映画「聲の形」、聴覚障がい者はなにを思う "元筆談ホステス"と観る

    いじめ、字幕問題など。

    ※本記事は、作品のネタバレを含みます。これから作品を観る方は、ご注意ください。

    現在、公開中の映画「聲の形」

    (C)大今良時・講談社/映画聲の形製作委員会

    同作は、大今良時さん作のマンガを、京都アニメーションが映画化したもの。

    小学生のころ、ガキ大将だった石田将也のクラスに、聴覚障害を持つ西宮硝子が転校してきます。

    障害をおもしろがった将也は、硝子をいじめるように。クラスメイトはいじめの事実をわかっていたものの、誰も止めず、そればかりか加担する子もいました。

    (C)大今良時・講談社/映画聲の形製作委員会

    しかし、いじめがエスカレートした結果、学校や親に発覚。今度は、将也がいじめの対象になります。

    その後、硝子は転校。以来、将也は友だちができず、高校に進学したある日、硝子に再会。彼女との交流を通して、成長していくさまを描きます。

    聴覚障がい者は、どう観る?

    Takumi Harimaya / BuzzFeed

    聴覚障がい者は、「聲の形」を観て、なにを思うのか。BuzzFeed Newsは、東京都北区区議会議員の斉藤りえさんと一緒に鑑賞しました。

    斉藤さんは、1984年青森県生まれ。現在、32歳で一児の母です。1歳のとき、髄膜炎により聴力を完全に失いました。

    ハンディキャップを持ちながらも、「人と関わることが好き」という信念から、さまざまな接客業に挑戦。銀座の高級クラブ勤務時には、筆談を生かした接客を行います。

    「筆談ホステス」は話題になり、書籍化。北川景子さん主演でドラマ化もされました。

    Takumi Harimaya / BuzzFeed

    ▲斉藤さんと、6歳の娘さんと鑑賞。都内の映画館にて

    同作は、聴覚障害をテーマにしていることから、一部劇場で日本語字幕付き上映が行われています。鑑賞後、感想を聞きました。

    「教育者にも、観てもらいたい作品」

    (C)大今良時・講談社/映画聲の形製作委員会

    まず、「登場人物の背中が印象に残る作品でした」と斉藤さん。

    「聴覚障がい者の気持ち、状況を理解するだけでなく、いじめをなくす点においても教育者の方、子どもたちにも見てもらいたい作品だと、強く思いました」

    「人の顔に『×』が付いていたり、騒音が全部自分の陰口に聞こえたり、トイレに駆け込んだりする姿は、いじめに遭った子どもたちが、どういう状況になるのか。一つの例として私も教えられました」

    (C)大今良時・講談社/映画聲の形製作委員会

    ▲将也の視点から、周囲の人物に『×』がつく

    「小学生の将也は、まだ未熟ゆえに、硝子とどう接したら良いか分からなかったのでしょう。コンタクトを取りたくて、純粋で無垢ながら、あのような形(いじめ)になってしまったのだと思います」

    「いじめが起こっていると気がついていながらも、見て見ぬふりをする教師が自分の立場を守るために、生徒の前で将也を怒鳴る場面には怒りの感情が湧きました。私には、とても信じられない光景でした。真の教育者とは何か、誰しもが考えるきっかけとなればいいなと感じました」

    同じような体験はあったか。

    (C)大今良時・講談社/映画聲の形製作委員会

    斉藤さん自身は、作品にあるような体験をしたことはあるのでしょうか。

    「私の小学校時代は、面倒見の良い友人が多く、いじめというものは、本当にありませんでした」

    「他校の生徒から、私の発言を聞いて不思議がられたり、『宇宙人』など言われたりすることはありましたが、このような残酷ないじめは、まったくありませんでした」

    「この映画を観たあと、あの時の周りの人々の優しさと、温かさにあらためて感謝しないといけないと思いました」

    壊れた仲は、修復しないといけないのか?

    (C)大今良時・講談社/映画聲の形製作委員会

    映画は、かつていじめていた子が、いじめられていた子に再会。当時の人々も巻き込み、仲を修復しようと試みますが、修復しようとする関係は悪化していきます。

    そこまでして、仲は戻さないといけないのか。斉藤さんは、こう話します。

    「大人になってから、子どのころの未熟だった気持ちを、ちゃんと説明する意味はあると思います。 『ごめんね』ということで、昔の傷が癒えることもありますし、同じ過ちを犯さないためにも、昔の自分の過ちと向き合うことは大切です」

    邦画の字幕上映について

    (C)大今良時・講談社/映画聲の形製作委員会

    「私も『聲の形』は観たいと思っており、字幕上映をしてくれたことには、とても感謝しています。欲を言うなら、字幕の漢字にふりがなをつけてもらえたら、もっとうれしかったです」

    「聴覚障がい者で、ずっと手話を使っている人だと、漢字が読めないことが多いのです。聴覚障がい者の子どもたちも、観る機会があると思うので、より親切になるかと思います」

    現在、大抵の邦画は字幕上映を行っていません。斉藤さんも、過去に観たい作品があっても、諦めることがありました。

    「すべては無理だと思いますが、聴覚障害がテーマの作品でなくても、字幕付きなどの設備、環境が少しずつでも広まればいいなと思います」


    Contact Takumi Harimaya at takumi.harimaya@buzzfeed.com.

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