学校で起きた不祥事を、高校生は報道できるか

    プレインフィールド高校の卒業生キーラ・ハワードは、「学校側が事実の公表を嫌がる理由がわからない」と話す。

    Luke Sharrett for BuzzFeed News

    1月24日、インディアナ州プレインフィールド高校の前に立つキーラ・ハワード。

    インディアナ州郊外のプレインフィールド高校に通うキーラ・ハワードの同級生は、新年度を迎えてすぐ、学校に来なくなった。

    この同級生リーバイ・スチュワートに何が起きたかを知る者はおらず、学校側からの説明もなかった。一部では、停学処分を受けたのだろうと噂されていた。

    スチュワートが欠席していることは、生徒数1600人の学校中に知れ渡っていた。

    スチュワートは活発な生徒で、インディアナ州大会で優勝したマーチングバンドでドラムメジャーを務めていた。「彼は目立つ生徒でした」。ハワードは学内メディアの編集にも携わっており、ほかの生徒より好奇心が強い印象があった。

    3週間後、地元の報道機関が一斉に、スチュワートが学外で逮捕され、複数の性的暴行容疑で起訴されたと報じた。17歳のスチュワートは、成人として起訴されたのだ。

    裁判記録によれば、警察に対し4人の女性が、スチュワートから脅迫やハラスメント、暴行を受けたと証言している。間もなく、テレビ局が取材のために学校に押し寄せ、全米規模の報道機関がそれに続いた

    当時、ハワードは17歳の最上級生で、月刊の学内誌「クエイカー・シェイカー(Quaker Shaker)」の編集部に所属していた。そのため、スチュワートの事件を調べたいと思った。

    ハワードは事件について報じ始めたが、障害が立ちはだかった。学校側から、学内誌の顧問を務めていた教員に対して、スチュワートの事件は慎重な対応が必要であるため、生徒たちが扱うべきではないという通達があったのだ。

    編集部の生徒たちは妥協案を提示した。スチュワードの事件を報じず、その代わりに、性的暴行の防止に関する記事を書くという案だ。しかし、学校側はこのアイデアも却下したという。

    学校側は、性的暴行を防ぐことよりも、地域社会からどう思われるかを気にしているとハワードは分析している。2018年12月、ハワードは通常より早くプレインフィールド・高校を卒業した。

    ハワードはBuzzFeed Newに対して、「私たちの学校はイメージをとても気にしています。いつもそうでした」と語っている。

    Luke Sharrett for BuzzFeed News

    プレインフィールド高校の近くにあるコーヒーショップで撮影したハワード。

    ハワードが置かれたような状況は近年、全米の高校で頻繁に見られるようになった。しかし最近になって、学生メディアの編集部と学校側の対立がエスカレートしており、多くの生徒がプレインフィールド高校のような激しい攻防に巻き込まれている。

    30年にわたって生徒たちの検閲問題に取り組んできたNPO「学生報道法律センター(Student Press Law Center)」の弁護士マイク・ヒースタンは、「#MeToo運動が始まってからの1年余りは間違いなく、私のキャリアで最も困難な挑戦が続いています」と話す。「#MeToo運動は、大学や高校のキャンパスに大きな影響を与えています」

    現在、あらゆる年代のジャーナリストが性的不品行に注目している。しかし、多くの地方紙が規模を縮小させているなかで、校長の経歴詐称や、教員による嫌がらせの隠蔽など、地方紙ではなかなか取り上げられないことを学生ジャーナリストたちが報じている。

    1月には、ニューヨーク、ブルックリンにある進学校の学校新聞が、2人の生徒が黒人に扮して撮影した人種差別的な動画について、第一報を伝えた。

    学校側は、物議を醸す記事を検閲する権利を主張している。特に、学校新聞の予算が学校側から出ている場合は、校内での争いや名誉毀損、自殺などの問題状況につながりかねない記事は阻止すべきだと、学校側は考えている。

    一方、生徒側や、合衆国憲法修正第1条(言論の自由)を専門とする弁護士、一部の政治家は、検閲の問題が深刻化していると捉えている。アメリカの大統領が報道機関への敵対心をむき出しにしている今、生徒たちは言論の自由が尊重されていないと感じているのだ。

    検閲の問題は特に女子生徒に大きな影響を与えている。高校で学生メディアの編集に携わる461人を対象にした2017年の調査では、教職員から何かについて報じないよう指示された経験があると答えた者は38%に上った。また、調査の対象となった女子生徒の半数以上が、学校側の否定的な反応を恐れ、特定の話題を報じなかったことがあると回答している。同様の回答をした男子生徒は27%だった。

    調査を行ったカンザス大学のゲネル・ベルマス教授は「この調査からわかったことは、学校側は学生メディアにチアリーダー役を求めているということです」と述べている。「難しいテーマを取り上げてほしくないというのが彼らの本心です。臭いものにふたをしたいと考えているのです」

    ユタ州では2018年、ヘリマン高校が学生メディアのウェブサイトとソーシャルメディア・アカウントを閉鎖するという出来事があった。学生メディアが、ある教師が解雇されたことを報じた後のことだ。解雇の理由は、ある生徒に「抱きつくなどして、同意なく体を触り」、さらに、不適切なテキストメッセージを送ったというものだった。

    このニュースを報じたのは当時18歳のコナー・スパーで、情報公開請求によって入手した文書に基づいた報道だった。文書によれば、被害を受けた生徒の両親は、解雇された教師ライアン・ホワイトの接近禁止命令を申し立てていた。この教師は、以前勤めていた学校でも解雇処分を受けていた。

    学校側は、ホワイトの記事を削除した理由について、生徒や保護者に説明しなかった。そこで、スパーと17歳の編集長マックス・ゴードンは自分たちのウェブサイトを立ち上げ、記事を再び公開することにした

    編集部の約半数が賛同し、「無法者たち」のニュースサイトに協力した。その後地方紙全国紙がこのサイトを取り上げた。

    大学1年生になったスパーはBuzzFeed Newsの取材に対し、「公立校では、常に学校側が完全な支配権を握っています」と語った。

    「学校側は何でも望み通りにできます。解雇した教員に関する記事の検閲など容易なことです」

    Courtesy Max Gordon

    左:コナー・スパー(左)とマックス・ゴードン。

    右:学生メディア「テレグラフ(Telegraph)」が検閲を受けた後、スパーとゴードンが独自に立ち上げたウェブサイト「テレグラム(Telegram)」のホームページ。

    学生メディアはどれくらい自由を享受すべきか。現在の議論は、連邦最高裁判所が1988年の「ヘーゼルウッド学区対クールメイアー」訴訟で下した判決に基づいている。

    訴訟の当事者となった校長は、学校新聞に2つの記事が掲載されるのを阻止した。1つ目は、10代の妊娠と避妊に関する記事、もう1つは、生徒の両親が離婚した場合の影響に関する記事だ。

    最高裁の判決は、学校の「教育という基本的使命」は、生徒たちの言論の自由よりも優先され、正当な理由さえあれば学校側には学生メディアを検閲する広範な権限があるというものだった。

    ただし、「正当な理由」の内容が定義されていなかったため、さまざまな解釈が可能だ。学校の管理者や校長は長年、性的暴行で告発された教職員や生徒の記事を差し止める際、この判例を引き合いに出し正当化してきた。

    これに対して、リベラルなアプローチを採用する州もある。13の州の法律では、度を超えている・法律に反する・授業の妨げになると証明できない限り、学校側は学生ジャーナリズムを検閲できないと定められている。

    こうした州のひとつであるバーモント州では、2018年9月、バーリントン高校の学生ジャーナリストたちが法律に守られた。進路指導教員がプロにふさわしくない行為を働き、免許停止の危機にあるというニュースを報じたことがきっかけだ。

    この記事を書いた4人の生徒は、バーモント州教育局から、進路指導教員マリオ・マシアスの調査書類を入手していた。マシアスが記録を改ざんし、同僚の女性たちを傷つけるような態度を取り、教育実習生に恐怖心を抱かせたことを示唆する内容だった。

    ノエル・グリーン校長は生徒たちに対して、記事の削除を命じた。グリーン校長は地元の週刊紙に対し、マシアスを高く評価しており、学生メディアの記事は「一人の従業員の職場環境を過酷なものにしました」と説明している。

    記事の執筆に関わった最上級生のハル・ニューマンは「ニュース記事を検閲されるのは本当にいら立たしいことです」と話す。「同時に、検閲されるのは、重要な何かが隠されている証拠でもあります」

    数日後、学校側は命令を撤回した。バーモント州の法律では、物議を醸す内容であること、あるいは、学校に批判的であることだけを理由に、学校側が記事を削除させることは禁じられていると指摘されたためだ。ニューマンらは記事を再投稿し、マシアスの一件を報じ続けた。

    4人のうちの1人である2年生のジュリア・シャノン・グリロはBuzzFeed Newsに対し、「法律のおかげで、学生メディアの読者は、スポーツの試合だけでなく、もっと重要な記事を求めているという自信を持つことができました」と話している。

    バーリントン高校とヘリマン高校にコメントを求めたが、回答は得られなかった。

    3年前から、インディアナ州議会で共和党のエド・クレア議員が、バーモント州と同様の法案を成立させようと努力している。名誉毀損にあたる可能性がある場合や、違法行為、破壊活動あるいは校則違反を助長する場合を除き、学生メディアを検閲してはならないという内容だ。

    2018年には下院で過半数の支持を得られなかったため、クレア議員は2019年1月10日に法案を再提出した。

    クレア議員はBuzzFeed Newsの取材に対し、「現在、ジャーナリストやジャーナリズムへの風当たりが強いため、かつてないほど学生ジャーナリズムが必要とされています」と説明した。

    「彼らは、ユニークな立場でじっくり記事と向き合うことができます。また、ほかのジャーナリストには入手できないニュースを仕入れることができます。さらに、仲間たちとユニークな信頼関係を築いています」

    前回の議論のなかで開かれた委員会の公聴会では、インディアナ州の学校当局が学生メディアをどのように見ているのかが浮き彫りになった。

    2018年に開かれた公聴会で、インディアナ州公立学校管理協会の代表を務めるJ・T・クープマンは議員らに対して、「学校側が出資する出版物は、PRのためのツールなのです」と述べた。そして、「学校当局の監視がなければ、学校メディアがPRに悪夢をもたらすことになりかねません」と続けた。

    インディアナ州教育委員協会の弁護士を務めるリサ・F・タンセルは、学校側が出資している場合、「学生ジャーナリズムに対して、完全な言論の自由と報道の自由を与えるという考えを支持するわけにはいかない」と話す。

    タンセル弁護士のグループは、クレア議員が提出した法案が議会を通過すれば、学生メディアを指導する顧問に対して、学校は何も行動を起こせなくなるのではないかと懸念している。

    NPO「学生報道法律センター」のヒースタン弁護士は、高校での検閲問題について電話相談を受けた場合、まず顧問の教官は事態に関与せず、生徒が主導権を持って当局に異議を申し立てするよう勧めている。

    学校側が顧問に対応を要求する場合もしばしばある。「彼らの結びつきは弱い、と学校側は思っているのです」とヒースタン弁護士は話す。また、顧問が板挟みの状況に追い込まれてしまった場合、生徒は、味方である顧問を守るために、自分たちが折れる場合もあるという。

    これこそまさに、プレインフィールドで起こったことだった。ハワードは、顧問のミッシェル・バーレスに迷惑をかけたくなかった。だから彼女は無謀な策に出て、逮捕されたクラスメイト、レヴィ・スチュワートについてのニュースを外部のウェブサイトで報じるようなことは考えなかった。

    学内誌「クエイカー・シェイカー」の当時のスタッフライターたちは、みんな顧問のバーレスが大好きで、彼女に絶大な信頼を置いていたという。BuzzFeed Newsはバーレスに取材を申し込んだが断られた。

    Luke Sharrett for BuzzFeed News

    プレインフィールド高校が発行する学内誌「クエイカー・シェイカー」のバックナンバーと、物議を醸した学内誌「デートのときのサバイバイル・ガイド:機密を公開」

    「デートのときのサバイバイル・ガイド:機密を公開(Plainfield High School’s Dating Survival Guide Declassified)」と題された学内誌が2017年に出版されると、顧問のバーレスは、生徒たちが書いた記事の内容をめぐって学校当局から詰め寄られた。

    この学内誌は、高校生がデートで経験する天国と地獄に焦点を合わせており、ファーストキスや、親と会うときのこと、虐待的関係などについて取り上げていた。

    またこの学内誌には、「ポリアモリー(複数との関係)」や「セフレ」の定義や、「セクスティング(性的な内容をSMSでやりとりすること)」についての世論調査も取り上げられていた。教育委員会のメンバーと一部の親は、この学内誌はティーンにふさわしくないと不快感を示した。

    「『セクスティング』を除けば、『セックス』という言葉は一度も使われていませんでした」とハワードは指摘する。

    この物議が引き金となり、校区当局は「クエイカー・シェイカー」の資金調達方法を変更した。同誌のスタッフは2018年8月、保護者への年間購読料5ドルの請求が廃止になったことを知った。今後は彼らが自分で購読者を確保しなければならなくなったのだ。

    ハワードによれば、「クエイカー・シェイカー」のかつての月間発行部数は約1600部だったが、現在は400部以下にまで減っているという。同誌編集者のひとりの親であるリッチ・トリヴェットは、教育委員会に対し資金調達方法の変更について毎月の定例会議で話させてほしいと何度も申し入れているが、未だ実現しないという。

    「クエイカー・シェイカー」の資金調達方法が変更された翌月、問題の生徒スチュワートは逮捕された。2人の若い女性が警察に対して、スチュワートにオーラルセックスを強要されたと話したのだ。別の女性は、同意していないにもかかわらず、彼が指を性器に入れてきたと話し、また別の女性は、言い寄ってくる彼を拒絶すると平手打ちされたと話した。

    スチュワートは無罪を主張しており、3月に裁判を受ける予定になっている。しかし、学生ジャーナリストが彼の裁判について書くことはできない。

    スチュワート事件の報道に対してプレインフィールド高校が出した禁止令は、今も有効なのだ。たとえ、同校が「クエイカー・シェイカー」の出版費用を出していなくとも。

    同校は「クエイカー・シェイカー」のスタッフが作業を行うためのコンピューターや教室の提供を引き続き行っており、生徒であるスタッフ達もこのコースを受講して単位を取得しており、こうしたことが権力を与えているのだ。

    Luke Sharrett for BuzzFeed News

    「学校側が事実の公表を嫌がる理由がわかりません」とハワードは語る。「検閲がまた問題を生むだけなのに……」

    学区の広報担当者であるサブリナ・キャップにコメントを求めると、生徒たちが事件のことについて書くことを禁じられているのか、それとも、性的暴行全般について書くことを禁じられているのかはわからないと、彼女は語った。

    キャップによれば、プレインフィールド高校の校長も、教育委員会のメンバーも、インタビューには応じられないという。

    BuzzFeed Newsは、スチュワート事件の報道の禁止へとつながった議論の詳細を知るため、学区に対して記録の開示を求めた。結局、学区からは、この件に関係のあるメールのやりとりは存在しないため、記録は開示できないという内容の手紙が送られてきた。

    プレインフィールド高校を取り巻く状況には、クレア議員も関心を寄せており、学生ジャーナリストの活動をもっと保護するようインディアナ州にはたらきかけてきた。同校の生徒たちは州議会議事堂に出向き、クレア議員の法案を支持する自分たちの立場を表明した。

    学校当局は、この法案に反対する理由を説明するように促されたが、その求めには応じなかった。キャップによればこの措置は、当局と生徒の対決を避けるためだったという。

    校区の監視はうまくいっているとキャップは考えている。

    「これは保守的なコミュニティ内の公立高校で行われている授業であり、その費用は税金でまかなわれています」と彼女は語る。「今後もこれまでと同じようにうまくいくと私たちは思っています」

    しかしクレア議員の意見では、学区のアプローチは生徒への弾圧である。「生徒はみずからに検閲をかけるようになっています」

    「外に飛び出して、難しいニュースや難しいトピックを追いかけなくなりました。そうしたものは、出版されたり放送されたりしないとわかっているからです。まさに萎縮効果です。多くの学校では、こうした現実、そしてサポートが不足しているせいで、ジャーナリズムプログラムが衰退しています」

    現在、学生メディアの数を示すデータの入手は困難だが、一部の調査からその全体像を知ることはできる。どうやらそれは、クレア議員の主張が正しいことを証明しているようだ。2011年の調査から、学生メディアを発行しているアメリカ国内の公立高校は「64%」であり、1994年の調査の「78%」から低下していることがわかる。

    こうした学生メディアの衰退は、1990年代以降、シカゴニューヨーク市などの大都市でも見られてきた。

    また、これとは別に、非営利のナイト財団(Knight Foundation)は、高校の生徒と教師を対象に、アメリカ合衆国憲法修正第1条(言論の自由)に関する調査を行っている。同財団が2018年に発表したレポートによれば、ニュースメディアに対する政府の検閲を支持する生徒は「少数派」だったが、次第に増えつつあるという。

    学生メディアに対して、デリケートなテーマのニュースを報道する自由が与えられた場合、おそらくはポジティブな影響のほうがネガティブな影響を大きく上回るだろう、と指摘する顧問の教師たちもいる。

    6年前、カリフォルニア州パロアルト・ハイスクールでジャーナリズムを教えていたポール・カンデルの教え子たちが、性的暴行に関する大規模プロジェクトを提案した。学内誌『Verde』の顧問を務めていたカンデルは、まず生徒たちに、ジャーナリズム倫理を教える非営利団体「ポインター・インスティチュート」(Poynter Institute)のオンラインコースを受講させ、学生報道法律センターなどの団体にアドバイスを求めさせた。また彼は、学校当局にこのプロジェクトのことを知らせ、邪魔が入らないようにもした。

    その結果として生み出されたさまざまな記事により、生徒たちは、ラジオや学校新聞の集会に招かれ、自分たちの成果について話すこととなった。カンデルは現在、このプロジェクトを取り入れようと他校のメディア顧問からかかってくる電話をさばく毎日を送っている。

    「こうしたプロジェクトをかたちにすることで、私たちは悲惨な状況を減らしています」とカンデルは語る。

    「ほかの記事は読まない生徒たちでも、こうした記事なら読んでくれるかもしれません。きっと彼らの行動は変わっていくはずです。たとえ少しずつでも」

    この記事は英語から翻訳・編集しました。翻訳:米井香織、阪本博希/ガリレオ、編集:BuzzFeed Japan