「ケンミンSHOW」番組続けられるか悩んだ東日本大震災

    転勤ドラマが人気の鍵

    10月で放送10周年を迎えたバラエティー番組「秘密のケンミンSHOW」(読売テレビ)。番組のプロデューサーを務める株式会社ハウフルスの清水紀枝さんをBuzzFeed Newsではインタビュー。今回はその後編だ。(前編はこちら)

    全国各地のユニークな食べ物だけではなく、その土地土地に住む人たちの姿も番組の魅力のひとつ。特に街頭インタビューは番組の生命線ともいえる。

    「すごくロケに行っています。5〜6日間はその県にいって、何百人と話を聞いています。取材対象の皆さんも年配の方だけにならないよう、女子高生に聞いたりと気をつけています」

    全国各地での取材となれば、当然方言のきつい地域も出てくる。ある東北地方の方言がわからず、ディレクターたちがうなずくだけのときもあったそうだ。

    「画面に出るテロップも、うちには北海道から九州まで地方出身のスタッフが多くいますので、その県の出身者や、近隣県出身のスタッフが翻訳。さらに方言指導の先生に確認してもらうこともあります。テロップには結構気を使います。この『つ』の位置が違うとか、細かく見てます」

    ケンミンSHOWのためにスケジュールを開けるゲストも

    登場する多彩なゲストも番組の魅力。ほかのバラエティー番組のひな壇に座る芸人やグラドルだけでなく、俳優の出演が多いのも狙いだ。

    「キャスティングは意識しています。私がドラマが好きなこともありますが、俳優さんが自分の県を背負って話す。その横に芸人さんがいることで起こる化学反応が面白いんです」

    白竜、藤岡弘、などケンミンSHOWが好きだからとスケジュールを開けてくれるゲストも多い。女優の浅野ゆう子、松下由樹なども自身の県を愛情たっぷりに語り、ドラマとは違う顔を見せる。

    みのもんたとともにMCを務める久本雅美は、地方公演で訪れた土地で自らリサーチし、清水さんに連絡をくれる事もあるという。出演者もみな自分の出身地、そして番組のことが好きなのだ。

    取り上げられることは少ない島根、鳥取だが...

    これまで多く取り上げた県は北海道、沖縄、福岡など。取り上げる県の上位はゲスト出演者や街頭インタビューで答える県民の県民愛が強いそうだ。

    一方、取りあげられることが少ないのは島根と鳥取。

    島根美人、出雲美人を番組で特集した時には、あまりに綺麗な人が多かったから仕込みではないかと疑問の声も上がったそうだ。

    「あれはガチです。ロケは実際6日間くらいかかった。京都や石川も取り上げましたが、島根県はあれだけの人口(推定人口68万人)であの確率だからすごい。芸能事務所の方は島根をチェックしたほうがいいと思います(笑)」

    清水さんによれば独特な文化、食べ物が多いのは、長野、群馬などいわゆる“海なし県”。

    「海がある県はいろんな情報が入ってきますけど、内陸県は外とあまり交わらないので、食文化、生活習慣が内に内にいき独特な気がします」

    番組の人気を支える「転勤ドラマ」

    番組の人気獲得に一役買ったのが、東京出身の主人公・東京一郎(水沢駿)が46道府県を転勤して訪れる番組内ドラマ「県の中心で愛を叫ぶ」だ。

    現在は「辞令は突然に…」として、数寄屋橋はるみ(黛英里佳)と夫婦として全国を回っているが「彼らの人気で知名度も上がり、2、3年目くらいで番組はいけるなと感じました。まさか10年も続くとは思いませんでした」と清水さん。

    転勤で訪れるご当地の熱もすごい。ドラマで取り上げられるとなると、放送1週間前から局を挙げて番宣する地方局もあるという。

    系列局の視聴率歴代1位は京一郎たちが山形県を訪れた2011年6月9日の回で、44.3%を記録。2位は長崎で42.0%で、以下、青森、島根・鳥取、山口と続く。(いずれも「ビデオリサーチ」調べ)。

    ベスト5のうち青森を除く4県はいずれも転勤ドラマの題材として登場した回だ。山形では2017年にも39.0%を記録している。

    「京一郎とはるみに子供ができたらいいんじゃないか、という声もいただくんですが、われわれはサザエさんだと考えていて、変わらずにやりたいと思ってます。だから役者さん2人には年齢不詳で、若いままでと言っているんですが、京一郎くんも10年たつので(笑)」

    2011年の東日本大震災の際には、番組を今後続けていけるのかという思いもよぎった。

    「被災した東北、特に宮城や岩手はすごくロケでお伺いした県なので、正直このまま番組をやっていけるのかなと思いました。でも、東北の方々からケンミンSHOWをみたいとすごく言ってくださったり、メールもたくさんいただいて。その時は本当に番組を続けていてよかったなと思いました」

    九州全体の特集や四国スペシャル。大阪でもキャラの濃い泉州エリアの特集。10周年を迎えたが、まだまだやりたい、伝えたい場所は全国各地にある。

    「うちには若いディレクターもいっぱいいます。10年たったから変えちゃいけないではなく、10年やったからこそ新しい見せ方をやりたい。この1年は10年放送したからこそできる企画をいろいろやっていきたい」

    BuzzFeed JapanNews