みなさんは、「炎症性腸疾患」と呼ばれる病気をご存知でしょうか?

炎症性腸疾患とは、腸を中心とする消化管粘膜に炎症が生じる疾患です。
英語では「Inflammatory Bowel Disease」と言い、その頭文字から「IBD」と略称されています。一般的には、大腸の粘膜に炎症が起こる「潰瘍性大腸炎」(かいようせいだいちょうえん)と、口から肛門まで消化管のどの部位にも炎症が起こる可能性がある「クローン病」の2つの疾患を総称してIBDと呼ばれており、厚生労働省から共に「難病」に指定されています。
特にクローン病を発症すると、まず炎症が起こり、それを繰り返すと瘻孔、膿瘍ができることで痔瘻などの合併症を生じることがあります。炎症のダメージは蓄積し、複数回手術をして腸管切除を繰り返すことで短腸症候群になる可能性もあります。

IBDは根治が難しく、症状が落ち着く時期もあれば、再び悪化することもある病気です。IBD患者さんは、自身の体調に合わせて食べるものを選んだり、しっかりと睡眠をとったり、ストレスマネジメントのために適宜運動したりすることが大切とされています。
今回は、そんなIBD患者さんが、旅行するときに人知れず悩んでいることをイラストにしてみました。
※旅行は、症状が落ち着いているときであれば、過度に心配することはありません。また、気心知れた仲間との旅行はストレス発散にもなります。常用薬を準備するほか、疲れがたまらないよう無理のない旅程にすることが大切です。
※以下のイラストのシチュエーションやセリフは、すべての方に当てはまるわけではありません
IBDは腸に炎症が起き、腹痛や下痢などの症状が続くことがあります。
そのため、移動途中や外出先で、急な腹痛への不安を感じる患者さんもいます。特に、長時間の移動に苦心する患者さんも少なくはありません。便意がいつ来るか分からないので、「トイレに行きやすい席に座れるか」などを気にする患者さんもいるようです。
IBD患者さんは突然の腹痛に襲われることがあります。重症化すると1日に20回以上の排便をきたすことも。トイレに並んだり、探している間に排便が間に合わない場合もあるので、IBD患者さんの中には外出先のトイレの場所を事前に確認しておくという人もいます。
多くのIBDの患者さんの体調管理には、日々の食事のケアが大切です。制限の内容や程度は患者さんによって様々ですが、揚げ物や刺激の強い食べ物などに不安を覚える人もいます。
「他の人と同じものが食べられない」という悩みがあるなど、食事の問題で活動が制限されることもあるのです。
IBDの主な症状は先述の腹痛に加え、下痢や血便、発熱、倦怠感などもあげられます。
基本的には薬や食事制限、規則正しい生活を送りながら腸の炎症を抑えて症状を落ち着かせていきます。しかし、患者さんによっては旅行前に体調を整えても、環境の変化や長時間の移動からくるストレスなどで、再び症状が悪化してしまうこともあります。
そういった不安から、旅行をためらってしまう患者さんもいます。
このようにIBDは見た目に分かりづらく、周囲の人に辛さや苦労が理解してもらいづらい疾患です。製薬会社の武田薬品工業株式会社(以下「タケダ」)は、炎症性腸疾患(IBD)の患者さんの視点に立って考え、患者さんに寄り添う社会を目指し、継続的にIBD啓発活動を実施しています。
IBDおよびIBD患者さんについての理解を深めるための取り組みとして、IBD好発年齢層の学生に「In Their Shoesシミュレーション体験プログラム」を3年連続で提供しています。
イベントでは10代から20代の医学生、薬学生、看護学生などに、スマートフォンの専用アプリを使ってもらい、患者さんの気持ちを理解するきっかけを提供しています。過去のイベントでは、医療系の学生さんたちと一緒にIBD啓発デジタルポスターを制作したり、食事制限中のIBD患者さんのための夢のレシピ「IBDreamめし」を考案したりもしています。
3月26日(土)には、患者さんの日常生活を体験するための「In Their Shoesプログラム」&レシピワークショップをオンラインで実施しました。
こちらで考案された「IBDreamめし」のレシピは、5月19日(木)の「世界IBDデー」に特設サイトおよびタケダHPにて公開予定です。
タケダは、IBDの患者さんが直面している課題を発信し、患者さんやそのご家族を取り巻く環境をより良くするための活動に取り組んでいきます。