アフガニスタンの教え子を助けて! 大学教授らが元日本留学生の救出と支援求める署名呼びかけ

    日本に留学し、母国アフガニスタンの復興のため学んだ専門知識を活かしてきた元留学生らが危機に瀕している。次々と届く窮状を訴えるメールに、東京農工大の教授有志が早期救出を求める署名活動を立ち上げた。

    イスラム主義勢力タリバンが復権したアフガニスタン。

    日本への留学後にアフガンに戻り、政府や大学などで働いていた元留学生から、かつての指導教授のもとに「命の危険が迫っている」と窮状を訴えるメールが相次いで届いている。

    そこで、これまでアフガン人留学生らを受け入れて指導してきた東京農工大学の教授らが、サイトChange.orgで教え子の元留学生らの早期救出と支援を求める署名を集めている。日本政府に提出する予定だ。

    呼びかけ人の一人、同大農学部の大川泰一郎教授は「日本が国策として招き、国費留学生として学んだ人たちに、卒業したらさようなら、というわけにはいかない。活躍の場が閉ざされ、身の危険が迫る人々をなんとかしたい」と語る。

    アフガニスタンでは8月15日、米軍の撤退に伴い米軍やアフガン政府を攻撃してきたイスラム主義勢力タリバンが力を取り戻し、首都カブールを占拠。アフガン政府は崩壊し、タリバンの支配が始まろうとしている。

    AFP=時事

    カブールのアフガニスタン大統領府を占領するタリバン構成員(中東のテレビ局アルジャジーラより)

    現地では1996年にタリバンが首都カブールを掌握。2001年11月まで国土の大部分を実効支配していた。10歳以上の女性に登校を禁止し、全身をすっぽりと覆おうブルカの着用を命じるなど、彼らのイスラム法解釈を支配地域で強制していた。

    2001年9月の米同時多発テロ事件を起こした国際テロ組織アルカイダをタリバンが匿っていたことから、米軍が「テロとの戦い」を名目に侵攻。タリバンはカブールから敗退し、代わりに反タリバン勢力が新生アフガン政府の座に着いた。

    日本も「テロとの戦い」に米軍への燃料補給などで協力した。また、アフガン復興のため、人材育成の一環として留学生を受け入れてきた。

    大川教授が所属する東京農工大でも、これまで60人ほどのアフガン人を博士課程などで受け入れた。戦乱で荒れたアフガニスタンの農業復興に向けて研究する留学生が多く、小麦や稲の品種改良、畜産や灌漑技術などを学び、母国に持ち帰った。

    帰国後は大学の研究職や省庁、農業試験場などに入り、国立カブール大学の教授になった人や、政府の高官となった人もいるという。

    しかし、アフガンの治安は年々悪化。2020年11月にはカブール大学構内で、武装したイスラム過激派「イスラム国(IS)」の戦闘員ら3人が銃を乱射し、学生ら少なくとも35人が亡くなるテロ事件が起き、大学すらも安全な場所ではなくなった。

    AFP=時事

    武装集団による銃撃テロを受けたカブール大学(2020年11月3日撮影)

    さらにタリバンが復権したことで、旧政権で働いていた人や、外国で高度な教育を受けた人の立場も危うくなっている。

    タリバンは大学でも男女をカーテンで仕切ることなどを求め、今後も学問と研究の自由が維持されるがどうか、わからない状況だ。

    AFP=時事

    タリバンの要求で男女の学生をカーテンを仕切った大学の教室(2021年9月7日撮影)

    教え子から次々と届く悲痛なメール

    大川教授のもとには8月23日夜、1年前に送り出したばかりの元留学生から、「助けてほしい」というメールが届いた。

    この元留学生は別の大学で働く親族2人が殺害されたという。脱出しようとカブール空港に向かったが、周囲は人の渦で混乱し、空港周辺の知人宅を転々としていた。元留学生が研究者として働く大学からの給料も数ヶ月滞っているといい、復職しても安全と生活の糧が確保できるかどうか不透明だ。

    そして空港周辺では8月26日、「イスラム国」による自爆テロが起き、米兵を含め90人を超える死者が出る惨事となった。

    いま日本にいる留学生も情勢の急変で帰国できなくなり、日本に残ってもらう方策を探っている。

    BuzzFeed

    BuzzFeed Newsのオンライン取材に応じる東京農工大の大川泰一郎教授

    大川教授だけでなく、これまでアフガン人を指導した東京農工大の各教授のもとに、かつての教え子から同様の訴えが次々と現地から届くようになり、その数は20人を超えた。

    そこで、農工大の教授有志で話し合い、日本政府に対し、元留学生の救出と支援を訴える署名を集めることにしたという。

    日本政府は今のところ、現地の日本大使館職員やJICAスタッフなどに関しては退避を支援するとしているが、いずれも現役スタッフに限られ、元スタッフや元留学生は、そこには含まれていない。

    署名は9月17日午後5時現在、2万5千筆を超えた。5万、10万といった一定の数字で区切り、外務省、文部科学省、そして首相に届ける予定だ。

    change.org

    大学教授有志が立ち上げた署名活動

    日本に身元引受人がいれば、アフガン人がビザ発給を受けて日本に退避してもらうことは、制度上はできる。

    しかし、「個人で何人も身元を引き受けるのは、限界がある」。

    「復興のために留学し、活躍してきた人々がその場を閉ざされ、給料が払われる保証もない。早急に退避してもらい、状況が安定するまでは、なんとか日本で生活できるように政府で支えることができないだろうか」と、大川教授は訴える。

    署名はChange.orgで集めている。サイトはこちら


    Contact Kando, Yoshihiro at yoshihiro.kando@buzzfeed.com.

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