
文化としても、ビジネスとしても日本に今や欠かせなくなったアニメ。昨年2018年には一体どのような動きがあったのか。
12月に最新映画「HELLO WORLD」(2019年秋公開予定)の制作が発表された伊藤智彦監督と共に2018年のアニメ業界を振り返る。
マッドハウス出身者が活躍した2018年
2018年4月13日 #ゼロの執行人 が公開され、 たくさんの方に愛を注いで頂いた本作は、歴代の #コナン映画 の記録を塗り替えました。 全てはコナンファミリーの皆様のおかげ! 本当にありがとうございました! 2019年の #紺青の拳 も応援よろしくお願い致します! 良いお年をお迎えください!
――18年ですが、映画「名探偵コナン ゼロの執行人」がシリーズ最高の興行収入91.8億円で全映画で2位となりました。
映画「ドラゴンボール超 ブロリー」もヒットしてますね。20年前に戻って「コナンの人気が凄いことになっていて、ドラゴンボールが売れてるんだ」と話したら、嘘つけとなるでしょうね。
興行収入3位も「映画ドラえもん のび太の宝島」(興行収入53.7億円)ですね。コナンの立川譲、ドラえもんの今井一暁は俺と同じマッドハウス出身。
北米の劇場日本アニメランキングにも入った「僕のヒーローアカデミア THE MOVIE」の長崎健司、シリーズものでも「進撃の巨人」総監督の荒木哲郎であったり、「宇宙よりも遠い場所」のいしづかあつこであったり、幅を利かせてますね(笑)
映画では細田守監督の「未来のミライ」がゴールデングローブ賞にノミネートされました。日本作品では初のノミネートです。
――「未来のミライ」は興行収入的には苦戦しました。
㊗️「#未来のミライ」ゴールデン・グローブ賞アニメ映画賞ノミネート🎊細田監督コメントです⬇️ この度、第76回ゴールデン・グローブ賞へのノミネートと聞き、ただただ驚いています。これをきっかけに、この小さな可愛らしい作品がより広く、深く、たくさんの方々に楽しんでもらえたら嬉しく思います
宣伝の方法が少し違っていたのではないかというのはありますね。万人が見て楽しいという映画ではなく、もう少しコンパクトな作品です。
ゴールデングローブ賞の先のアカデミー賞受賞もあるかもしれません。ライバルが「シュガーラッシュ:オンライン」や「インクレディブルファミリー」などですが、アカデミー賞は続編ものに厳しいと言われているので。
吹き替えにも変化があった年
ーー「若おかみは小学生!」もヒットしました。初週の客入りが振るわず、早々に東宝のメイン館からは外れましたが、その後口コミで話題となり、新宿バルト9も応援。一度終了した劇場でも再上映が行われました。
俺も観ましたが、非常に良かったです。一番良い点は尺が長くない。94分なんですけど、無駄に長くなくていい。
逆に今年のアニメではちょっと長すぎる作品もあったんですが(笑)、比較すると「若おかみ」は伝えることがシンプルでとても観やすいし、物語のポイントがわかりやすい。
賀正!再上映! 『若おかみは小学生!』 1/4(金)~6(日)12:30 1/7(月)~14(月祝)14:30 ※1/12(土)のみ14:50 1/16(水)~18(金)15:30 1/19(土)19:30 1/20(日)17:00 1/21(月)~25(金)19:00 1/26(土)~2/1(金)土日12:00 平日19:00 ※火曜定休 ☆リピーター割あり!
原作へのリスペクトでああいう子供向けアニメの絵柄になったと思うんですが、エンディングで高坂希太郎監督が描いたイメージボードのキャラクターの絵柄がちょっとジブリ調で、目が小さくて、こっちでも観たかったなと思いました。
――アニメからは離れますが、映画ではクイーンを描いた「ボヘミアン・ラプソディ」がヒットしました。
『#ボヘミアン・ラプソディ』大ヒット御礼!!年末年始に東京メトロ9路線に、全28種類、約1000枚の中づり広告が登場!! 2018年12月31日~2019年1月6日 銀座線、丸ノ内線、日比谷線、東西線、千代田線、有楽町線、半蔵門線、南北線、副都心線(全て東京メトロ) https://t.co/tdmbKSzXbQ
見ましたが、やはり歌の力が凄い。ここ数年ヒットしている映画のトレンドは”歌もの”ですね。
「ラ・ラ・ランド」「グレイテスト・ショーマン」、「君の名は」もそうですね。劇場まで来る理由に「大音量でこの歌を叩き込んでくれ!」というものがあるんだなと感じます。
テレビで聞けない音が聞けるから「ガールズ&パンツァー 劇場版」(15年公開)もヒットした。映画にするときは爆音上映など特殊な上映形態をとることで何千万円も稼げますからね。ガルパンは、音響チームの力でいくら稼いだんだという話もありますし。
「ソードアート・オンライン」でもお世話になった岩波美和さんが音響監督を務めた映画「BLAME!」(17年公開)も劇中に出てくる重力子放射線射出装置の音を聞くために、Dolby Atmosで上映している劇場に行くファンもいたみたいです。
――実写の吹き替えでも変化を感じられたとか。
/ #ファンタビ 旋風が止まらない😆 🎊怒涛の動員320万人&45億円突破🎉 \ 吹替版も大ヒット‼️ #ニュート の声を務める #宮野真守 さんからもお祝いコメントが届きました😁 さらに、監督のデイビッド・イェーツから、日本のファンだけに向けた感謝のメッセージが到着❣️ https://t.co/AXcOX99q2Q
吹き替えにタレントさんではなく本職の声優がフィーチャーされることが多くなって来ました。
「ファンタスティック・ビースト」では宮野真守さん(ニュート役)をはじめ、安定感のある人たちがキャストを務めました。映画そのものや、出演する俳優に知名度があれば今後こういった傾向は増えていくのではと思っています。
個人的に「バンブルビー」に悠木碧さんを是非とも使って上げてほしい。
新作制作で感じる2Dアニメと3Dアニメの違い
――伊藤監督のオリジナル劇場アニメーション『HELLO WORLD』が19年秋に公開されることも昨年末に発表されました。このタイトルからだと、主題歌はもしや…。
伊藤智彦監督(『ソードアート・オンライン』シリーズ) オリジナル劇場アニメ作品 『HELLO WORLD』 2019年秋、全国公開決定 https://t.co/PP8XSEEqme 脚本:野﨑まど(『正解するカド』) キャラクターデザイン:堀口悠紀子(『けいおん!』) アニメーション制作:グラフィニカ(『楽園追放』)
タイトルは『HELLO WORLD』ですが、BUMP OF CHICKENの歌がかかるわけではないです(笑)。『!』が付いてませんので。
――3Dパートはグラフィニカが手がけます。以前からCGに興味を持っていましたが、2Dアニメとの違いなどはありますか。
絵コンテを全パート先に上げなくてはいけない。……というのは当たり前として、絵コンテが上がってからトライ&エラーが長くできるのは良いですね。
今回はプレスコ(※絵に声優が合わせるアフレコではなく、先に録った声や音に合わせて絵を描く手法)にしたので、完全に完成した絵は見えないけれど大体の流れを把握しやすく、偉い人も意見を言いやすかったと思います。
――偉い人が意見を言いやすいというのは、良い面なんですか?
「ここ、ちょっと物足りないんだけど」とか懸念ポイントを後から言われるよりは全然いいです。
収録自体もプレスコだと芝居だけの指導だけで、口パクに合わせなくて済むので短時間で終わるので楽でした。
――CGは工程管理が作画よりもしっかりしている印象ですが、監督の思い描く完成の絵にはCGだとより近づきやすいのでしょうか。
そうですね。ただ3Dの場合、当初のプラン通りに工程を進めていこうとするんですけど、途中で「やっぱりここはこうしよう」というと、みんな戸惑うんです。
当たり前っちゃ当たり前なんだけど、作っていく中で見えてくるものも沢山あるので。自分はその中で気になった違和感を限りなくゼロにしたい。
基本的に3Dの人たちはコンテや設定が決まったものはそこから動かすなと言われるみたいなんですけど、俺は自分のコンテよりも良くなるのであれば、動かしてもらって構わない。
作画アニメ出身だとそうなるんですよ。アクションシーンで自分が描いたコンテと違っても、かっこ良くて演出的要件を満たしていれば異なるアイディアを出していい。
3Dの人は真面目な人が多く、コンテを完璧にやる一方、下からのアイディアが少ない。もう少し暴れん坊がいても良い気はします。
――CGでいうとVTuberが18年は人気でした。一方でNHKのノーベル賞の特設サイトにキズナアイが起用されたことを巡って物議も起きました。中にはキズナアイの格好が性的だという意見もあったのですが、体のフォルムが強調される格好はCGから見るとエロ目的だけではないそうですね。
そして #キズナアイ ちゃんからメッセージいただきました😋 #KizunaAI @aichan_nel
CGで揺れたり、たわんだりするパーツの処理は面倒臭いんです。袖があるだけで、腕を貫通してしまったりもするので。
なので、本当はZOZOスーツみたいなピタッとした衣装が一番楽で、だからぴったりした服が多い面はあると思います。
最初の「インクレディブルファミリー」も表情はアイマスクで見せず、ピタッとしたスーツを着ているのはそうしたCGの面倒な部分を省略しようとした結果のはずです。
そうした技術的な部分を踏まえた上で、やや扇情的なデザインにしているとは思いますが……(笑)
2019年への期待
――表現の自由についての議論が多かったのも18年の特徴です。先日「サザエさん」初期放送分がAmazonプライムビデオで配信されましたが、地上波では今では厳しい表現も普通に配信していました。Netflixなどでアニメを作る理由には、そうした表現の自由の部分も大きいんでしょうか。
「DEVILMAN crybaby」Netflixでの全世界同時配信スタートからはやいもので1周年です✨✨ 世界中のたくさんの方々にご覧いただき、ブルーレイや映画館などでもご覧いただき、誠にありがとうございます😃✨ これからもぜひ、何度でもご覧ください😈✨✨ #DEVILMANcrybaby #DEVILMAN #デビルマン
資金面はもちろんNetflixでやるのは、その点があると思います。湯浅政明監督の「DEVILMAN crybaby」がまさにそうですし。
俺は80年代のOVAブーム再びという感じはしていますね。ここでも時代が巻き戻った。ただ違うのは海外資本がお金を出している。
海外資本でいえば、チャイナマネーがあてにできなくなっていると聞きます。中国は18年にソーシャルゲームやオンラインゲームの規制をしたんですが、アニメも全話を納品して審査を受けることになり、日本と同時進行で中国でも放送することが難しくなったとか。
1月期のアニメでも中国で配信予定だったのに、この規制でダメになった作品があると聞いています。
――18年12月に発表された「アニメ産業レポート2018」によれば17年のアニメ市場規模が2兆円を突破し、5年連続で拡大しているとあります。
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市場が大きくなっているという実感はないのですが、18年も独立などでアニメのプロデュース会社が増えました。ただ、そんなに現場を預かる人間が増えているわけではないので、どういう風に回すつもりなんだろうとは思います(笑)
せっかくアニメの本数を増やすのであれば「この原作を取ってきました。やりましょう」ではなくて、オリジナルのアニメ企画を作る会社がほしいですね。そういうコンテンツを生み出さないで、業界ゴロみたいな人が増えても仕方がない。
原作枯渇と言われて、だからこそ昔の作品のリバイバルやリメイクが増えているんですが、原作ファンのそんなにいない作品(失礼)をアニメ化するくらいならオリジナルの方がいいのではと思いますね。
リスキーな面はあると思いますが、トライをしないとアニメ業界自体が萎んでいってしまいます。なので、「ゾンビランド・サガ」のように体力のあるスポンサーがいるうちにそういった開発をしなくては、と思います。
自分もまだ全然表に出していませんが、件のスクリプトルームを使ってもう一つオリジナル企画を仕込み中です。こっちはオリンピックが始まる頃には何がしか発表できるといいなあ。