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なでしこジャパンも人種差別に抗議 スポーツとプロテストの歴史を見る8枚の写真

なでしこジャパンがイギリスとの試合前、両国合同で人種差別に抗議して片ひざ姿になった。今回の大会では認められた意思表示だ。スポーツとプロテストの歴史を写真で振り返る。

7月24日の五輪女子サッカー日本・イギリス戦で試合前、両国の選手が片ひざ姿になり、世界で続く人種差別に抗議の意を、静かに示した。

これまで五輪では、選手らが何らかの抗議や主張をすることが禁じられ、金メダルをはく奪されることもあったが、今大会では緩和されて可能になった。

スポーツとプロテストの歴史を写真で振り返る。

なでしこジャパンの選手たちが人種差別に抗議した

時事通信

24日の日本対イギリス戦の直前、イギリス代表となでしこジャパンの選手達が片ひざ姿になった。世界で続く人種差別に抗議するためだ。

朝日新聞によると、熊谷紗希キャプテンは事前に知人のイギリス人選手から打診を受け、なでしこチーム全員で話し合ったという。

「私たちも人種差別について考えるきっかけになった。イギリスの選手たちのアクションに対してのリスペクトという意味で、私たちもやろうと決めた」

選手のプロテストに規制を緩めたIOC

JOC / Via joc.or.jp

これまで国際オリンピック委員会(IOC)は、オリンピック憲章第50章に違反するとして、選手がプロテスト行為をすることを禁じていたが、今回の大会直前の7月上旬、規制の緩和を発表した。各国の選手に意見を聞き、こうしたという。

これにより、選手らは競技の前後に「意見を表明」できるようになった。記者会見やSNSでも意見を表明できる。

つまり、なでしこジャパンの行動は、完全に認められている。

一方で競技中や表彰式、選手村では、こうした行為は禁止される。

しぐさについては、「人々、国、組織、それらの尊厳を直接または間接に標的にする」ものは認められないとしている。

なお、五輪憲章第50章とは、以下のような内容だ。

1. IOC 理事会が例外として許可する場合を除き、 オリンピック用地の一部とみなされるスタジアム、競技会場、その他の競技区域内とその上空は、いかなる形態の広告、またはその他の宣伝も許可されない。

2. オリンピックの用地、競技会場、またはその他の区域では、いかなる種類のデモンストレーションも、あるいは政治的、宗教的、人種的プロパガンダも許可されない。

1968年メキシコ五輪では人種差別への抗議で金メダルがはく奪された

AFP=時事

スポーツとプロテストで最も有名なのは、1968年メキシコ五輪で、陸上でメダルを取ったアメリカの黒人選手2人が、人種差別に抗議して表彰式で黒い手袋をして拳を突き上げた場面。

男子200メートルで優勝したトミー・スミス(写真中央)と3位のジョン・カルロス(右)の2選手だ。

アメリカでは公民権運動を指導したマーチン・ルーサー・キング牧師が68年4月に暗殺されるなど、深刻な状況が続いていた。2人は、この行動でメダルをはく奪された。

カルロス氏はのちに、帰国後に脅迫が相次いだうえ警察の監視下に置かれ、「メキシコ市に行ったときは、世界を明るい太陽が照らしたかのようだったのに、私たちが帰国すると、そこはまるで大嵐が来たようになっていた」と振り返っている。

今回の規制緩和でも表彰式での意思表示はできないため、2人のような行動は今も禁止のままだ。

片ひざ姿は世界に広まっている。

Thearon W. Henderson / Getty Images

片ひざ姿でのプロテストは、2016年から注目を集めるようになった。

米NFLサンフランシスコ49ers(当時)のコリン・キャパニック選手らが試合前の国歌斉唱時に片ひざ姿となり、黒人に対する警察の過剰な暴力行使に抗議した。その輪が広がったのだ。

こうした行動に、トランプ大統領(当時)が「クビにしろ」などとツイートしたことが、抗議への共感に逆に拍車をかけ、米サッカー連盟などの競技団体も容認するようになった。


人種差別と警察の暴力行使は、2020年5月にミネアポリスで起きた黒人男性死亡事件をきっかけに、日本でも「Black Lives Matter」という言葉とともに、急速に注目を集めるようになった。

しかしアメリカでは、それ以前から、そして今も続く、深刻な社会問題となっている。

さらにコロナ禍の今、アメリカなど世界各地でアジア人への差別と暴力が顕在化。日本人が襲われて負傷する事件も相次ぎ、抗議の輪が広がって「Stop Asian Hate」という標語が生まれた。

前回リオ五輪でもメダリストがプロテスト→亡命表明

AFP=時事

五輪でのプロテストは、前回の2016年リオ五輪でもあった。

男子マラソンで銀メダルを獲得したエチオピアのフェイサ・リレサ選手だ。

自国で続く人権弾圧に抗議する両手を交差させるポーズでゴールインし、「(帰国すれば)私は殺されると思う」と、亡命の意向を表明。エチオピアで政権交代が起きる2年後まで、自国に戻らなかった。

政権交代でエチオピアの情勢は大幅に改善したとみられ、隣国エリトリアとの和平を実現したアビー首相は2019年のノーベル平和賞を受賞した。

しかし2020年以降、国内で少数民族勢力掃討戦などが激化。平和賞をはく奪すべきではないかと議論される状況となっている。

今回も緩和対象外のプロテストは起きるかも知れない

Patrick Smith / Getty Images

アメリカ女子ハンマー投げ代表のグウェン・ベリー選手は2021年6月の国内試合の表彰式で、「アクティビスト(活動家)・アスリート(スポーツ選手)」と書かれた黒いTシャツを掲げた。

ベリー選手はCNNの取材に東京五輪でどうするのかを問われ、「私がその時に何をしたいか、人々のために何をしたいかによる。そして、私の心に浮かんだことは、なんであろうと実行する」と答えた。

女子ハンマー投げの予選は8月1日、決勝は3日に行われる。

スポーツ選手とプロテストの権利を巡る議論は、今も世界中で続いている。

そして、犠牲者の名を書いたマスクで差別に抗議した大坂選手が聖火台に立った。

Matthew Stockman / Getty Images

東京五輪の開会式で、聖火台に点火する大役を担ったのがテニスの大坂なおみ選手だったことは、スポーツ選手とプロテストの歴史を考えるうえで、一つのターニングポイントとなるかもしれない。

大坂選手はハイチ人を父に、日本人を母にアメリカで育った。2020年の全米オープンで、試合ごとに警察の暴力の犠牲となった人々の名を書いた黒いマスク姿で登場し、見事に優勝した。

優勝インタビューでマスクの意義を問われた。「あなたが受け取ったメッセージは何でしたか?メッセージをあなた方がどのように受け取ったかに興味があります。話し合いが起きれば良いと」と答え、世界的な共感と議論の輪を呼んだ。

東京五輪のテーマの一つは、「多様性と調和」だ。

人種差別への抗議だけでなく、トーナメントでの会見拒否など選手の権利を静かに訴え、自ら新しい日本の多様性を体現する大坂選手が聖火台の点火役となったことに、多くの人々があの夜、驚きとともに賛意を示した。

Dylan Martinez - Pool / Getty Images

Contact Kando, Yoshihiro at yoshihiro.kando@buzzfeed.com.

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