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Red Kikuchi / BuzzFeed Japan

チーム作りに大切なことは? 小島秀夫×三浦大知が語るゲーム、そしてクリエイティブ

実は大のゲームファンである三浦大知さんが、憧れの人である小島秀夫さんとゲーム、そして創作について語り合いました。

3月7日にベストアルバム『BEST』をリリースした三浦大知。ステージ上での華麗に踊る姿からは想像できないが、実は生粋のゲームマニアなのを知っているだろうか?

そんな三浦が憧れの人物に挙げるのが、日本を代表するゲームクリエイターの小島秀夫氏だ。この度、2人の対談が実現。ゲームはもちろん、クリエイターの孤独や、エンターテインメントとは?など創作に携わるものなら必読の内容となった。

三浦:小島監督の作品との出会いは『メタルギアソリッド』(1998年)です。

ゲームが発売された頃『Folder』というグループに所属していて、小学校5年生くらいだったのですが、その時のレコーディングのご褒美として「どうしてもあのゲームが欲しい。そのために頑張って歌います」とスタッフさんにおねだりしたことをすごく覚えています。

オープニングのエレベーターを上るシーンも敵に見つかりまくりで、当時ひと苦労でした。

小島:当時は銃で人を倒していくっていうゲームしかない時代で、エレベーターのシーンで、ゲームシステムを学習してもらうために、スネークは何も武器を持ってないんですよ。

三浦: 敵に見つかっちゃいけない、敵と戦わないことが一番ランクが高いというシステム部分もそうですし、コントローラーを1Pから2P側に差し替えたら、読心力を使う超能力者のサイコ・マンティスに攻撃が当たるようになったりと画面の中でなくハードとソフトを行ったり来たりする。ゲームの奥深さを『メタルギアソリッド』で知りました。

『メタルギア』にはいろいろ思い出はありますけど、本当に、もうこんな酷なことをゲームでしたことないって思ったのは『メタルギアソリッド3』のラスト。ザ・ボスを自分の手で殺さなければいけないシーンです。

最終的に覚悟が決まらなくて、僕はボタンを押せず、テレビとにらめっこで…。ゲームでこんな重い気持ちになったことない。そこが感動というか、小島監督の作品は、ああいったところにやっぱり凄みを感じます。

小島:三浦さんは音楽をやられていますけど、ゲームにとっても音楽はすごく大事。映画もそうですけど、人の感情を揺るがすものって、8割は音楽。音響も含めて、どういう音を流して、心を揺さぶるか。

そこが決まれば、あとは絵を載せる感じです。絵やストーリーはありますが、効果的に音を使うことで生きてくる。

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三浦:いきなり無音になったり、敵に発見されたときの「パーン!」っていう音も、あれが流れた瞬間に状況が一変したのが一瞬で分かりますよね。監督は『メタルギア』シリーズのCMにも出られていましたが、ゲームの監督がCMに出演するというのは当時からあったんですか?

小島:いや、なかったです。CMにも出たくなかった(笑)。ゲームに出ているのは(アルフレッド・)ヒッチコックがいつもカメオ出演しているじゃないですか。子供の頃にあれをみていたので、お約束として、ああいうことをしないといけないなと。

出たがりと言われたりしますが、それはないです。サービスの一つ。今でいうスタン・リーと同じ。マーベル映画に彼が出ないとさみしいですよね。最新の『DEATH STRANDING』のトレーラー、見ましたか? あれにも出てます(笑)。

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新作『DEATH STRANDING』のトレーラー。

三浦:そうなんですか!? 全然気づかなかった。

小島:メガネ丸出しで出てるんです。最初、もっと丸出しだったんですが、あまりにも周りが笑うので、ちょっと抑えめにしてます。

出るのは好きじゃないけど、映画とかのエキストラをやるのは他の人の現場を見たいからなんです。どう撮っているかを知りたいじゃないですか。自分で出た方が俳優の扱いとかもわかるので。

この間、(ニコラス・ウィンディング・)レフン監督の作品に日本のヤクザ役で出たら、50、60回リテイクで、8時間かかりました(笑)。

三浦: 8時間はすごいですね(笑)。

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——『メタルギア』について、以前「僕の持ち物ではない」とおっしゃられているんですが、どういう意味だったんですか?

小島:簡単にいうと自分の子供みたいなものですよね。巣立った後は、僕のものじゃないんです。

そこからはユーザーが育ててくれるというか、ユーザーの持ち物になる。特にゲームは映画と違って、プレイヤーが受け取って、プレイヤーが好きなように遊ぶわけなんで、そこからはクリエイターは手出しできないので、一歩引いて見守っている感じです。

三浦:ほんと恐れ多いですけど、僕も楽曲を制作したり振り付けをしている身として、すごく、その感覚はわかります。

僕の場合はライブが、三浦大知の一つの出口、完成の場所になっているんですけど、その先に曲をどう楽しんでいただくかは、やっぱり聴いてくださる皆さんの自由だと思っています。

小島:ライブといえば『メタルギアソリッド』が出たのが20年前。今みたいに昔のハード、昔のゲームソフトを遊ぶ環境というのが想像出来なかったので、1回限りの、ライブに近いものだと思っていたんです。

それが20年経って、三浦さんのようにゲームを遊んだ人たちが僕にボールを投げ返してくるっていうのが嬉しい。「ああ、やっぱり作ってよかったな」と思います。

三浦:新作の『DEATH STRANDING』、トレーラーなど見させていただいているのですが、技術の進歩、CGでの人物描写の凄さに驚きました。

小島:キャプチャの精度が凄く上がってきていて、動きだけを見ても、その人だってわかります。

今のクオリティだと、動きや表情に、その人の人生みたいなものが出てくるんです。シワの一つや、口の開き方もそうですが、あの段階になると人工的にはなかなか作れない。

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『DEATH STRANDING』にはノーマン・リーダス、マッツ・ミケルセンといった俳優が出演しており、一見CGとは分からない。

三浦:監督は『DEATH STRANDING』ではキーワードに縄を挙げています。縄をどう解釈されているのですか。

小島:ゲームが生まれて50年以上が経ってますけど、未だに棒を使ったゲームばかりなんですよ。人間は嫌なものを遠ざけるための棒という道具を発明した。その次には縄を発明した。

縄は棒と逆で、好きなものを引き止めるためのもの。この2つがあって、今の僕らの現代社会があって、文明がある。

その割にゲームはパンチか銃のような棒という道具で戦っている。オンラインになって10年くらいですが、ネットという縄で繋がったのに、銃で俺が一番強いとか、あるいは格闘ゲームみたいに殴り合っている。

それが悪いとは言いませんけど、じゃあ僕は縄を使ってゲームを作ってみようかというので作っているのが『DEATH STRANDING』。当然、銃や棒も使いますけど、基本的にはゲームをやっていると、縄とはこういうもんなんだ、みたいなことがわかるようになっています。

三浦:ゲームを作っている時、「あれ、これは方向性が違う」となったことはあるんですか?

小島:そういう時は止めた方がいいですね。それは企画自体が間違いなので、勇気を持って止めた方がいい。

自分が思ったことが実現できても、みんなが「おもしろくない」って言うと、これはもうゲームとしてやっぱり無理なんですよ。新しいゲームはそこの判断が難しいんです。

うちのスタッフなんか、最初の1年はいつもボロカス言いますからね。「こんなゲームを誰もしません」と。存在しない新しいゲームは、わからないんですよ、形になるまで。『メタルギア』の時もそうだったし、『ボクらの太陽』とかもそうでした。全てにおいて、身内こそが反発します。「こんなん嫌です」って(笑)。

三浦:最初は小島さんの頭の中にしかないから、それを伝えていくのが難しいんでしょうね。

僕もライブを作っていて、頭の中のアイディアを最初に伝えると「へえ〜」みたいな感じです、最初は(笑)。

作っている中でちょっとずつ形になっていくと「ああ、こういうことをやりたかったのね」となりますね。最初、無音ダンスも、どういうふうに見えるのかわからないという声はありました。

小島:そこはもう押しまくるしかないですよね。説明してもやっぱりわからないです、できるまでは。形がない、前例がないものは。

三浦:書面にしても、わからないですもんね。

小島: 最終的には自分を信じるしかない。変なことは聞かない方がいいです。スタッフの意見は聞きますけど、そっちに流されると違うものになってしまうので。

だから、もうすごい孤独な作業ですよ。たった一人な感じです、一緒に仕事をしてても。

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三浦:スタッフ、チームを作る時に、大切にしていることってありますか?

小島:工場になったらダメですよね。今のハリウッドとかもそうですけど、欧米のゲーム会社って数百人から数千人のスタッフがいるんですよ。スタジオも世界中にあって、それぞれのパーツを作っているんですけど、そうすると、その部分しか携わらない。もう作業員でしかなくなる。

それはものづくりじゃなく効率のいい工場。言われた設計通りに作るだけなんですよ。クリエイティブじゃない。

設計図に描かれていないことを盛り込むのが本当のクリエイターの力量なんです。それをしなくなる現場は必要がないというか、もう外注でいいんです。

コジプロは外注も当然ありますけど、ほぼ内製で作ってます。自分たちで、少人数で大きなゲームを作る。インディーズでどこまで巨大なものを作れるのかっていう挑戦というか。ちょっと無謀は無謀で、でも、そこは成功しないといけないと思うんですけど。

——他ジャンルのクリエイターへの嫉妬とかってありますか?

小島:あります、ものすごくあります。僕が映画を見たり、本を読んだり、音楽を聴くのは、自分を助けてもらいたいとか、インプットをして、アウトプットをいっぱいするためってこともあるんですけど、本質はそこじゃないんです。

ものづくりってさっきも言いましたけど、孤独なんです。スタッフがいても。「大変だ、俺一人で辛いな」っていう時に、国籍も違うインドの監督、フランスの監督、ロシアの監督たちの作品を見て、よくぞこんなもん作りやがったなと、自分も勇気を得るわけです。

半分嫉妬しますけど、そのエネルギーが欲しいんで、あらゆる方向から手繰り寄せるというか。時間があれば、映画をみて、本を読んで、音楽を聴く。

ジャンルは違っても、やっぱりそれを作り出したのは人なんで。そういう人が世界中にいるっていうだけでも、まだまだ、頑張ろうと思います。(ギレルモ・)デル・トロとかと仲良くなるのはそういう共通点があるからです。彼らも、やっぱり物を作っている時は孤独なので。

三浦:僕も他ジャンルへの嫉妬はありますけど、本当に嫉妬するのは同じジャンルの人です。

もちろん、いろんな物を見て、すごいなっていうのはあるんですけど、やっぱりどこかで自分にしかできないことをやりたいという思いがあります。

歌って踊ってという手法をとっているアーティストはたくさんいますけど、その中でも自分にしかできないオリジナルをしっかり作っていきたい。

逆に自分がやっていることを凄く上のレベルでやっている人を見れば「あれ、これ自分がやる意味があるのかな」と思う時もあります。昔だとクリス・ブラウンがデビューした時は思いました。自分より若いし(笑)。

でもきっと、自分にしかできないものがあると信じて、ずっと続けています。

小島:クリエイターは誰としゃべっていても、常に違う脳が働いていますね。家族とご飯食べていても、旅行に行っても、歩いていてもそう。

何かでかいプロジェクトが終わっても次のことを考えてる。寝てても、夢の中で考えてますからね。病気ですよ。それで、周りから「アホか」って言われて、結局一人なんです(笑)。

三浦:モノ作りって、得てしてきっとそうですよね。僕もライブのことを考えていて「大知、いま大丈夫? どっか行ってない?」って言われたことはあります(笑)。

——お2人とも日本を拠点にエンターテイメントを発信されていますが、それについて良い面、逆に悪い面はありますか?

小島:あんまり日本は意識はしてないですね。以前はMSXとかPC98とか日本のハードがメインだったんですけど、『メタルギアソリッド』からは海外の方の市場が大きくなって、そこが僕にとって紀元前、紀元後みたいな違いになってるんですよ。

子供の頃から好きな本や映画、音楽は海外のものが多かったんです。もちろん日本のものも好きですけど。自分で作品を作るようになって、自分のテイストやセンスは、国や地域という単位じゃなく、グローバルに届くということがわかったんです。

僕は日本が好きなので、日本に軸足を置いて作品を作ってますけど、日本人のためにとか、アメリカ人のためにとか、そういう意識はないですね。

世界にいるファンに向けて、ゲームを作ってますし、チームのメンバーも別に日本人じゃなくてもいいわけなんですよ。宇宙人がいてもいいんです。募集しても来ませんけど(笑)。

三浦:僕も、もう今はどの世界でも音楽が聴けて、エンターテインメントが見れてという時代なので、日本に向けてというのはあまりないですね。

ただ、日本語でなんかできたらいいなと思ったりはします。細かい気持ちの描写だったり、そういうものを日本語は美しく表現できると思っているので。

日本語を用いた音楽。それは何か一つのダンスショーなのか、形はいろいろありますけど、三浦大知チームでしか作れない面白いものとして作れたらいいなと思います。

海外でラジオをひねったら、新曲が日本語のまま流れて「三浦大知が新曲出したんだ。日本の音楽って面白いよね」っていうのが普通にできるように。ものすごく理想ですけど。もし自分がそんな存在になれたら最高だなと思っています。

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三浦大知のライブ

——最後にお2人にとってエンターテインメントとはなんでしょうか。

三浦:気づきがあるものが、エンターテインメントかなと思ってます。音楽を聴いたり、ダンスを見た時に、知らなかった感情、知らなかった価値観、「この角度から見たら、物事ってこう見えるんだ」と思ってもらえたら、それは、すごく素敵だなって。

小島:基本は日常の嫌なことを忘れるとか、楽しくなるとか、それがエンターテインメント。それだけでも当然難しいけど、それプラス、ユーザーの生活に何かしら役に立つものっていうんじゃないと、僕はちょっと作りたくないんですよね。

その物語のキャラクターが言ったことで、しばらくぶりに自分の親や友人に電話しようとか、自分から行動してみようとか、ちょっと背中を押す。そういうものになるべきだと思ってます。

若い頃に、本当に尊敬できる先生、先輩に出会うことができる人は少ないと思うんです。僕もそうでしたから。でも、いろいろな本を読んだり、映画を観たり、音楽を聴いたりすると、それを作ったすごい人たちが、世界中にいることがわかるんです。

僕はその人たちから勇気をもらった。今もその人たちへの感謝があります。だから、僕は自分の作品を通じて恩返しをしたいし、若い人たちの背中を押してあげたいと思っているんです。

——本日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。


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