昨年5月25日、アメリカ北部のミネソタ州で、警官に首を押さえつけられたアフリカ系アメリカ人の男性が死亡する事件が起きた。
男性は亡くなる寸前、「息ができない」と繰り返し訴えたが、警官に聞き入れられることはなく、そのまま息を引き取った。
亡くなったジョージ・フロイドさん(46)。


昨年5月25日の事件当日、非番で散歩をしていたハンセンさんは、「男の人が警官に殺されそう」という女性の叫び声が聞こえた。
手錠をかけられた男性が身動きができない状態で横たわっているのがみえた、とハンセンさんは証言した。
その男性(フロイドさん)の背中の上に、警官たちが全体重でのしかかっていたという。
「周囲の人たちがパニックになっている光景を心配し、現場に近づいた」とハンセンさんは話す。

事件の様子を映した動画で、ハンセンさんが「フロイドさんの脈を確認したい」と、繰り返し大きな声で警官に頼んでいるのが確認できる。
また、ハンセンさんは「息苦しそうにしている人の適切な処置が、警官によって行われていないのを目撃した」と緊急通報している。
消防士の制服で出廷したハンセンさん。
自身に医療行為の知識があるにもかかわらず、目の前にいるフロイドさんを助けることができなかったことを後悔していると、証言中に涙をみせた。
「私には、適切な医療行為を行うことができました。それこそ、私がすべきだったことだ思います」とハンセンさんは語った。

彼女によると、フロイドさんの顔は「地面に、必要以上に押し付けられていて、パンパンに腫れていた」という。
成人男性が全体重で、彼の首を押さえていたからではないかと、証言した。
ハンセンさんは、フロイドさんが「直ちに医療行為を必要としている状態である」と気づいたため、すぐに自分が消防士であることを警官に伝えた。
また、何度も訴えかけるように「適切な処置を行いたい」と警官に申し出たが、その願いが叶うことはなかった。
それどころか警官からは、「あなたが本物のミネアポリスの消防士だったら、現場に関わらないくらいの分別くらいあるだろう」という返事が返ってきたという。

現場への介入を警官から許可されていれば、フロイドさんの気道に異物がないかを調べ、脈を確認し、そしてさらなる医療行為のために助けを求めたはずだと、ハンセンさんは話す。
「警官に拒まれ、苛立ちを感じましたか?」と検察官に尋ねられ、ハンセンさんは「はい」と答え、涙を流した。
「フロイドさんを助けたかったです」
ハンセンさんは現場の様子を、動画などの記録に残す大切さについても言及した。

フロイドさんが救急車で搬送されたあとも、現場には警官がいたため、他の目撃者、特に有色人種と黒人男性の安全を心配し現場に留まり続けたと、ハンセンさんは話す。
チョーヴィン被告側のエリック・ネルソン弁護士は、「怒った部外者」が現場に介入することは、警察にとってさらなる脅威になる、と説明。
現場にいたハンセンさんの精神状況を尋ねた。
「人が殺されるところを、あなたが見たことがあるかどうかは知りません。しかし、本当に気が動揺する出来事でした」と彼女は答えた。

彼女は、フロイドさんが搬送された後、不信感と無力感を感じて現場にただ立ち尽くしていたそうだ。
なぜそう感じたのか、という質問にハンセンさんはこう答えた。
「自分の目の前に、殺されそうな男性がいて、そして自分の持っている医療の知識を最大限に発揮できたにもかかわらず、その権利を拒否されたからです」
この記事は英語から翻訳・編集しました。