ウクライナ侵略を続けるロシア国防省が3月7日、ウクライナの首都キエフなど4都市で停戦し、市民の脱出を認める「人道回廊」を設置すると発表した。ロシア国営タス通信などが伝えた。
「プーチン大統領と会談したマクロン仏大統領の要請に基づき」7日午前10時(現地時間)から、ウクライナの首都キエフなど4都市で停戦し、市民の脱出を認めるとした。一見、市民保護のためのポジティブな動きとうつるが、裏がある。
キエフなど各都市でロシア軍が一方的に設定した避難ルートの行き先は、ほとんどがロシアだ。
ロシア軍に攻撃されているウクライナの市民がロシアに避難することは、常識では考えにくい。表面上は人道姿勢を取り繕うという、ロシアの情報戦の一環と考える方が良さそうだ。ウクライナ政府は猛反発している。
全ての避難路はロシアに通ず
タス通信などが伝えた声明で、ロシア軍が4都市で設定したと主張する避難ルートは、以下の地図の通り。
ロシア軍の発表した地名を、Google mapで検索した。
キエフ→チェルノブイリ→ベラルーシ→ロシア
ハリコフ→ベルゴロド(ロシア)
スームィ:2つのルート
マリウポリ
「人道回廊」は一度も機能していない
以上、マリウポリのルート1とスームィのルート2を除き、すべてロシアに向かう避難経路となる。
そして、ウクライナ領内を避難するマリウポリのルート1は、3月5日から2日連続で機能しなかった。マリウポリの市民は、ほとんどだれも避難できていない。
その理由をウクライナ側は「ロシア軍の攻撃が止まらず脱出できない」と報告。一方でロシア軍は「ウクライナが市民を人間の盾にして避難を許さない」と主張している。
マリウポリでウクライナ方面に避難するルートの実現を仲介する赤十字国際委員会(ICRC)は3月6日、「約20万人を避難させようとした今日の試みは失敗した」とツイートした。
マリウポリとスームィいずれでも、ウクライナ領内を避難するルートは、これまでと同様に機能しない可能性がある。その場合も、ウクライナとロシアの主張が真っ向から対立し、事実関係がすぐ明らかになることはないと考えた方がよさそうだ。
ロシアはマリウポリからロシア軍占領地域に向けて避難するルートの設置を、両国が交渉で合意する前の3月2日、一方的に発表した。5日からの2日間で200人強が避難したとしている。しかし、ロシアでは政府と軍の意向に反する報道が禁じられており、その真偽を確認することはできない。
ウクライナ政府は猛反発
ウクライナ側はロシアの姿勢に猛反発している。
ウクライナのベレシュチュク副首相は7日、「受け入れられない」とロシアの提案を拒否した。大統領報道官も同日、「ウクライナ人はウクライナ領内に避難する権利がある。全くもって非道徳的な提案だ」とBBCに語った。
一方、ロシアの通信社RIAノーボスチによると、ロシア軍はまた、声明で「ロシア連邦軍は無人機などを使って避難状況のモニタリングを続ける。ウクライナ側がロシア側と全文明世界を欺いてこの人道作戦を妨害し、ロシアの責任だと主張するのは無駄である」としている。
近い将来、ロシアはこの人道回廊の設置は「ウクライナ側の妨害で」失敗したという主張を始める可能性が、ここから読み取ることができる。
