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17歳の女子高校生が上場企業のナンバー3になった その狙いとは

17歳の女子高校生が、東証一部企業のナンバー3に就任した。彼女は、そしてこの企業は、何を目指すのか。

東京証券取引所一部上場のバイオ燃料・食品ベンチャーのユーグレナ(出雲充社長)で、17歳の高校生が、社長、副社長に次ぐ地位の「CFO」に就任した。

東京都内の高校に通う小澤杏子さんだ。同社が10月29日、発表した。

CFOといえば一般的に「最高財務責任者」を意味するが、同社のCFOとは「チーフ・フューチャー・オフィサー(最高未来責任者)」。同社と社会の未来を考え、主導していくポジションだ。「18歳以下限定」を条件に公募した。

会社法上の「役員」ではないが、社内の「ナンバー3」として意見を尊重し、実践するという。

なぜ、こんなポジションをつくったのか。どうして17歳の女子高校生なのか。

未来のことは未来を生きる人が決める

ユーグレナ社は栄養価が高い微細藻類ミドリムシ(学名ユーグレナ)の大量培養に成功。ミドリムシを活用した食品などの開発を進めてきた。

クロレラなど微細藻類を利用した健康食品そのものは、すでに複数の先行企業がある。ユーグレナ社がこうした企業と違うのは、食品事業での収益をつぎ込み、ミドリムシ由来のバイオ燃料の開発と実用化を目指している点だ。

2018年には横浜市で約60億円を投資し、日本初のバイオジェット燃料とバイオディーゼルの製造実証プラントを完成させた。うまくいけば、石油資源の乏しい日本で、「純国産」のジェット燃料やディーゼル燃料を、適切なコストで生産できるようになる。

国連の定める2030年までの国際開発目標「持続可能な開発目標(SDGs)」にある17のゴールの一つ「ゴール13:気候変動に具体的な対策を」に向けて取り組んでいるという。

同社は技術を活かして地球環境の改善に貢献することを、基本ミッションの一つとしている。

しかし永田暁彦副社長は、ある問題に気づいたという。

「会社と地球の未来のことを決めるのに、未来を生きる当事者がいないのは、おかしい。だから、未来を生きる主役の子どもたちこそに、考えてもらおうと思うようになった」

同社は8月9日、新聞の朝刊に「CFO募集。ただし、18歳以下」というカラーの一面広告を打ち、CFOの公募をはじめた。

その新聞広告を見た1人が、小澤杏子さんだった。

「なんで、こんなことをしているんだろう。なぜCFOを必要としているのだろう」

小澤さんは高校で友人らとともにフラボノイドと腸内細菌の研究を始め、学校内外の賞を受賞。バイオ技術には関心が深い。バスケットボール部に所属し、学外のボランティア活動に参加している。スポーツや科学、社会問題など、いろんなことに興味を持つ17歳だ。

高校生にしかない視点を社会と企業に

「高校生にしかない視点、大人になったらだん薄れてしまう視点や、身の回りから見た視点があると思う。私にしかない視点から、新しい提案を、この企業にしてみたいと思った」という。

511人の応募者の中から、論文と面接を経て、CFOに選ばれた。

同社によると、広い分野にわたる知的好奇心や課外活動などでの社会性の高さ、集団を先導していく上で柔軟性とバランス感覚が評価のポイントとなったという。

任期は来年9月末までの1年間。同社の株主総会や各種のイベントに出席し、プレゼンなどを行う予定だ。同社はあわせて11-18歳の8人を、ともに話し合い、行動する「サミットメンバー」に選んだ。小澤さんはCFOとして、サミットメンバーの議論をまとめる立場でもある。

世界で若者が熱く議論するのは、環境問題

ユーグレナが企業ビジョンの根幹とする環境問題は今、世界の若者の間で最もホットな話題の一つだ。

自分たちの将来に強い危機感を抱いたスウェーデンの16歳の高校生、グレタ・トゥーンベリさんの呼びかけがきっかけで、2019年9月20日には世界130ヵ国で100万人以上の若者が、気候危機への行動を求めてデモをした。

日本も気候変動の影響で猛暑と豪雨が続き、犠牲者が相次いでいる。

東京など20カ所以上で9月20日、若者によるデモが行われた

しかし、数十万人規模のデモが行われ、教育委員会が学校を休校にして生徒のデモ参加を推奨する地域が出るほど関心が高まっている他国と比べれば、日本での動きは少ない。

グレタさんの同世代として、小澤さんはどう見るのか。

「8人のサミットメンバーと、日本人は問題意識はあるけど行動には移さないよね、という話をしたんです」

「何かを変えたいという気持ちがあるのかも知れないけど、私1人では変えられないという思いがあるのかもしれない。その意識改善ができていけば、もうちょっと日本全体がまとまりが持てるのかな、と思います」

「環境問題はいろいろ難しい要素があって、例えば感情を優先するのか、理論を優先するのか、食い違うとけんかになっちゃうかもしれないので、避ける部分はある。授業でディベートをする時は思い切り話すけど、個人的な時にそういう話をするとぶつかるかもしれないので、ちょっと避けている部分はあると思う」

「8人のメンバーたちが何を思い、何をかたちにしたいのかをまずまとめ、優先順位をつけて、どれが実現可能なのかを可視化していきたい。活動を通して、社会貢献、そして環境改善につながることを、1年を通してしていきたい」

「今日の生活よりも、明日の生活の方がちょっとでも楽しいな、楽だなと思える世界にしていきたいと思っています」

一方で、日本社会の先行きには不安も感じるという。

「今日もサミットメンバーの前で、年金問題の話をしました」

「少子高齢化もあって、自分たちは年金をもらえないんじゃないか、減っちゃうんじゃないか。では払うのをやめようとなると、もらいたい人がもらえなくなる。そこは負のサイクルだと思います。おいおい、自分の考えをまとめていきたいと思っています」

ユーグレナの出雲社長は「一緒に仲間として社会と未来、そして地球のためにSDGsの達成に向けて活動していける方だと感じました。未来を良くするための提案をどんどんお願いしたいと思っています」という。

永田副社長は「CFOとは単なる言葉遊びではなく、CEO(最高経営責任者)、COO(最高執行責任者)に続く本当に一緒に世界を変えられる人であれば嬉しいと思っていました。その期待に応えられる人として小澤さんに出会えたことを嬉しく思います」とコメントした。


UPDATE

表現を一部整えました。