エイベックスがTikTokと国内レーベルでは初の包括契約 その狙いとは?

    ヒット曲を含む2万5000曲を解放

    エイベックスは10月19日、日本の音楽レーベルとして初となるショートムービーアプリTikTokとの包括的楽曲ライセンス提携を発表した。

    この契約により、浜崎あゆみ、AAAなどエイベックスが原盤権を保有する楽曲、約2万5000曲をTikTok上で自由に使用できることとなる。

    今回の契約は日本を含むアジア地域での締結となり、J-POPの人気が高い中華圏、韓国、インドネシアなどのアジア地域のユーザーも自由に楽曲を利用できる。

    国内では10月30日からローンチの予定。アジア圏でも10月末から順次対応予定だ。

    TikTokとの契約で狙う旧譜の掘り起こし

    中国発のTikTokは、音楽に合わせて口パクしたり、自撮りで踊って楽しむショートムービーアプリだ。

    日本でも10代を中心に人気となり、BuzzFeed JapanでもTikTokで使用された楽曲による新たなヒットの流れができていることを報じた。

    エイベックス・エンタテインメント執行役員の丹雅彦氏によれば、同社ではアジア担当者を通じて、TikTokの中国本土での影響力を2017年の段階で認識しており、その年の11月に欧米で人気だった類似サービス「Musical.ly」を買収したことで、さらに動向に注視していたという。

    直接の影響力を感じたのは2018年1月、エイベックスが原盤権を保有する2人組アーティスト・ラムジの「PLANET」が中国のTikTokにアップされたショートムービーを通してヒットしたことだった。

    ラムジ「PLANET」

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    「PLANET」は日本で2006年6月にリリースされた曲で、歌ったラムジは2013年に活動停止している。

    しかしTikTokをきっかけに人気となると、中国国内の音楽配信サービス「網易雲音楽」での月間再生回数が前月の50倍以上に跳ね上がり、J-POPとしては初めて、C-POPや洋楽を含めた総合ランキングのTOP5にランクインした。

    日本国内でも今年6月、倖田來未が2010年にカバーした「め組のひと」がTikTok上で人気となったことで、リバイバルヒットしたことは記憶に新しい。

    今回の契約締結の狙いの一つは、TikTokを通しての旧譜や隠れた名曲の掘り起こしだ。

    「TikTokでのショートムービーをきっかけに、旧譜や隠れた名曲などにフォーカスがあたり、アーティストや作家に注目され、当該曲のみならず他の楽曲へ興味がわき、楽曲の視聴に繋がることはとてもポジティブに捉えております」(丹氏)

    そのためには権利処理や一定のルール順守は必要だが、自由なショートムービーの投稿こそが大事であると認識している。

    「当社からのプロモーション活動などによってユーザーの皆さんが反応したわけではなく、ユーザーの皆さんが『この映像にはこの楽曲が合う』『この楽曲のこのパートの歌詞が今の自分の気分に合っている』など、楽曲をコミュニケーションツールとして自由な発想で使用することは、我々音楽事業者にとって可能性を拡げてくれると考えています」(丹氏)

    この動きを促す意味での、包括的楽曲ライセンス提携でもある。

    またTikTokのショートムービーで使用される楽曲は、ユーザー側が無断でアップしたものも多く、アプリ上でのヒットをなかなか音楽レーベルが把握できていない面もあった。

    こうしたデータが見えにくかった問題も今回の提携で解消されそうだ。

    アジア圏、特に中国での影響力を重要視

    TikTokとの契約のもう一つの理由は、アジア圏。特に中国圏への影響力だ。

    エイベックスでは中国を中心としたアジア市場を目指していくという経営戦略を掲げている。

    「当社のアジア戦略上も中国音楽市場は大変重要なマーケットであり、中国国内のユーザーにも当社所属のアーティストの認知を上げ、楽曲を知って頂くことは大変重要だと考えております」(丹氏)

    TikTokを通してアーティストや楽曲の認知を向上させるだけではなく、今後は現地でのライブやイベント出演、C-POPアーティストとのコラボレーションなど様々な方法で、中国のマーケットにアプローチしていくという。