関係者、ファンは語る「冨田真由さんはアイドルでなくシンガーソングライター」

    「アイドル」だけに起こる事件じゃない…

    冨田真由さんはいわゆる「アイドル」なのか

    21日に東京・小金井市で起こった刺傷事件で、被害者であるタレントの冨田真由さんが「アイドル」とメディアで報じられていることに違和感を覚えるとの声が相次いでいる。

    事件が起こった21日、読売新聞は冨田さんの肩書を「タレント」としたが、そのほかの新聞、テレビ局は「アイドル」「アイドル活動をしている」と報じた。

    23日からNHKは肩書を「女子大生」と変更したが、事件は「アイドル刺傷事件」として一般に浸透したこともあり、冨田さんは多くのメディアでアイドルとされている。

    だが冨田さんの最近の活動をみればアイドルではなくシンガーソングライターと呼ぶのが適切かもしれない。

    昨日はありがとうございました!!新曲が3曲できたから、聴いて欲しくって全部やった笑 アンコールもありがとう。ちゃんと届いていたらいいな、伝わっていたらいいなぁと思います。きっと、どこかでつながってる。みんなの声、ごちそうさまでしたっ

    冨田さんは2010年に芸能事務所ホリエージェンシーからデビュー。在籍期間中にはドラマと連動したアイドルグループ「シークレットガールズ」のメンバーとして活動した。2014年に事務所を離れたのちは女優としてドラマや舞台を中心に活動した。

    その後、冨田さんは預かりの形で有限会社マージに所属。事件の2週間前にはシンガー・ソングライターを目指すため、マージから離れ、フリーになっている

    関係者、ファンも冨田さんは「シンガーソングライター」と呼ぶ

    実際の冨田さんの活動はどうだったのか。冨田さんは昨年10月からアコースティックアーティストの集まるライブイベント「Aco Life 」に出演している。

    会場となった東京・虎ノ門のレストラン「イタリアン・カメリーノ」の責任者もBuzzFeedの取材に

    「ライブに登場するのはフォークシンガーであったりと歌手の方。冨田さんについても、自分で曲を作り、意思をもって活動していた。シンガーソングライターとして考えています」

    と答え、冨田さんがアイドルと呼ばれることについて「冨田さんの肩書はシンガーソングライター。せめて元アイドルだと思う」と話した。

    ファンも冨田さんをシンガーソングライターとして見ていた。

    2年前から始まった冨田さんのライブのほぼすべて訪れている知人のAさんはBuzzFeedの取材にこう答えた。

    「真由ちゃんが自分のことをアイドルだと言ったことは1度もありません。あっても女優、もしくはシンガーソングライターです。私は彼女の内面を出すようなしっかりとした気持ちのある歌を聴きに行ってました。周りのファンも純粋に歌を聴きに、真由ちゃんに会いに行っていたんだろうなと思います 」

    テレビは連日事件を「アイドルとファンの問題」と報道

    24日朝にはテレビ朝日、TBS、フジテレビ、日本テレビのワイドショーが事件について報じたが、冨田さんの扱いは「アイドル」だった。

    4局は冨田さんの事件とあわせてアイドルとアイドルファンの間で起こった過去のトラブル事例について報じ、テレビ朝日を除く3局では現役アイドルが自らのファンとの恐怖体験について語った。

    「アイドルとファンの問題」については、BuzzFeedでも現役アイドルの優月心菜さんの発言を取り上げた。

    テレビ各局も、アイドルの世界では近年は握手会やチェキ会などの"接触イベント"が増え、さらにTwitterなどSNSを通しファンと距離感が近くなったことが生んだ悲劇と報じた。

    だが冨田さんがシンガーソングライターであるとの指摘があったことで、アイドルファンや現役アイドルからは「偏向報道」「情報操作」ではないかと反発の声も目立つようになってきた。

    またAさんは、アイドルとシンガーソングライターの間に優劣があるわけではないが「どこも『アイドルが』とか『アイドルとの対比」を全面に出していて、本来の真由ちゃんの仕事が薄れてしまってるように思う」と述べ、メディアが冨田さんの活動が正確に伝えられていないこと自体を問題視した。

    冨田さんの事件はアイドルだから起こったわけではない

    今回の事件を「アイドル」が被害に遭ったということに留めておくのは危険だと語る人もいる。

    アイドルやアーティストに詳しいライターの吉田豪氏は23日、シンガーソングライターの方が危険な面があるとTwitter上で話した。

    以前、「女性シンガーソングライターのヲタはヤバい」って噂は聞いたことあったんですけど、その理由が「本人作の歌詞を自分のことだと思い込みやすいから」と聞いて、アイドルの場合は作詞家(つんく♂、秋元康ほか)がそういう妄想を抱きがちな人の壁になっててくれてる面もあるんだなと思いました。

    元レコード会社社員はBuzzFeedの取材に「女性アーティストであれば、最初につくのは男性ファンであるのが当たり前。まして冨田さんのようにこれからシンガーソングライターを目指す子ならばファンは男性でしょう」と語っており、アイドルだけが今回のような事件に巻き込まれるわけではないと強調した。

    冨田さんを襲った岩埼友宏容疑者といわれるTwitterアカウントが執拗に絡んでいたのは冨田さんや別のシンガーだった。話題に出るのも女優やミュージシャンであり、グループやソロアイドルに言及する部分はない。

    今回の事件は誰にでも起こり得る

    今回のような事件では性別も関係ない。モデル事務所のマネージャーは現在起こっているファンとのトラブルについて明かした。

    「所属する男性モデルがファンにプレゼントをもらったんですが、そのことをTwitterで発言しなかったことでそのファンが激怒。Twitter上で叩き始め、アカウントをブロックしたら『プレゼントを返してほしい』と連日会社に電話が来るようになりました。小金井の事件もあり、今は対策を考えています」

    事件後、アイドルとファンの関係をめぐる議論が数多く上がった。それ自体は重要な問題ではあるが、冨田さんの事件とは別の問題だ。

    今回の事件はアイドルだけでなく、ミュージシャンやモデル、コスプレイヤー、Youtuberなどネット上で発言するあらゆる有名人に起こり得る問題だ。

    「真由ちゃんは、ありのままを歌っていました」

    最後にAさんは冨田さんの歌についてこう語った。

    「真由ちゃんは女子大生でもありますので、日常のことだったり、夢とか未来のへの不安とか希望とか、はたまた恋愛とか彼女自身が考えていることがそのまま出ている。そんなありのままを出している歌を共感してくれる人は多いのではと思ってました」

    冨田さんが歌った日常が再び戻ることをAさんも関係者も願っている。

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