2018年7月9日

    「75年で初の水害」必要なのは水 あると助かるのは人手 愛媛県西予市野村町のいま

    「75年この街に暮らして初めての水害」。男性は言った。住民らは力を合わせて片付けを始めている。

    西日本を中心に100人を超える死者がでる惨事となった水害。BuzzFeed Newsは9日、肱川の氾濫で多くの家屋が水没し、SNSで「惨状が伝えられていない」と話題になった愛媛県西予市野村町に入った。

    松山市内から車で約3時間半。高齢者の比率が5割を超える街で暮らす人々は、厳しい暑さのなか、力を合わせて瓦礫や泥と戦っていた。

    Yoshihiro Kando/BuzzFeed

    肱川に面し、外壁も水で流された家屋

    西予市野村町の中心部は、肱川の両岸に集落が広がっている。ここで緊急避難が呼びかけられたのは、7月7日早朝だった。

    Yoshihiro Kando / BuzzFeed

    片付け作業が続く野村町中心部

    呉服店を営む清水謙次郎さん(75)は、野村町で生まれ育った。

    子どものころに川の水が近くまで来たことはあったが、それ以外にこれといった水害の記憶はない。だが、避難を呼びかける役所からの早朝の放送を聞き、すぐに公民館に向かった。

    その日の昼ごろに逃れてきた人たちから「川の水がどんどん上がっている」「家の中も水浸しになっている」と聞いた。その日の夕方に自宅兼呉服店に戻ると、壁の色が変わっており、1階の天井まで水が来た形跡があり、これまで何百万円もかけて仕入れてきた反物はすべて水に浸かっていた。

    「75年、この町に暮らしてきて初めての水害」という。

    止まった時計

    Yoshihiro Kando / BuzzFeed

    清水さんの呉服店にかかる時計は8時前で止まっている。周囲に掲げられたお客さんの振り袖写真とともに水に浸かり、壊れた時間なのだろうか。


    西予市野村町では、浄水場が冠水し、浄水設備が被害を受けたため断水が続く。給水の再開までは、浄水場の電気関係の点検や復旧などを含め、これから10日ほどはかかる見通しだ。

    中心部の川に近い家屋は1階部分が破壊されている

    Yoshihiro Kando / BuzzFeed

    隣の西予市城川町から祖母の家の片付けにきた上甲葵さん(15)と双子の弟の郁さんは「これからの連休と、今年の夏休みはずっと、この家の片付けかもしれない」という。祖母は城川町に避難して無事だった。

    西予市野村町を巡っては、洪水の窮状を伝えたり、「被害が報じられていない」と指摘したりするツイートが多くRTされた。

    野村町では50〜80歳代の5人が亡くなった。逃げ遅れた人が中心だったという。

    お願いします。 小さな町ですが、愛媛県野村町を 助けてください 小さな町で、救助も困難で救援物資が届いてません 停電、断水になりとても町民は 怖い気持ちでいっぱいです。 私の友達の家も、何件か天井まで 水没しています。 どうか、お願いします。 この、小さな町野村町のために お願いします。 https://t.co/vTDSr9Rp9k

    愛媛県西予市野村町 僕の実家のすぐ近くで、友人も住んでいる町です。 周辺の町へ繋がる道が土砂崩れで寸断され、孤立しているそうです。 あまり関東で報道されてないようなので、少しでも状況が伝わればと思います。 #西日本豪雨災害


    高知県高知市に住む会社員の男性(57)は野村町の出身。ここには90歳を超える母親が一人で暮らす。だが、6日から7日にかけて、高知のテレビやラジオでは野村に関する報道がなく、様子が分からなかった。「野村は小さな街だし、松山からも遠い。だから報道も期待できなかった」

    市役所の支所に7日朝に電話して、母親が介護関係者の手助けを受けて無事に避難したことは聞いたが、家がどうなったのかが分からない。8日に向かおうと支所に道路状況を問い合わせたが、「まだ通れるかどうかはっきりしない」との答えだった。

    9日に再び問い合わせ、道路が安全に通れることがはっきりしたため、車で向かった。母親は病院に入院させた。実家に向かうと泥だらけになっていた。そして、3人ほどの人々が片付けを始めていた。

    「見ず知らずの方が、ボランティアとして片付けを始めてくださっていた。お年寄りばかりの街で、私たち子どももすぐに来られなかったから、本当に助かった」

    Yoshihiro Kando / BuzzFeed

    濁流に押し流され、ひっくり返ったままの車

    力を合わせ片付ける住民ら

    野村町の中心部で目立つのは、助け合って黙々と片付けを進める人々の姿だ。

    Yoshihiro Kando / BuzzFeed

    井神玲子さん(64)は、両親の代から6月まで経営していた電器店が、濁流にのまれてめちゃくちゃになった。

    「かつての取引先や友人らが次々と連絡をくれて、片付けの手伝いに来てくれた。本当に助かった。このあたりでは、水害を受けなかった周辺部やほかの市町村に住む親戚や知人が片付けに来てくれている」。7月9日夕にはおおむね片付けが終わり、がらんどうになった電器店のあとで、こう話した。

    「今必要なのは、水。飲料水はなんとかなっているけれども、家や通りの泥を洗い流したり、自分の体を洗ったりする水。今日からは晴れて暑くなってきたので、顔を洗いたいし、お風呂にも入りたい」。そしてもう一つは、人手だ。「私は幸い、周りの人に支えられたけど、お年寄りの多い街だし、手が足りない家もある」

    11日にボランティア受け入れ窓口を設営

    西予市役所野村支所によると、西予市は11日にボランティアの受け入れ窓口を設営する予定だ。

    西予市災害対策本部に9日午前、東京から電話取材した段階では、野村町で一部の物資が不足しているとの情報があった。だが、同日夕に市役所野村支所を訪問したところ、総務課の山崎博志係長は「食料などの物資は今のところ備蓄分などで賄えており、提供の申し出は断っている。ただ、ボランティアは受け入れ体制を整える必要がある」と語った。

    野村支所管内では公民館など3カ所の避難所で計約100人が夜を過ごしている。7日は700人ほどが身を寄せたが、自宅に戻り1階が水に浸かっていても、2階で寝泊まりする人が増えている。

    支所には、SNSなどで水に浸かった惨状の写真を見た人から、問い合わせの電話が寄せられている。「水はすでに引いて孤立は解消しており、現在は片付け作業が続いている」と説明しているという。

    西予市のボランティア受け入れに関する問い合わせは同市役所(0894-62-1111)へ。


    Contact Yoshihiro Kando at yoshihiro.kando@buzzfeed.com.

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