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【リオ五輪】信じてくれた井上監督のために 天才・高藤が見せた意地の銅

東京五輪でのリベンジも誓う

天才と呼ばれる男が攻めの柔道で意地を見せた。リオ五輪柔道男子60キロ級、高藤直寿が3位決定戦でオルカン・サファロフ(アゼルバイジャン)に優勢勝ちし、初の五輪銅メダルを獲得した。

小中高で全国制覇。2013年に20歳で世界柔道を制した天才は、今大会の日本の男子金メダル1号と期待されていた。だが、準々決勝でアミラン・パピナシビリ(ジョージア)にまさかの一本負けを喫する。

敗北の瞬間、呆然とした表情を浮かべた高藤。だが、自分がメダルを獲らなければ、今後の日本柔道勢に影響が出る。

「もう失うものなんて何もない。とりあえず僕の周りの人たちのことを思ってメダルを持って帰ろうと思った」

敗者復活戦の初戦を勝ち、迎えた銅メダルをかけた一戦。得意とする肩車を仕掛けるなど終始攻め続けた高藤に対し、サファロフは消極的姿勢で2度の指導。優勢勝ちで銅メダルを獲得した。

本当は師匠である、男子柔道代表の井上康生監督に恩返しがしたかった

2013年の世界選手権で優勝。しかし、翌年の世界選手権では、遅刻など度重なるルール違反により強化指定のランクを降格させられてしまう。この際、井上監督は責任を取り坊主頭に。それでも高藤を見捨てることなく、信じ続けた。

だからこそ、欲しかった金メダル。大会前に高藤は「死に物狂いで獲りにいく」と語っていたが、その夢は叶わなかった。

だが、「メダルを絶対獲れ」との師匠の言葉を受け、銅メダルを死守。愛弟子の勝利の瞬間、井上監督は小さくうなずいた。

畳を降りた後には涙を浮かべ「まだまだもっと強くならないといけない。4年後必ず戻って金にしたい。悔しい」と語った。そして、「これを今の自分の強さだと思って、胸を張って帰りたいです」と上を向く。

誓うのは、2020年東京五輪でのリベンジだ。楽しみにしていた1歳の長男・登喜寿(ときひさ)くんのリオ入りは、治安の悪さを理由に断念。4年後は愛息の目の前での金獲りを目指す。