アメリカ大統領選で敗者は何を語ったのか 歴史に残る「敗北宣言」を見る

    選挙に敗れたら、いさぎよく負けを認め、相手を讃える。これが、これまでのアメリカ大統領選の伝統だ。その歴史を振り返る。

    11月3日(現地時間)に投票が行われたアメリカ大統領選挙。アメリカ人が選挙が終わったと実感するのは、開票結果が発表された時ではない。

    それは、いずれかの候補者が、自ら敗北したことを認めた時だ。相手に直接電話をかけて話し、さらに支持者らに向けてスピーチするのが、今では一般的だ。

    いさぎよく負けを認め、勝者を讃える。そんなGood Loser(よき敗者)の姿を、アメリカ人は常に期待していた。これまでの、敗者のスピーチの歴史を振り返る。

    初の電報

    Bettmann / Bettmann Archive

    史上初めて、相手に通信手段を駆使して連絡を取り敗北を認めたのは、1896年の選挙で敗れたウイリアム・ジェニングズ・ブライアン氏(民主党)だ。

    以下の電報をウイリアム・マッキンリー氏(共和党)に送った。

    「ジョーンズ上院議員から、貴方の勝利を示す結果を聞きました。祝福の言葉を早く伝えたいと思いました」

    これ以降、敗者が勝者に敗北を認めることが慣例となった。なお、次の1900年、さらに1908年の選挙でもブライアン氏が立候補し、敗れている。ブライアン氏は1913年、ウッドロー・ウイルソン政権(民主)で国務長官に就任した。

    時代はテレビに

    通信手段の変化に合わせて、「敗北宣言」の出し方も変わっていく。1928年選挙では、敗北宣言がラジオで伝えられた。1940年選挙では、ニュース映画の一幕に収められ、人々はそれを映画館で見たという。

    CBSによると、敗北宣言が初めてテレビで生中継されたのは、1952年の選挙だった。ドワイト・アイゼンハワー氏(共和)に敗れたアドレー・スティーブンソン氏(民主)は、こう語った。

    「人々は決定を下しました。そして私は、それを喜んで受け入れます。アメリカでは伝統的に、投票日まで激しく闘います。そして、市民が結果を出せば、闘いを終えるのも、同じく伝統的なことなのです」

    Bert Hardy / Getty Images

    1960年選挙では、ジョン・F・ケネディ氏(民主)に激しい接戦の末に敗れたリチャード・ニクソン氏(共和)が、妻と共に支持者の前に立ち、スピーチした。

    「この流れが続けば、次の大統領はケネディ氏になります。私たちは、選ばれた人の後ろで団結しよう。ケネディ氏は私の心からの支援を受けることになります」

    Bettmann / Bettmann Archive

    ニクソン氏は一方、1962年カリフォルニア州知事選で敗れた時、記者会見で報道に偏向があったと激しく批判した。

    「私の行ったことをあなた方は解釈して書く。それはあなた方の権利だ。しかし、あなた方が蹴り回してきたニクソンはもういない。紳士諸君、なぜならば、これが私の最後の記者会見だからです」

    失意の底にあったニクソン氏が政治生命を回復し、大統領の座をつかんだのは1968年選挙のことだ。

    しかし再選後の1974年、民主党本部の盗聴や不法侵入、そのもみ消し工作などを行っていたことが明るみになった、いわゆるウォーターゲート事件の責任を取り辞任することになる。

    再選できなかった現職は「自由に感謝」

    1980年選挙では、現職のジミー・カーター氏(民主)が、カリフォルニア州知事だったロナルド・レーガン氏(共和)に敗れた。

    カーター氏は、市民が自由意志で代表を選べるアメリカの民主主義を讃えた。

    「これが辛くないとは言わない。しかし、アメリカの人々が決めたことを私は受け入れる。次の4年間のリーダーを自由に選ぶことができるこの国のシステムに、私は深い謝意を抱いている。1時間ほど前、私はレーガン知事に電話をかけて、素晴らしい勝利に祝福の言葉を伝えた」

    Historical / Corbis / Getty Images

    破れなかったガラスの天井

    初の女性大統領候補となったヒラリー・クリントン氏(民主)は2016年、ドナルド・トランプ氏(共和)に敗れた。

    敗北を認めるクリントン氏のスピーチは、今も名演説として多くの人々の心に残っている。

    「皆さんに、特に若い人たちに聞いて欲しいんです。私は、自分が信じるもののために、生涯をかけて戦ってきました。勝ったことも、負けたこともあります。辛い思いもしました」

    「あなたたちも、勝つこともあれば、負けることもあるでしょう。負けることは辛い。でも、決して、信じることをやめないでください。正しいことのために戦うことは、価値のあることです。やるべき価値のあることなんです」

    「私たちは最も高い『ガラスの天井』を打ち破ることはできませんでした。でも、いつか誰かが打ち破るでしょう。そのときが、今、私たちが考えている以上に早いことを望みます」

    そして、全ての少女たちに聞いて欲しい、と言葉を続けた。

    「あなたは、価値がある存在で、しかも力強い。あなたの夢を実現する機会を追い求めるに値するんです。そのことを、決して疑わないで」

    The Washington Post / The Washington Post via Getty Im

    2020年の選挙で敗れるのは、だれか。

    その人物は、Good Loserたり得るのか。

    全米、そして全世界は、これから見ることになる。


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