています。今のところは、です。これからどうなるかは、まだ分かりません。

現場レベルでは、私たちと対面するアフガン側の管理職に、そのまま前政権の人が残っていることもあります。そういう人たちがこれから排除されるのかどうか、そこらへんもまだ分かりません。

市民の暮らしは困窮

ーー市民の暮らしと治安は?

この1カ月ぐらい、安全確保面からカブールの事務所から各地の現場に行くことができなくなっていました。一時は緊迫した状況もありましたが、今はカブール市内に関しては僕は、業務で必要あれば出ています。

治安機関に関しては、本当にガラッと変わったという感じです。UNHCRを警護するのも、前の警察ではなく、今ではタリバンです。

市民の意見はまず、戦争をせず、食料を確保し、子どもたちが学校で勉強を続けられるようにしてほしい、ということです。

今は銃声が聞こえたりと言うこともなく落ち着いていますが、銀行が機能していないことや、仕事、雇用がないという問題もあり、経済は逼迫しています。

AFP=時事

9月4日、カブール市内で、銀行で現金を下ろす順番を待つ人々の前を歩くタリバン兵

国境は機能しているものの、物流網は細くなって物資が足りなくなり、物価が上がっています。銀行では1週間で1人200ドル(約2万円)しかATMで下ろせないという状況です。

(編集部注:タリバンの復権で、アメリカがアフガン中央銀行の資産を凍結。国際通貨基金が経済支援の送金を停止するなど、アフガンへの国際的な資金の流れがほぼ止まっている)

アフガン支援はこれからが本番

ーーアフガン情勢への関心は日本で薄れつつありますが、市民の生活支援という意味では、これからが本番なのでは?

まさにその通りです。

2002年からアフガン難民の帰還が始まったものの、紛争が絶えずあまり進みませんでした。今年に入りさらに50万人の難民が出ました。昔からいる難民の方々の生活再建が出来ないのに、さらに新たな難民が出ています。

AFP=時事

9月6日、パキスタン・クエッタで、あり合わせのテントに座るアフガン難民の家族

女性の支援と地位向上が最優先課題

私たちとしては女性教育に力を入れてきて、これからの状況を懸念しています。これからもずっと、女性の教育や難民帰還の重要性を訴え続けていきたい。

女性の家族の中での安定が大事であり、女性が仕事できるようにならないと、社会の再構築はうまくいかないだろうと思っています。社会基盤ができなければ、難民の状況は変わらず、むしろ数が増えていくかもしれません。

アフガンで支援のニーズは多く、人道支援の枠を超えた開発のニーズもあります。まず紛争がどうなるか。タリバンの政権がインクルーシブ(包括的)で落ち着いたものになるのか、それが大前提だと思います。

「現場で職務を全うする」

ーー日本政府から国外退避の提案などはありましたか?

情報をいろいろ頂いたり交換したりして、サポートは受けていました。

私はUNHCRという国連の枠組みで、その安全ガイドラインに則って仕事をしているのが現状です。

今まで難民支援の仕事をしてきて、この仕事を全うしようということで、ここに残ることを自分で決めています。

この環境でどこまでできるか。自分としても今まで仕事を続けてきたなかで、一番重要な部分なので、現場で続けていきたいと思っています。

   ◇

国連難民高等弁務官事務所と国連UNHCR協会は、アフガンでの人道支援で、募金への協力を呼びかけている。


Contact Kando, Yoshihiro at yoshihiro.kando@buzzfeed.com.

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