大分県別府市。隣市の湯布院同様、日本屈指の温泉街だ。14日に始まった熊本を中心とする一連の地震の被害は大分にも及んでいるが、観光地の現状はどうか。現場に向かった。

別府市のなかでも特に被害が大きかったのが明礬、鉄輪地区。この地区で営業する「えびす屋旅館」では、併設しているカフェの屋根が壊れ、休業中だった。
女将・本田麻也さんは「湯布院に比べれば、別府は被害が少ない方。すぐにでも物資を持って行きたいけど、店のこともあるし……」と話す。
市の対策本部によると、18日時点で負傷者は7名。損壊した建物数は確認中で、ひび割れなど道路被害の報告は342件にのぼる。

一方で、別府市観光協会に問い合わせたところ、ほとんどの店舗が通常営業している。
市内の協会に加入している旅館、ホテルから休業するといった報告は受けていないとのことだ。「しかし、キャンセルが殺到しているとの報告は受けている」と話す。
同地区にある岡本屋。「地獄蒸しプリン」が名物で、普段は多くの客で賑わうこの店も客がまばらだ。

店員は「客足はがっくり途絶えた。来店してくれても危険と思ってか、持ち帰りの人が多い。ゆっくりしていく人はいない」と話す。
また、「私たちも地震が怖い。だから、営業しているけど『来てください』とも言えないから難しいです」とBuzzFeed Newsに語った。
国道500号を市街地の方面に歩いてくと、観光名所「別府地獄めぐり」が見えてくる。観光客がいた。徳島から来た高橋清さん(64歳)ら夫婦は「別府は大好きな街。年に1度は必ず来ている」と笑顔で話す。
地震は心配ではないのか? との問いには「もちろん心配だったけど、電話で聞いたら営業していると聞いてね。来ちゃった」と答えた。

その近く「鉄輪地獄地帯公園」には、昼寝をする人や将棋を指す人、シートを広げ団欒する家族など”日常”があった。


しかし、目を横に向ければ破損した建物があるのも事実だ。


別府駅前。いつもは観光客が降りるここも閑散としている。


宿への帰り道で利用したタクシーの運転手、森順次さん(59歳)。生まれも育ちも別府で、この道20年のベテランだ。

「1日30回以上、観光客を送迎しているけど、今日はあなたが初めてだよ。3.11の時もそうだったけど、お客さんが減ると生活できなくなるから、もちろん苦しい」と話す。
「別府と湯布院は、『2つで1つ』の観光地。湯布院はまだ回復していないから、別府に来て、ちょっと湯布院に寄ってお金を使ってあげることができることじゃないかな。けど実際別府も揺れているし、『大丈夫。安心して来て』とは言えないよね」
宿に到着し、降りる間際「別府も湯布院も本当にいいところだから。落ち着いたら、またおいでよ」と話し去っていった。
ほとんどの店が通常営業している別府だけでなく、湯布院でも店舗が続々と営業を再開している。
由布院温泉観光協会によると、飲食店は全体の7割が再開。営業停止しているホテル、旅館はごく一部。ただし、由布院ー別府間の高速道路はいまだ交通止めになっているので、注意して来てほしいとのことだ。
