
自然災害が多いと言われる日本だが、大雨や土砂災害をはじめとした災害の発生頻度はさらに増加傾向にある。
災害大国・日本に生きる私たちにとって、防災力を向上することは重要な課題だ。本記事では、子どもやパートナー、親、きょうだい……もしもの時に、大切な家族を守るために何をすべきか? 家族と防災をテーマに、防災士資格をもつ気象予報士・池田沙耶香さんとともに考える。

「絶対に迎えに行くから、必ず待つ」3.11を教訓に、家族で決めたルール
―3.11は、どのように過ごされていましたか?
当時は、結婚してすぐくらいのときだったかな。なので、家族二人だったんです。私は都内の自宅近くに、夫は職場にいました。離れ離れで連絡も取れず、電車もすべて止まっていた。不安でいても立ってもいられず、車で夫を迎えに行ったんです。だけど渋滞で進めず、飛び出したものの、出会えるかわからなくなってしまった。

夫は夫で、自宅に近づこうと歩いていました。私も車でゆっくり向かって。それで、本当に偶然「出会えた!」みたいな感じでした。今思うと、無謀だったと思います。その教訓をもとに、有事の際は必ず家集合と決めました。
今は娘が生まれ、家族三人になりました。娘は学校や家以外の場所にいると一人で帰ることが難しい。なので、夫か私と一緒じゃなかったら、そこに留まる。絶対に迎えに行くから、必ず待つ。津波などの例外もありますが、そういうふうに決めています
―ルール決めをされているんですね。
はい。やっぱり連絡がとれないと心配になっちゃうので、そこはもう信じて待つと決めています。小学校では定期的に防災訓練と引き渡し訓練(親が子どもを迎えに行く訓練)があるので、その度に「必ず学校にいるんだよ」と娘に伝えています。
3.11の映像を真剣に観る、小学生の娘。母がかけた言葉とは
―娘さんと防災について話をすることは多いですか?
娘は小学ニ年生ですが、地震の音とかが怖いみたいで、「そろそろ防災訓練だね」と、ちょっと嫌そうな顔で言ってきます。でも、それをきっかけに話ができるのはいいかなと思っています。

また、昨年は3.11から10年ということで、特番が多かったですよね。それをいくつも娘と一緒に観ました。娘は映像を素直に受け取るので、きっと深く傷ついたと思うんです。それでも、「怖い」や「観たくない」とは言ったりせず、じっと真剣に観ていました。
災害を口で説明することはなかなか難しい。だけど、映像を一緒に観ることはできます。そして、観た後は「災害があっても、絶対に守るからね」「絶対に迎えに来るからね」と伝えています。やっぱり災害を写した映像を一緒に観て、一緒に話し合うことは、大切だと思います。
「気づいたら、大切な日が過ぎていた」災害を風化させないために
―過去に起こった災害を風化させないことにも繋がりますよね。
そうですね。子どもたちに災害について考えてもらうには、押し付けるんじゃなくて、「こんなのがあるよ」というきっかけを、ポロポロ撒いておくことが必要なのかなと思います
ちょっと話が変わりますが、私は広島出身なんです。広島にいるときって、原爆の日が近づくと、その関連のテレビ特番ばかりで。そして、実際に投下された時間になると、運転中でも道端に車を停めて黙祷をするくらいだったんです。でも上京してからは、きっと特番もやっていたと思うんですが、一人ではテレビもあまり観なくて、気がついたら8月6日が過ぎていた。

とても衝撃を受けました。「え?」と思って。今までは、目に触れるところでいっぱいやっていたし、習慣としてあったから、その日を大切にしていたけど、何も考えずに過ごせば、まったく普通の8月6日だったんだなと思って…。だから、周りの環境も大切なんだと思います。3月11日もそうですが、知るきっかけづくりをすることが、3.11を知らない次の世代に必要なのかなと思います。
隣人の声かけで避難率が高まる。地域コミュニティの力
―防災には地域コミュニティが重要とも言われます。地域の人との助け合いについて、どう考えていますか?
娘が通う小学校には外国籍の子どもたちも多くいます。なので、娘はクラスメイトの両親が日本語を話せないことを知っていたりする。そうした家庭では、有事のとき「何が起きているか、わからないよね」と、娘から言われたことがあったんです。それで私も、ハッとして。「そうだな…」と。娘はクラスメイトと日々一緒に過ごすので、防災訓練をする度に思うことがあるみたいです。
それ以外にも例えば、「パパとママが働いていて」とか「パパが単身赴任で」とか。そういうのって、親は知らないけど、子どもたちは知っていたりする。その情報を家族で共有すると、有事に助け合うことができます。また、子どもがいると一緒に遊んで、近所の方と顔見知りになる。そういう繋がりの一つひとつが、防災には大切なんだと思います。

一方で、気象予報士の仕事で避難を呼びかけるときも、最近は「逃げてください」と言うよりも、「声かけをしてください」と言うようにしているんです。それこそ、隣人が「私は逃げるけど、あなたは?」みたいに声をかけると、避難率がすごく高まるんです。それは、まさに地域コミュニティの力ですよね。
「絶対に逃げているはず」平時に家族と信頼を築く大切さ
―最後に池田さんが防災でもっとも大切にしていることを教えてください。
家族で信頼関係を築いておくこと。東北の方言で「てんでんこ」という言い伝え(津波はあっという間にやってくるから、周囲の者をかまうよりも、各自てんでんばらばらに逃げなさいという意味)があるように、誰かのところに行くことが、逆に危ない場合もある。3.11のときは、不安で私も夫を迎えに行っちゃいましたし…。
けれど、そこにちゃんと信頼関係があれば、「絶対に逃げているはずだから、私も逃げる」と思えるはず。だから日頃から家族で話し合って、ルールを決めておく。そして、最後はもう信じる。何があっても「絶対に逃げているはず」「必ず来てくれる」そういう固い信頼を平時から築いていることが大切だと思います。

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母として、気象予報士として、防災と真剣に向き合う池田沙耶香さん。彼女はトヨタ自動車の取り組みを知り、次のように語ってくれた。
「トヨタの『防災給電サポーターLINE』(防災に役立つ豆知識や、給電車の使い方の情報などを提供するサービス)を使えば、家庭内で子どもとクイズ形式で楽しみながら防災を学ぶこともできます。それに、居住地域を設定すれば災害時に通知も届くので、『うちが危ない』とすぐに気づくことができる。これは、逃げ遅れ防止にも繋がるのでは。こうしたサービスは、家族のように身近な存在になってくれると期待しています」
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※2022年3月10日HuffPost Japan掲載『「災害があっても、絶対に守る」気象予報士で防災士の母が語る、家族を守るルール決め』より転載