インスタグラムは、米国でも「いいね」数を非表示にする試験を開始した。インフルエンサーたちはこの変化を気にしていないのだが、影響は無視できない、という内容の報道もある。

インスタグラムは2018年夏、投稿へ寄せられた「いいね」の数を非表示にする取り組みを、オーストラリアや日本など7カ国で試験すると発表。そして、同社の最高経営責任者(CEO)を務めるアダム・モッセーリ氏が2019年11月第2週になり、米国の番が回ってきた、とツイートした。
そのツイートによると、インスタグラムは「試験運用の対象を、米国の一部ユーザーに拡大」し始めたという。これを受けて、表示がどう変わったかを示すスクリーンショットも投稿された。
It's here! Instagram is making a huge change by now hiding likes in the US. Beginning this week, likes will now be hidden for users in the United States... https://t.co/zDqBHxw9Z3
「これだよ。アメリカのInstagramでいいね数が隠されて、表示が随分と変わった。今週から、アメリカのInstagramユーザーはいいねが見られなくなる…… 」
この変更の目的について、インスタグラム側は「投稿のいいね数でなく、シェアする写真やビデオそのものに注目してもらいたい」から、と繰り返し説明している。
ここで一番大切なのは、自分の投稿に付いた「いいね」の数は見ることができる、という点だ。BuzzFeed Newsがインスタグラムに確認したところ、各投稿のいいね数や、誰がいいねしたかを確認できないのは、投稿者のフォロワーに限られる、とのことだった。
CEOのモッセーリさんが米国での試験開始を表明すると、一部メディアはインフルエンサー・マーケティング市場に影を落とす可能性があると報じた。
ただし、BuzzFeed Newsがさまざまなフォロワー数のインフルエンサーに取材したところ、この変更を歓迎する声が多い。
それどころか、賢明な変更というだけでなく、ビジネスチャンスから得られる恩恵が増えるかもしれない、と考えるインフルエンサーがほとんどだった。
12万7000人のフォロワーを抱える、ライフスタイル系ブロガー兼ブログメディア「The Stripe」運営者のグレイス・アットウッドは、「全般的にエンゲージメントは低下するでしょうが、全員でなく、一部だけだと思います」と語る。
「そのため、企業などではほかの指標、(たとえば)保存やコメント、シェアといった行動の数を重視し始めています」
さらに、アットウッドは「いいね数が見られなくなって心配するどころか、いいねに縛られず、好きな写真を投稿できるようになることが楽しみです」と付け加えた。
Cupcakes and Cashmereの運営者で、フォロワーが50万人以上いるライフスタイル系ブロガーのエミリー・シューマンも同様の考えを示し、自身のアカウントは「いいね非表示化の影響」に足を引っ張られていない、と述べた。
いいね数非表示の試験に関する最初のレポートが出された後、BuzzFeed Newsは2019年7月にシューマンさんから次のような回答を得た。
「『いいね』には、その対象を気に入っている、というだけにとどまらない大きな意味があると個人的にとらえています。いいね数は、Instagramに投稿された特定の写真による成果をはっきり示しますが、それだけでは不十分です」
「つまり、いいね数は、投稿の効果を分析するために使う指標の1つなのです。ほかにも、保存数、インプレッション数、リーチ数といった指標はありますが、いずれも現時点では公開されていません」
旅行家族として知られ、フォロワー数200万人弱のアカウント(@TheBucketListFamily)を運営している一家の母親、ジェシカ・ジーも、いいね数よりもエンゲージメントが重要であると強調した。
「契約してくれる企業やスポンサーは、フォロワーが多いから、というだけの理由で私たちを選んでいません。フォロワーが私たちの投稿を気に入っていて、実際の行動を起こしてくれるコミュニティになっているからです。だから、おおむね変更に賛成です!」
別のインフルエンサー、キャロライン・キャロウェイは、ユーザーの精神衛生に良い影響を及ぼすことを理由に変更を支持した。
「ソーシャルメディアに対して、精神衛生とシェアの信頼性を優先させる変更が施されるなら、どのようなものでも大賛成です。インスタグラムの使い方が、ユーザー全員にとって、新しい魅力的なものになるのではないでしょうか」
フォロワー数42万人の個人Instagramアカウントを持つライフスタイル系ブロガーのエルシー・ラーソンは、全体としてインスタグラムの変更がインフルエンサーの精神衛生を改善すれば良いと考えている。
「インフルエンサーが例外なく守るべきものは、何よりもまずインスタグラム上で精神を健康に保つことだと思います。何年ものあいだ、いいねにあまり影響されないよう注意してきました。そのため、いいねの数を二度と目にしなくて済むのはありがたいです」と、2019年初めごろBuzzFeed Newsに話した。
ドイツを拠点とするユーチューバーで、Instagramのフォロワーが24万3000人いるキッキ・ヤン・チャンも同意見だった。
チャンは、「いいねを隠すことで、何かをシェアしなければならないというプレッシャーからユーザーが解放され、インスタグラムが精神衛生を改善するのに適した場所になる」ことを願っている。
「かつて、いいねの数は今よりも重要な指標だったと思います。いいねの数が多いと、良い写真だと受け止められたからです。ところが、あるとき気付きました。コンテンツの質を語るのに、いいねの多い少ないは関係ありません」
ほかの人の意見も聞いてみよう。いいね非表示が以前から試験されていたオーストラリアのインフルエンサーたちは、BuzzFeed Newsに、変更で良い影響しか受けていないと述べた。
フォロワー数1万1600人のサラ・ジェーン・ウォードルは、「私個人の経験では、獲得できる『いいね数』を気にすることなく、投稿したものを信頼できるようになりました。いいねが付けられたかどうかを、以前ほどチェックしないからです」と語った。
一方で、変更の影響に懸念を示すインフルエンサーも存在する。
デザイナーでインフルエンサーのケイティ・カイムは、BuzzFeed Newsに「仕事を進める上で、いいね数などのデータを対応方法の判断に使っているため、いいねが確認できないままだと困ります」と話した。
「いいねは購買に関係するので、ほかの人の付けたいいねに行動を左右される人は、大きな影響を受けるのではないでしょうか。これは、需要と供給という、心理面およびビジネス面で基本中の基本でしょう」
心配する意見はあるものの、ほとんどの場面でインフルエンサーは冷静に対処するだろう。自身のブランドが受けるで影響については、楽観している人が多かった。
フォロワー数3万2000人のライフスタイル系インフルエンサー、エミリー・アンは「私が投稿するものは、すべて私自身そのものです。私のフォロワーは、いいねがいくつかなんて見てもいないでしょう」と話す。
「みんな、『いいね』のような取るに足りないものに取りつかれていて、インスタグラム本来の目的からかけ離れています。元々は、大好きなものをシェアする場所だったのです」
この記事は英語から翻訳・編集しました。翻訳:佐藤信彦 / 編集:BuzzFeed Japan