カナダで開かれたG7、それぞれの国から見ると同じ場面がこうなった

    各国が公表した同じ場面での写真に、微妙な違いが。

    トランプ氏のちゃぶ台がえし

    Based on Justin’s false statements at his news conference, and the fact that Canada is charging massive Tariffs to our U.S. farmers, workers and companies, I have instructed our U.S. Reps not to endorse the Communique as we look at Tariffs on automobiles flooding the U.S. Market!

    カナダ東部で開かれた主要7ヵ国首脳会議(G7サミット)は、米国のトランプ政権が掲げる保護貿易政策をどう扱うかを巡り、もめたあげく、なんとか共同声明が発表された。

    ところがトランプ大統領は共同声明の発表後、「こんなものは認めない」とちゃぶ台をひっくり返すツイートを投稿した。

    共同声明は認めない

    トランプ氏は「ジャスティン(=トルドー首相)の会見での間違った発言やカナダが米国の農民や企業に巨額の関税を課していることに鑑み、私は米国の代表団に対し、米国市場に溢れる自動車に関税をかけることも検討しつつ、共同声明を承認しないよう指示した」とツイートした。

    G6+1

    トランプ氏と、それ以外の6ヵ国の立場が激しく対立し、「G6+1」とまで呼ばれた今回のG7。

    同じ場面を収めた写真でも、各国の政府や首脳が発表した構図の微妙な違いを見比べると、その絵柄を選んだ意図が、どことなく浮かんでくる。

    ドイツ政府の公式インスタ写真は、トランプ氏に詰め寄る風

    これが、安倍首相のインスタでは

    カナダ政府の提供写真はほのぼの系

    フランス・マクロン大統領から見れば

    #G7Charlevoix, deuxième jour : une nouvelle étape est franchie. Après une longue journée de travail et de dialogue très direct, nous recherchons activement un accord ambitieux. https://t.co/tBy2ZUg2v8

    マクロン仏大統領は、同じ場面を違う角度から撮った写真を。中心はマクロン氏で、みんながマクロン氏に聞き入るかのような構図。トランプ氏とメルケル氏は顔が隠れていて表情が分からない。

    マクロン氏はトランプ氏が在イスラエル米国大使館をエルサレムに移転する直前にも首脳会談を行い、移転や関税問題を思いとどまるように説得しようとしていた。

    この写真の立ち位置から見ると、安倍首相のインスタにあったトランプ氏の視線は、マクロン氏に向けられていたのかもしれない。

    そしてホワイトハウスは

    A look at negotiations, from behind the scenes at the #G7Charlevoix Summit.

    ホワイトハウスのソーシャルメディア部長、ダン・スカビーノ氏が選んだのは、笑顔のトランプ氏の言葉を各国の指導者が笑顔を浮かべて聞いているように見える写真だ。

    各国の中心にいるのは、あくまで米国だということだろうか。

    それぞれの違いの背景は

    今回のサミットの焦点は、トランプ政権の掲げる米国産業の保護策をどうするか、というものだった。

    「米国第一」を掲げるトランプ氏は、これまでの米国の外交・通商の枠組みを一つ一つ覆してきた。

    * 気候変動を防ぐための国際的な枠組み「パリ協定」からの離脱。

    * イランの核開発を防ぐための国際合意からの離脱。

    * パレスチナだけでなく欧州各国の猛反対を押し切っての米国大使館のエルサレム移転。マクロン氏、メルケル氏はともにトランプ氏と直談判し、思いとどまらせようとした。

    そこに、保護貿易策の打ち出しが加わった。

    保護政策に反対する欧州、立ち位置に苦慮する日本、なんとかまとめたいカナダ

    米国は6月1日、欧州やカナダ、メキシコに対し、鉄鋼などの高関税を課した。日本や中国にもすでに高率の関税を課している。

    国際社会には、一方的な保護措置を禁じる世界貿易機関(WTO)のルールがある。各国が他国からの輸入を制限し、言うことを聞く国や植民地をまとめて自国中心の経済ブロックをつくり、他国のブロックを敵視することで世界大戦に発展してきたという人類史上の反省から生まれた考え方を、ベースにしている。

    国と国が互いにビジネスの関係を深めれば、人的な交流と相互理解も強まるし、互いに殺し合う戦争をすることが割に合わなくなる、ということだ。

    国際協調は脇に置き、秋の中間選挙を控えて自国の支持層に「米国第一」の姿勢を示して支持を集めようとする米国。

    米国を思いとどまらせようとするドイツとフランス。

    ジェンダーや環境などリベラルな価値を掲げ、サミット主催国としてまとめ上げようとしながら、名指しで批判され当惑するカナダ。

    北朝鮮問題を抱えてトランプ氏をつなぎ止める必要がある一方、欧州と同様に高関税に反発し、欧州と米国をなんとか仲立ちしようとする日本。

    その立ち位置の違いが、各国が公表した写真からは浮かんでくる。