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デザインをパクられた? 世界展開の雑貨店 vs 日本のアートユニット

中国マーケットから流出か。

世界中に展開する大手雑貨店と日本のアートユニットの間で作品をめぐり、問題が起きている。

問題になっているのは「フライング タイガー コペンハーゲン(以下、フライングタイガー)」が販売しているiPhone用充電器だ。

フライングタイガーは、デンマークのゼブラ社が運営する雑貨店。1995年にコペンハーゲンで創業して以来、現在30カ国に計700以上もの店舗を展開している。

日本には、2012年にアジア第1号店ともなる心斎橋店をオープン。現在、国内には22店舗を構える。そんなフライングタイガーに“パクリ疑惑”が浮上した。

「ぎゃああああ!パクられたあああ!」

事の発端は3月30日、Twitterユーザーが投稿した「明和電機の魚コードパクられとるやん」というツイート。

明和電機とは、アートな電気製品などを製造するアーティストユニット。先の投稿を同社の土佐信道社長が発見。土佐さんが「ぎゃああああ!パクられたあああ!」と投稿し、問題が明るみになった。

ぎゃああああ!パクられたあああ!しかもアンドロイド用じゃなくてiPhone用。うちのより性能いいじゃないか・・・ https://t.co/4GJE71JfKd

パクられた可能性のある商品は「魚(な)コード」。魚をモチーフにした充電器で同社の看板製品のひとつだ。

初期モデルを1995年に発表して以降、ストラップやUSBケーブルに展開させた。今回パクられた可能性のあるものは、その中のUSBケーブルである。

明和電機がAndroid端末用なのに対し、フライングタイガーはiPhone用。

以下、白が明和電機のもので赤がフライングタイガーのものである。見比べると酷似しているのがわかる。

BuzzFeed Newsは土佐さんに詳しい話を聞くため、同社を訪ねた。

投稿を見つけた土佐さんは、その2時間後、フライングタイガー渋谷店にいた。自分の目でパクリ疑惑の商品が店頭にあることを確認。在庫を含めた約30個を買い占めた。

そのあと都内3店舗にも向かい、その日のうちに計100個を買い占めた。

「会社に戻ってきて検証をしました。寸分違わず同じ形でしたね」と土佐さん。

「最初は型から流出したと思ったんです。工場が流したのか、なにかしらの問題で流出したのかと。しかし、じっくり見てみると中の構造などが微妙に違っている。おそらくオリジナルをスキャンして、それを元に作ったのだと思われます」

土佐さんは同日、フライングタイガーの運営会社であるゼブラジャパンに問い合わせた。その段階では「事実関係を調査中」との回答だった。

ゼブラ社は翌31日に該当商品を回収。コピーとは認めないものの「風評被害を考慮しての回収」とのことだった。なお、回収は国内のみとのこと。

権利関係などを問い詰めても本社の判断次第になってしまうため時間がかかる。そこで土佐さんは本社に報告書を提出した。4月5日に回答が来たが同じく「現在、調査中」とだけの返答だった。

ここまでが現在までの経緯である。

「魚コードをパクられるのはこれで2回目なんですよ。1回目は中国で携帯ストラップバージョンをパクられて。そのときは違法マーケットですし『やられちゃったね』という感じで。しかも、もとを辿るとマフィアが関係してくるらしく、根源を断つのは難しいなと」

「中国からライセンスを無視して、ありとあらゆるものがミックスされて得体の知れないものが出てくるのは、ある意味“おもしろさ”ではあるんですよ」

「けれど今回は国際的に展開する企業ですからね。いいネタ来たって感じです。この状況はおもしろすぎるって」

しかし、もちろん“おもしろくない”面もある。

「フライングタイガーの企業理念には『商品のデザインは社内でしており、アーティストとのコラボレーションも行います。アートに出会える機会を提供したい』とあるんです。自らのセンスを売る企業と宣言しているのに、人のセンスを盗んで『私たちのセンスです』と言っているのはやはりムカつきますね」

フライングタイガーは、なぜコピー疑いの商品を作ってしまったのか? 土佐さんはこう予想する。

「日本で買い付けたのかネットで購入したものが中国マーケットに流れたのかと。そこでできあがったのが、フライングタイガーに流れ着いた。本来ならライセンスはチェックしているはずですが、今回は見落としまったのではないかと」

土佐さんは買い占めたフライングタイガーのケーブルを明和電機のオリジナルパッケージに詰め替え、土佐さんのサイン入りで販売するという“アート”で切り返した。「おかげさまで完売しました」とのこと。

また、問題の製品をプリントしたTシャツも製作。「これを着てフライングタイガーに乗り込んだらおもしろいですよね」と土佐さん。

「芸術のマスプロ」との関係性

今回の件は明和電機が提唱する「マスプロ芸術」と深く関わっていると土佐さん。

明和電機は「芸術資源」そのものは売らず、それを二次展開して資金に変えている。そのひとつが大量生産の商品をつくる「マスプロダクト」。もうひとつが人に見せて興業収入をえる「マスプロモーション」だ。それを総称して「マスプロ芸術」と呼ぶ。

「例えば絵画は一点しか存在しません。故にそれが希少性を持って何億という値段になる。また、それを権威づけするために美術館というものがあります」

「私は実家が電気屋だったこともあり、エンジニア的な技術がありました。そこで自分のデザインを図面化し、量産化することを目指したのです。図面があれば、僕が死んでも商品は作れますし、世界中に展開できます」

魚コードは、世界中にあるフライングタイガーで展開され「マスプロダクト」になった。“パクり”という不本意なかたちで。

パクられないためにはどうすればいいのか。オマージュ、パロディー、パクリの違い

土佐さん自身もだが、土佐さんの友人も“パクり被害”に遭っている。

そもそもデザインをパクられないためにはどうすればいいのか。

「真似できない高度な技術を用いたものを作るか、ディズニーや任天堂のようにガチガチにライセンスを守るようにするかしかないですね。それができない個人のデザイナーはすぐにパクられます」

クラウドファンディング「キックスターター」にデザイン案をあげたら、資金が集まる前に製品化されるという事例も少なくないという。

スイスの高級腕時計「フランク・ミュラー」を連想させる「フランク三浦」の名前で時計を販売する大阪市の会社が、商標を無効とした特許庁の審決の取り消しを求めた訴訟で、最高裁第1小法廷は3月2日付の決定で、ミュラー側の上告を退けた。

デザインにおけるオマージュ、パロディー、パクリの違いを土佐さんはどのように考えているのか。

「笑えるかどうかが需要な点だと思います。フランク三浦の場合だと『フランク・ミュラーが6000円くらいで買える』という笑いの要素があり、一種のギャグとして受け入れられたと思います」

「あとは元ネタにリスペクトがあるかどうかも大切。オマジュー作、パロディ作を作るのではれば元ネタに対し、礼儀がないといけません。人のデザインを盗んで『私たちが作りました』とするのはパクりでしかありません」


Takumi Harimayaに連絡する メールアドレス:Takumi.Harimaya@buzzfeed.com.

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