イエメン取材目指す記者が出国禁止に 安倍政権下で2人目

    フリージャーナリストの常岡浩介さんが政府に旅券返納命令を受けた。イエメン取材を目指しており、それを阻止する狙いとみられる。

    紛争地などで取材を続けるフリージャーナリストの常岡浩介さんが、外務省に旅券返納命令を受けて、出国を禁じられたことが分かった。常岡さんは内戦の続くイエメンを取材する予定だった。

    時事通信

    常岡浩介さん

    海外で取材しようとした報道関係者から日本政府が旅券を取り上げるのは、2015年2月にトルコ・シリア方面を取材しようとして旅券返納命令を受けた新潟県の写真家杉本祐一さんに続き、第2次安倍政権下で2人目となる。

    外務省側は「邦人保護」を理由に制限に出ているとみられるが、日本国憲法は、渡航の自由と、言論の自由をともに保障している。この判断を巡り、改めて議論となりそうだ。

    政府の出国阻止2例目

    BuzzFeed Newsの取材に応じた常岡さんによると、カタール経由でスーダン・ハルツームに向かおうとした2月2日、羽田空港で出国審査の自動化ゲートにパスポートをかざしたところ、「このパスポートは登録されていません」と表示され、ゲートが開かなかった。

    入管が外務省に問い合わせた結果、旅券返納命令が出ていることが分かったという。常岡さんは入管の職員がつないだ電話で、外務省の担当者から「旅券法13条第1項に基づいた旅券返納命令が出ている」と言われたという。

    旅券法13条第1項とは「渡航先に施行されている法規によりその国に入ることを認められない者」には旅券の発給をやめることができるという規定だ。

    イエメン取材を妨害か

    常岡さんは、2015年から激しい内戦が続くイエメンを取材しようとしていた。つてを頼り、すでにイエメンの正規ビザを保持しているという。

    まず陸路で入るため、1月14日にイエメンの隣国オマーンに向かったが、入国を拒否された。

    この時、オマーンの関係先から当初は「ブラックリストには載っていないので入国できる」という情報が入ったので向かったが、入国拒否となった。

    常岡さんがその後、関係先から聞いた情報では「日本大使館からオマーンの警察に対して情報の共有があり、これを受けてオマーンの警察当局が入管が働きかけて入国拒否にした」という。

    「私はスーダンのビザを取得しており、入国を拒否される可能性は低い。スーダンへの渡航で、オマーンの入国を拒否された者の旅券返納を求めるという規定を使う理由が分からない」

    「これまでも、日本の警察が私の取材を妨害しようとしてきた。2011年にパキスタンに入国を拒否された時も、現地の情報機関が日本の警察から、『常岡がタリバンと合流して米国を攻撃しようとしている』と伝えられたと聞いた。明らかに虚偽の情報だった」と、常岡さんは語る。

    つかみがたいイエメンの惨状

    イエメン内戦にはサウジアラビアやイランなど周辺の大国が介入し、空爆や地上戦で市民生活に激しい被害が出ている。18歳以下の少年が現場に兵士として動員され、流通網の寸断で各地に飢えが広がっている。

    AFP=時事

    2018年11月29日、栄養失調の治療を待つイエメンの子どもと母親

    イエメンに国連機関や医療などの国際NGOの日本人職員が駐在し、業務に当たっている。しかし、報道関係者にはここ数年、ビザが極度に出にくい状況が続き、内戦下の市民が置かれた状況を、日本の記者が現場に入って直接取材した例は、ほとんどない。

    障壁は判例の存在

    2015年に旅券返納命令を受けた杉本さんは、憲法が保障する渡航や報道の自由が侵害されたと訴え、その取り消しを求める訴訟を起こした。

    Yoshihiro Kando

    2017年4月、東京地裁判決後の会見で、返納を命じられたのち「イラク、シリアでは無効」と明記された旅券を示す杉本祐一さん

    しかし、1、2審とも「渡航の自由は公共の福祉のために制約を受ける」などとして渡航を中止させた判断を支持。最高裁も2018年3月に上告を棄却している。

    常岡さんは「裁判に訴えても、この判例で私も敗訴する可能性が高い」と語り、国際人権団体などと連携して、事態の不当性を訴えることなどを検討している。

    アップデート

    取材の進展にあわせ、オマーン入国拒否の経緯などを書き加えました。




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