「大阪城にエレベーターつけたのはミス」安倍首相のスピーチに「バリアフリーの視点は?」と批判相次ぐ

    鉄筋コンクリート造りの大阪城にエレベーターをつけたことは、間違いだったの?

    大阪に世界の主要国の首脳が集まったG20大阪サミット。6月28日の夕食会で安倍首相が行った乾杯のあいさつで「90年前に大阪城天守閣を復元した時、エレベーターまでつけてしまった」と語ったことに、「バリアフリーへの理解がない」という批判が出ている。

    28日の会合を終え、大阪城公園内の大阪迎賓館で開かれた夕食会で、乾杯の音頭に立った安倍首相は、以下のようにあいさつした。

    みなさま、改めまして、ようこそ大阪にいらっしゃいました。ここ大阪は4世紀ごろに仁徳天皇により都に定められ、その後商業の街として発展してきました。大阪のシンボルである大阪城は最初に16世紀に築城されました。石垣全体や車列の通った大手門は17世紀初めのものです。

    150年前の明治維新の混乱で大阪城の大半は焼失しましたが、天守閣は今から約90年前に16世紀のものが忠実に復元されました。

    しかし一つだけ、大きなミスを犯してしまいました。エレベーターまでつけてしまいました。その大阪城を間近に臨むこの場所で、先ほど日本が誇る3名の演者がみなさまのために心を込めて、舞、演奏、そして歌を披露していただきました。

    「エレベーターまでつけてしまいました」と語ったのは、一種のジョークとみられる。これに対しTwitterでは「バリアフリーへの理解がないスピーチを行うのはおかしい」という批判の声が上がった。

    大阪城の復元について、「しかし、1つだけ、大きなミスを犯してしまいました。エレベーターまでつけてしまいました」とのこと。 朝から、とっても悲しい気持ちになる。 https://t.co/VkFTqwMdTt

    Via Twitter: @h_ototake

    生まれつき両手、両足がなく、ベストセラー「五体不満足」で知られる作家の乙武洋匡さんは「朝から、とっても悲しい気持ちになる」とツイートした。

    専門家からも指摘が

    障害学や城郭考古学の専門家からも、意見が相次いだ。

    手話通訳者でもある愛知県立大学の亀井伸孝教授は「このようなことを、世界中が注目する場面でなぜ述べたのか、まったく理解できない。 バリアフリーの世界的趨勢に逆行するようなことを言って、ウケるとでも思ったのか。 スピーチライターは、何を考えて原稿を作ったのか。読み上げた首相本人に判断能力はないのか」と批判した。

    立教大の矢吹康夫助教(社会学・障害学)は「まさか、このタイミングで国家のトップから授業のネタを提供していただけるとは思っていませんでした。社会学部の『差別と偏見の社会学』では、障害者差別解消法と合理的配慮について講義します。お楽しみに!」とツイートした。

    城郭考古学を専門とする奈良大文学部の千田嘉博教授は「わたしたちはすべての人が歴史を体感できるかけがえのない場所として、史跡整備をしている」とツイートし、だれもが史跡を体感できる方向での史跡整備を訴えた。

    なお、夕食会の映像を見る限りでは、この部分で各国の首脳から大きな笑い声は上がらなかった。

    大阪城の天守閣は、大阪市が市民から募金を募り、鉄筋コンクリート建築で1931年に再建した。エレベーターはこの時に設置されたが、5層8階の天守閣のうち、5階までしか届いていなかった。

    1995年に始まった「平成の大改修」で、8階の展望台まで行けるエレベーターが設置された。