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その「空間除菌」グッズ、本当に効果はありますか? コロナ禍で宣伝を強める商品に物申す

新型コロナウイルスの流行が長引いていることもあり、「空間除菌」グッズへの関心が高まっています。メディアを通じて宣伝を強めている商品は本当に効果があるのでしょうか? 今あるデータを確かめてみました。

「空間除菌」という言葉を聞いたり、見たりしたことがある人は多いでしょう。

二酸化塩素や次亜塩素酸水で、空気中のウイルスや細菌を除くことができるとうたっているものです。

大幸薬品 / Via seirogan.co.jp

大幸薬品の「クレベリン」の説明ページ。小さな文字で「※全てのウイルス・菌を除去できるものではありません」との注がついている

大幸薬品は「クレベリン」という商品を出しています。

これは「大幸薬品調べ」で、6畳相当の閉鎖空間にクレベリン置き型製品を180分使用したところ、浮遊・付着ウイルスの一種を99.9%除去したとのことですが、なんのウイルス、細菌かは不明です。

「インフルエンザウイルス」とも「新型コロナウイルス」とも言っていないことを覚えておいてください。

人の健康被害を防ぐかのようなイメージ広告

ただ、広告動画では女性や赤ちゃんがテーブルや部屋の空間にウヨウヨいる病原体から守られるイメージを映し出しています。

大幸薬品 / Via seirogan.co.jp

大幸薬品のウェブサイトで公開されているクレベリンのプロモーションビデオ。身の回りのウイルスや菌がクレベリンで消えるかのようなイメージが流れる

大幸薬品 / Via seirogan.co.jp

クレベリンのCM動画。赤ちゃんの周りに病原体が飛び交っている様子がイメージ映像で流れ、この製品で解消するかのように宣伝される

そして、「あなたが今までやってきた除菌だけではまだまだ足りていないのかも」「ホコリにはウイルスや菌が付着していることもあります。それを吸い込む事により、体の中にウイルス・菌が入ってしまうかも…」とも宣伝しています。

ウイルスや菌が人に与える健康被害を防ぐかのようにほのめかしているのです。

大幸薬品、コロナ禍で日中の医療機関に「クレベリン」を寄付

新型コロナウイルスで、目に見えないウイルスへの恐怖が人々を震わせてきたこの1年、こうした除菌商品の宣伝はさらに強められてきました。

PRタイムスによると2020年2月、大幸薬品はこの空間除菌商品をコロナ禍で医薬品・人的資源とも困窮していた中国の武漢市、北京市、深セン市の病院に1万個を寄付すると発表しました。

大幸薬品のプレスリリースによると、同社は全国の医療機関にクレベリン12万個を無償提供するそうです。

リリースには「新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、診察・治療にあたっておられる医療関係者の皆様の不断のご尽力に心より感謝し、心からの敬意を表します」とした上で、こう書かれています。

「手洗いやマスクの着用による咳エチケット、3 密(密閉、密集、密接)回避等の通常の感染症対策に加え、プラスオンで日常生活での衛生対策に本『クレベリン』が寄与できればと願っております」

まるで、新型コロナウイルスの感染対策に効果があるかのような書きぶりです。

大幸薬品はプロモーションビデオで、病院や学校での使用実績があること、アンケートで「医師の9割が勧めている」という結果が出ていることを、この商品の売りとして宣伝しています。

大幸薬品 / Via seirogan.co.jp

クレベリンのプロモーションビデオでは、病院や学校での使用実績が効果を保証するかのように示される

大幸薬品 / Via seirogan.co.jp

クレベリンのプロモーションビデオより

大幸薬品のプレスリリースによると、ベネッセコーポレーションのたまごクラブとひよこクラブ2021年3月号では、クレベリンが赤ちゃんグッズ大賞1位となったとのことです。

大幸薬品 / Via kyodonewsprwire.jp

ベネッセ・コーポレーションの育児雑誌の「空間除菌部門」で赤ちゃんグッズ大賞を受賞したことが宣伝された

Twitterでも、「クレベリンを置いてから風邪を引かなくなった」とか、「祖母が買ってプレゼントしてくれた。効果がある気がする」という人がいました。

効能・効果をうたってはいけない商品 消費者庁からも行政指導、措置命令も

ところが、この二酸化塩素を使用している置き型空間除菌グッズは、医薬品・医薬部外品ではなく、本来は効能効果をうたってはいけないものです。

医薬品と医薬部外品は、医薬品医療機器等法(薬機法)で定義されています。まず医薬品は、人や動物の病気の診断や治療、予防の目的に使用されるものです。医薬部外品とは、医薬品よりも人体に対する作用が緩やかなものです。

医薬品か医薬部外品として厚生労働大臣や都道府県に承認されたもの以外は、効果効能をうたうことはできません。

空間除菌のグッズは厚生労働省ではなく、消費者庁から行政指導を受けています。

2014年に国民生活センターが空間除菌商品9品目を調べたところ、ウイルスを除く明らかな効果は認められず、薬事法に抵触するおそれがある表現がみられたため、改善を求められました

同年、消費者庁からは「空間除菌」には根拠がなく景品表示法違反に当たるとして、措置命令が出ています

消費者庁

首にぶら下げる形の空間除菌の製品について、消費者庁は行政指導すると共に「表示通りの効果が得られない可能性がある」と注意喚起をした

2020年には、携帯型の空間除菌用品の販売事業者5社に対する行政指導についてという発表がありました (この指導対象に、大幸薬品は含まれていません)。

二酸化塩素、本当に安全か?

私がTwitterでそれを指摘したところ、大幸薬品が二酸化塩素は安全だと言っていると教えてくれた人もいました。「水道水の殺菌や小麦粉の漂白に使われるほどだから、安全ではないですか」という説明です。

大幸薬品

大幸薬品のウェブサイトには、水道水の殺菌や小麦粉の漂白として二酸化塩素が使われていることが紹介され「安全性」を強調する

なんでもそうですが、量が大事ですね。ウイルスや細菌に対抗できるほどの二酸化塩素は、人体にも有害ではないでしょうか。実際に二酸化塩素は、医薬品や医薬部外品ではないので、人体にどうかということは検証されていません。

検証実験は発表されていませんが、事故は報告されています。

小児科学会のホームページには、「Injury Alert(傷害速報)」というページがあります。そのNo.40は、「ウイルス除去と称されている製品による中毒」というものです。

1歳の子がウイルス除去剤を誤って飲み込んでしまい、「メトヘモグロビン血症」に陥ったというものです。

呼吸状態が悪化して人工呼吸が行われ、胃から吸引されたものと血液検査からゲル状の二酸化塩素を主成分とする空間除菌グッズの誤飲によるものだとわかりました。(二酸化塩素粉末状製品による類似症例 )。

また、首から下げるタイプの空間除菌商品もありますが、2014年『皮膚科の臨床』に「次亜塩素酸ナトリウム含有の空間除菌剤使用による化学熱傷の1例」という症例報告があります。

15歳の子が、携帯型空間除菌剤(ウイルスプロテクター)を使用したところ、赤くなり痛みが生じ、紅斑(赤みがかった発疹)とびらん(ただれ)が見られたというものです 。

大幸薬品の製品に限らず空間除菌をするといわれている商品が、実際にウイルスや細菌を除去する効果は、無いか限定的である一方、こういった事故が起こっているものを使用するのは問題です。

厚労省や国も推奨せず

ちなみに新型コロナウイルスへの空間除菌グッズの効果や安全性については、厚生労働省は経済産業省や消費者庁と合同の特設ページ「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」で、こうはっきり否定しています。

「人がいる環境に、消毒や除菌効果を謳う商品を空間噴霧して使用することは、眼、皮膚への付着や吸入による健康影響のおそれがあることから推奨されていません」

政府も参議院議員、浜田聡氏が1月19日に二酸化塩素を使った空間除菌装置の効果について質した質問主意書に対し、こう回答しています

「現時点では、国際的な知見を踏まえ、新型コロナウイルス感染症対策として、お尋ねの「二酸化塩素」を含む消毒剤等について、人の眼や皮膚に付着したり、人に吸入されたりするおそれのある状況において空間に噴霧することは推奨していない」

「特定ウイルス・菌、疾病等に対する効果・予防等を謳うことはできません」

大幸薬品のホームページにあるQ&Aには、「新型コロナウイルス対策に本当に効果はあるのか?」という質問に対して、「『クレベリン』は日用雑貨品のため、特定ウイルス・菌、疾病等に対する効果・予防等を謳うことはできません。」とあります。

大幸薬品 / Via seirogan.co.jp

「新型コロナウイルス対策」として本当に効果があるのかという問いに対し、大幸薬品は「新型コロナウイルスに対するデータは現在取得中です」とした上で、「『クレベリン』は日用雑貨品のため、特定ウイルス・菌、疾病等に対する効果・予防等を謳うことはできません」という回答を掲載している

ですが、私が見る限り、ホームページ全体で、あまねくウイルスや細菌を減らし、病気を予防する効果があるように印象付けていると感じてしまいます。

実際の商店やオンラインショップでもそのように扱われ、「ウイルスに効く」などと宣伝文句が書いてあります。

一般の人がこういった空間除菌商品には効果がないか限定的であること、景品表示法に違反している可能性があること、危険性を認識することはとても難しいです。消費者庁にはぜひ、もっと厳しい手段をとってほしいと思います。

「クレベリン」を販売する大幸薬品は「病気に対する効果・予防はうたっていない」

なぜこのような商品を売るのか、BuzzFeed Japan Medicalの編集部を通じて、大幸薬品にいくつか質問を投げかけました。

大幸薬品

大幸薬品のウェブサイトトップページ。まず主力商品であるクレベリンのロゴが現れる

まず、医薬品や医薬部外品ではないのにウイルスや菌による健康被害を防ぐ効果や効能をほのめかすのは薬機法違反に当たらないか見解を聞いたところ、以下のような衝撃的な答えが返ってきました。

「『クレベリン』の広告は薬機法を遵守し、感染抑制効果や特定のウイルス・細菌の不活化効果、疾病等に対する効果・予防等は謳っておりません。『ウイルスや菌を除菌』という表現に関しては、医薬品・医薬部外品での効能効果を示すものではなく日用雑貨品での機能として表示しております。また、吸い込みに関する表現については、ホコリに関して表現をさせて戴いた内容であり、それに伴う病気やその予防に関して表現しているものではございません」

つまり、ウイルスや菌が原因の病気を予防する効果を言っているわけではないとのことです。当然、新型コロナにもインフルエンザにも効果があるわけではないことを会社としてはっきり認めています。

2014年に消費者庁により、景品表示法の優良誤認に当たるとして、再発防止を求める措置命令が出された件については、「消費者庁のご指導を受け、指摘を受けた『広告表現』に関し『※ご利用環境により成分の広がりは異なります。』という注釈文言を入れるなどの対応を行いました」との回答です。小さな注を付ければいいとでも言うのでしょうか?

子どもの誤飲事故で健康被害が起きた商品については、「チャイルドロック機能を持たせた別の付属キャップを取り付けることで、子供の誤飲を防止する対策をとっています。またケースには『誤飲・誤食に注意』と明記して注意喚起をしています」としています。

さらに、会社のQ&Aで「新型コロナウイルスについてデータを取得中」と書いている意味について尋ねました。

回答では「新型コロナウイルスに対する効果検証につきましてはNITE等で報告されております、各種消毒成分の有効性評価を参考にして、二酸化塩素ガス溶存液の研究を行いました」と、プレスリリースを提示しています。

これを見ると、試験管レベルの研究であり、人への健康影響の効果を検証する研究ではありません。これでは人に対する新型コロナウイルスへの効果をほのめかすことさえできないでしょう。

大幸薬品は2020年12月期の決算報告で、今後、医療機関や教育施設、公共交通期間、宿泊施設、地方自治体などに販売する計画を立てています。人への効果が証明されていない商品を公共性の高い場所に販売することについては以下のような答えが返ってきました。

「手洗いやマスクの着用による咳エチケット、3密(密閉、密集、密接)回避等に加え、プラスオンしたかたちで職場環境や日常生活での衛生対策に寄与できればと願っております」

はっきり言って意味不明です。効果がないのを認めているのに、どうやったらプラスオンできるというのでしょうか?

最後に、人への効果が科学的に証明されていない商品をあたかも新型コロナの感染予防にも効果があるかのように誤認させて売ることに批判が高まっていることについて、企業の社会的責任をどう考えているのかも質しました。

「日用雑貨品に該当するため、消費者庁のもとめている除菌機能の根拠に基づく広告表示を遵守し、さらに薬機法にかかわる感染予防効果や特定のウイルス・細菌の不活化効果等を謳うことは一切行っておりません。一方では、二酸化塩素を理解していただくため、二酸化塩素の研究を積極的に実施し、二酸化塩素の情報提供に努めております。その中で、生活者の方に誤認混同させているようであれば、今後は改善するよう努めてまいります」

これが回答です。特定の菌やウイルスへの効果をうたっていないから問題ないとでも言いたいのでしょうか。

大幸薬品は、事実を誤認させる宣伝方法でクレベリンを売っています。2014年の改善要求にも十分に応じているとは思えません。大きな文字やイメージ映像でいかにもウイルスや菌を死滅させて病気を予防するように見せながら、小さい文字でごく一部にだけ言い訳を入れるのはたいへん不誠実です。

行政指導を無視しながら、その上医療機関に12万個の商品を送るのは、消費者庁や消費者、医療機関をバカにしているといえるでしょう。企業の倫理観に任せているだけではいけないのではないでしょうか。

【森戸やすみ(もりと・やすみ)】 小児科専門医

1971年、東京生まれ。1996年、私立大学医学部卒。一般小児科、NICU(新生児集中治療室)などを経て、どうかん山こどもクリニックを開業。主な著書に『小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK』(内外出版)、『小児科医ママが今伝えたいこと! 子育てはだいたいで大丈夫』(同)、共著に『小児科医ママとパパのやさしい予防接種BOOK』(同)など。ツイッターはこちら