もし、生理が物体化したら。そして、それが現実にいたら。
その世界では、疎まれながらも、ちょっと頼りになる、不思議な「生理ちゃん」が月に一度そばにいる。
第23回・手塚治虫文化賞を受賞した、小山健さんによるweb漫画『ツキイチ!生理ちゃん』が実写化された。映画『生理ちゃん』の10月6日の試写会で、主演の二階堂ふみさんらが「生理ちゃん」との絶妙な関係を語った。
月に一度の「きちゃった」

「きちゃった」
月に一度、ここぞという大事な瞬間でもおかまいなしにやってくる生理ちゃん。下腹部に強烈なパンチを食らわせ、大きな注射器で血液を吸い取っていく。
大きな生理ちゃんを背負って、体のだるさは表現される。

本作では、原作でイラストの「生理ちゃん」が着ぐるみとなって実写化された。登場人物のそれぞれの「生理ちゃん」の声を担当しているのは、演じた本人たちだ。主人公の青子を演じる二階堂さんは、「生理ちゃん」との撮影の苦労を語りながら、試写会に現れた「生理ちゃん」との再会を喜んだ。
「最初の頃は背負ったりとかが本当に大変で。でも、終盤になると、(生理ちゃんとお別れする)寂しさを感じていたので、久しぶりに会えて嬉しいです」
渾身の「生理ちゃーん!」

青子が勤める出版社の清掃員のりほは、自暴自棄の末に、「生理ちゃんはもう来なくていい」と言い放つ。全てを諦めて否定していたりほが、恋に踏み出したいという自分の本当の気持ちに気付き、生理ちゃんを探し求めて叫ぶシーンが印象に残っていると二階堂さんは話す。
「生理ちゃんがいなくなって、家のドアをガッと開けて、これでもかって大声で『生理ちゃーん!』と叫ぶシーンがすごく好きで。さすが沙莉さんだなと。ご本人のハスキーな声も相まって、いい生理ちゃんが聞けたな、と」
りほを演じた伊藤沙莉さんは、笑みを浮かべながら答えた。
「『生理ちゃーん!』と叫ぶことはこれまでなかったので、ちょっとだけ恥ずかしかったです。けど、そんなこと考えてらんないくらい、生理ちゃんを探し求めていたので」
コミカルに描かれていた生理ちゃんが、いつの間にか、青子やりほの心の支えになっていた。ややこしい恋の相談相手をしてくれて、踏み出せない心にそっと背中を押してくれる。
生理ちゃんとは、どんな存在なのか。品田俊介監督は語った。
「生理ちゃんは、一人一人の一番近くに寄り添って、親友以上の存在です」
女性の生理を「知る」こと

「生理を言い訳になんてできない」
青子の女性上司は、青子のより、はるかに小さな生理ちゃんを横目に話す。
同じ女性であっても、同じ苦痛とは限らないことを知ってくれない。
「女の子って大変だよな」
青子の男性上司である渋谷誠は、生理で体調の優れない青子に、冷たい視線を投げかける。青子の仕事を他の同僚に任せて、「女は使えないな」との表情を浮かべる。苦しみを知ろうともしない不誠実な態度に、生理ちゃんが、誠に逆襲のパンチを食らわす。
「こんなの初めて」
あまりの痛さに、誠はうずくまる。
男性上司である誠は、実際にパンチをされるまで、「女性に生理がある」ことをきちんと理解していなかった。

「本当に大変なのは生理を理由にできないってことなんです」
青子はこう漏らす。
原作者の小山さんはweb漫画「ツキイチ!生理ちゃん」で12話以降、以下のような文言を各話に添えている。
「性教育で『一応』教えられる「女子の月経・生理」の授業。生理のメカニズムや大変さを知ることはもちろん大変だけど、なにより大事なのは女性に生理があることを『知る』ということ」
悩みや苦しみに寄り添って

女性特有の生理を描いた映画だが、品田監督は「小さな子どもから大人まで、幅広くいろんな方に見て欲しい」と語る。
二階堂さんも、本作に込めた思いを語った。
「男性対女性となるのではなくて、自分とは違う人が抱えている悩みや苦しみを、なるべくその人に寄り添いながら理解してあげられたら」
生理の悩みは、女性によって異なる。原作では、生理ちゃんが来ることで苦痛な思いをする人、ホッと安堵する人、仕事優先で生理ちゃんの異変を無視する人も登場する。そして、生理ちゃんとお別れする人も。
原作の2話目には、ある男性と生理ちゃんのこんなシーンがある。
(男性)「女性は生理があるから大変だよね」
(生理ちゃん)「大変なのを、生理を理由にできないのが大変なんですよ」
(男性)「生理ちゃんは毎月迷惑がられてるのに来なきゃいけないの、ツラくないの?」
(生理ちゃん)「……ツラいですけど、いつか、全部ひっくるめて良かったと思ってもらえるんじゃないかと」
11月8日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷他にて全国順次公開
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昨日も、きょうも、これからも。ずっと付き合う「からだ」のことだから、みんなで悩みを分け合えたら、毎日がもっと楽しくなるかもしれない。
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10月1日から10月11日の国際ガールズ・デー(International Day of the Girl Child)まで、こちらのページで特集を実施します。
訂正
冒頭で「品田俊輔監督」と表記しておりましたが、正しくは「品田俊介監督」でした。お詫びして訂正致します。