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「大人は想像力が鈍い」上場企業の副社長が小学生に言われて考えたことは、子どもの幹部採用だった

地球温暖化など未来を考えるには、未来の主役の子どもたちが必要だ、という。

東証一部上場企業が、社長、副社長に次ぐナンバー3のポスト「CFO」の公募を、8月9日から始めた。

ただし一つだけ、応募資格がある。18歳以下に限定している。なぜか。

公募を始めたのは、藻類のミドリムシ(学名・ユーグレナ)を使ったバイオ燃料や食品などの開発研究や製造・販売を行っている「ユーグレナ」(出雲充社長)。

CFOといえば一般的には「チーフ・フィナンシャル・オフィサー(最高財務責任者)」だが、同社が公募するCFOとは、会社と地球の未来を考える役職「チーフ・フューチャー・オフィサー(最高未来責任者)」だ。

同社の永田暁彦副社長は「僕がもともとCFO(最高財務責任者)だったんですが、クビになりまして」と笑ったうえで「今度は新しいCFO(最高未来責任者)を採用することにしました」という。

「お飾りではなく、本当の意味で弊社のナンバー3として、未来を考える仕事をしてもらいたい」

国産バイオ燃料の生産へ

ユーグレナ社は、光合成で二酸化炭素を酸素に変える力を持つうえ、人体に必要な栄養素のほとんどを持つミドリムシに着目。世界で初めてミドリムシの大量培養に成功し、健康食品やバイオ燃料をつくることで食糧問題と環境問題の解決に寄与することをミッションとする、バイオ系ベンチャー企業だ。2015年に、経済産業省の第1回日本ベンチャー大賞で最高位の内閣総理大臣賞を受賞している。

2018年10月には、ミドリムシや廃食用油を使ったバイオジェット燃料とディーゼル燃料の製造実証プラントが横浜市で竣工。いすゞ自動車やANAなどと連携し、国産バイオ燃料の航空機やバスなどへの提供を本格化し、バイオ燃料の導入が遅れる日本で、2030年までにバイオ燃料事業を確立することを目指す。

SDGsに向けて

これは、国連の定める2030年までの国際開発目標「持続可能な開発目標(SDGs)」にある17のゴールの一つ「ゴール13:気候変動に具体的な対策を」に向けたものとして、取り組んでいるという。

海外ではサトウキビやトウモロコシなど農作物を使ったバイオ燃料の生産が盛んだ。しかし農作物由来のバイオ燃料生産には、世界人口が増加を続けるなかで食料生産と競合する可能性があり、農地開発による森林の破壊という問題も伴う。

一方、ミドリムシは基本的に、太陽光と二酸化炭素、水があれば自ら光合成で酸素と養分を作り出せ、培養できるという利点がある。ブラジルのように広大な農地があるわけではない日本でも、国産が可能だ。

こうした仕事に取り組む永田さんは、地球温暖化について、東京都内の小学校5年生にインタビューした動画を作成し、7月23日に公開した。

話を聞いたのは、ごく普通の子どもたちだったという。しかし幼い口調ながらも、繰り出す言葉は鋭かった。

「未来の世界よりも、いまの方がより良い世界。なぜなら、今ならばまだ、温暖化を止められるから」「大人は想像力が鈍い」「(大人は)私たちに、人生をくださいと言いたい」

ここから、地球のこれからを考える仕事をしていくうえで、大人だけで考えるのは不十分だと思うようになったという。

「未来のことは子どもたちに」

永田さんは言う。

「2050年を考えると、社長の出雲と私は、70歳と66歳のコンビになっている。一方、いま10歳の子どもたちはまだ41歳。未来のことを決めるのに、未来を生きる当事者がいないのはおかしい。未来を生きる主役の子どもたちこそに考えてもらおうと思うようになった」

「11月に中期経営計画を出しますが、そこで売り上げ予想や中期経営目標を出すことよりも、例えば2030年までに社会をどれくらい良くしていくのか、バングラデシュの子どもたちの貧困がどれだけ改善できるか、CO2排出をどれくらい減らすか。そういったことを、子どもたちとともに、『捜索』と『創作』をしていきたいと思っています」

CFOの任期は1年。作文と面接を経て就任が決まれば、学業と差し支えない範囲で同社のSDGsに向けたアクションの策定や、株主総会や各種イベントでのプレゼンなどを行う。

史上最年少CFOへ

同社と正規の業務委託契約を結ぶが、アルバイトなどで収入を得ることを禁止する学校もあるため、報酬に関しては個別の状況に応じて協議し、対応するという。

国籍不問。日本語が話せなくても、英語が話せれば応募できるが、国内在住が条件だ。

「史上最年少の一部上場CFOが誕生する。将来は『僕は17歳の時にユーグレナのCFOをやっていたんですよ』という子がたくさん出てくるといい」という。

締め切りは2019年8月31日。詳しい要項と応募は同社の特設サイトへ。