ついに、その瞬間が訪れた。広島東洋カープ、25年ぶりのリーグ優勝。
広島市中区の居酒屋には、多くのファンが集まり、テレビ観戦をしていた。
そのなかで、静かにラジオ中継を聴き、杖をつきながら、優勝を祈る老人の姿があった。

彼は現在、63歳。いまは福祉施設で働いているが、元はホームレスだった。
「惰弱な人生だった。何もかも嫌になって、何もかも失ったとき、救ってくれたのが広島カープ。諦めない戦いをホームレスのときから、このラジオで聴いていました。広島カープは、私の希望です」
名前を聞いたが、「名乗るほどでもないので」と話し、酒場に戻った。
彼の目には涙が、浮かんでいた。
