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暴力を逃れて難民となったロヒンギャの人々は、なぜ帰宅できないのか

ミャンマーで膨大なロヒンギャの人々が難民となって1年。解決への道筋は。

ミャンマーで、イスラム教徒の少数派ロヒンギャの人々が暴力に追われ、70万人を超える避難民を出すようになって、2018年8月で1年になる。

なぜ人々の帰宅は実現しないのか。彼らがもともと暮らしていたミャンマー・ラカイン州は今、どうなっているのか。BuzzFeed Newsは、現場で支援を担当する国連機関の人々に聞いた。

家を追われ、安全な場所を求めてバングラデシュに向かうロヒンギャの人々
AFP=時事

家を追われ、安全な場所を求めてバングラデシュに向かうロヒンギャの人々

ミャンマー西部ラカイン州では2017年8月、ロヒンギャと呼ばれるイスラム教徒の少数民族を追い出そうとする暴力が噴き出し、次々と家屋が破壊された。約70万人の人々が隣国のバングラデシュに逃れ、難民となった。

ミャンマーに残った人々の多くも居場所を追われ、国内避難民(IDP)となった。国連によると、ラカイン州には2018年6月末現在で23カ所の避難民キャンプがあり、12万8千人が避難生活を送っている。

その大多数はイスラム教徒だが、それだけとは限らない。宗派間の憎悪が煽られた結果、社会不安が増大し、ヒンドゥー教徒や仏教徒も避難民となっている。

2017年9月、ミャンマー・ラカイン州の国内避難民のキャンプで暮らすヒンドゥー教徒の子どもたち
AFP=時事

2017年9月、ミャンマー・ラカイン州の国内避難民のキャンプで暮らすヒンドゥー教徒の子どもたち

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ミャンマー政府とバングラデシュ政府は2017年11月、ロヒンギャ難民の帰還を進める合意書に署名した。また、国連とミャンマー政府も2018年6月、帰還に向けて現地の実態調査などを進める枠組みをつくることで合意した。だが、実際の難民の帰還はほとんど進んでいない

焦点は信頼関係の再構築

ラカイン州で避難民に対する食料供給などの支援にあたっている国連世界食糧計画(WFP)ミャンマー事務所のドム・スカルペリ所長によると、ラカイン州では、ロヒンギャの人々は移動を制限され、国内避難民キャンプから出ることはできない。多数派の仏教徒は移動することができるが、吹き荒れた暴力に怯え、外出を控える状況だという。

WFPミャンマー事務所長のスカルペリさん
Yoshihiro Kando/BuzzFeed

WFPミャンマー事務所長のスカルペリさん

ロヒンギャの多くはラカイン人の経営するエビの養殖場などの労働者として働いていたため、働き手を失った地域経済は低迷しているという。多くの市場も閉まったままだ。完全に破壊されたロヒンギャの村も多い。学校なども破壊されているという。

「非常に悲しい状況だ。自由で自発的な帰還が行われるよう、住民相互の信頼、社会における共存などを再構築しなければならない。全体的なアプローチが必要で、帰還には時間がかかる」と語る。

「長い時間をかけて複雑化していった問題だけに、一晩で解決できるようなことではない。前向きに、草の根レベルから積み上げていく必要がある。希望を失うわけにはいかない」

草の根からの積み上げを

子どもたちの支援をしている国連児童基金(ユニセフ)のミャンマー事務所の功刀純子代表も、住民同士の信頼関係の再構築が重要だと指摘する。

ユニセフ・ミャンマー事務所代表の功刀純子さん
Yoshihiro Kando/BuzzFeed

ユニセフ・ミャンマー事務所代表の功刀純子さん

「ミャンマーは6月から新学期が始まったが、ラカインに残ったロヒンギャの子どもたちは学校に行くことができない。今も暴力やハラスメントの発生が報告されており状況は非常に流動的だが、NGOなどと協力し、子どもたちへの支援を続けている。共存できる社会づくりに向けて、長期的な支援が必要だ」という。

ラカイン州は人口の78%が貧困層(ミャンマーの全国平均は38%)と、ミャンマーでも特に貧しい地域だけに、子どもたちが勉強ではなく仕事に追われる児童労働といった問題も起きている。「ただ、前向きな変化も起きていて、ミャンマー政府が国内避難民キャンプの子どもたちに教科書の配布を始めている」

日本からは心のケア

ラカイン州では日本からの支援で、地雷や不発弾に近づかないようにする教育や、約1万1千人の子どもたちの心理社会サポート(心のケア)が行われている。

「日本からの支援で私がすばらしいと思っているのは、『心のケア』という言葉だ。阪神や東日本の大震災などの経験を通じ、日本人は心のケアの大切さを知っている。これはミャンマーの子どもたちにも必要なことだ」という。

「暴力は全ての人々に深い影響を与えている。(多数派の)仏教徒の子どもたちも怯えている。ラカインで、ある(ロヒンギャの)避難民キャンプに行くと、その中で商売をしている仏教徒の人々がいた。移動の自由があるからだ。それを見ると、経済面からの相互依存と共存の芽は今もあると感じた。寛容や共存といった考え方を広めていきたい」と語る。

多くの問題を抱える多民族社会ミャンマー

ミャンマーには多くの少数民族が暮らしており、民族や宗派の対立が暴力のかたちで噴き出しているのは、ロヒンギャ問題で国際的な注目を集めたラカイン州だけではない。北部カチン州や東部シャン州では、武装闘争が続き、ユニセフなど国連機関が支援に入ることができない地域もある。

功刀さんは「カチンやシャンでは、今年も新たな避難民が出ている。ミャンマーへの注目と支援をお願いしたい」と話した。



BuzzFeed Newsではこれまでもロヒンギャ問題を報じてきました。

日本人女性が見た、ロヒンギャの女性に対する組織的な性暴力

などもご覧ください。







Yoshihiro Kandoに連絡する メールアドレス:yoshihiro.kando@buzzfeed.com.

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