「炎症性腸疾患」という病気に、人知れず苦しんでいる人たちがいます。

炎症性腸疾患とは、腸を中心とする消化管粘膜に炎症が生じる疾患です。
英語では「Inflammatory Bowel Disease」と言い、その頭文字から「IBD」と略称されています。一般的には、大腸の粘膜に炎症が起こる「潰瘍性大腸炎」(かいようせいだいちょうえん)と、口から肛門まで消化管のどの部位にも炎症が起こる可能性がある「クローン病」の2つの疾患を総称してIBDと呼んでおり、厚生労働省から共に「難病」に指定されています。

IBDは根治が難しく、症状が落ち着く時期もあれば、再び悪化することもある病気です。患者さんにとって、自身の体調に合わせて食べるものを選んだり、しっかりと睡眠をとったり、ストレスマネジメントのために適宜運動したりすることが大切とされています。
今回、そんなIBDを抱えながら社会人生活を送る人たちが、人知れず悩んでいることをイラストにしてみました。
※以下のイラストのシチュエーションやセリフは、すべての方に当てはまるわけではありません
IBDは腸に炎症が起こることで、腹痛や下痢などの症状が続く病気です。
そのため、通勤途中や外出先で、急な便意への不安を感じる患者さんもいます。特に、朝食の後は便意がいつ来るか分からないので、中には、「遠い現場に朝早く行くときは、確実に現地入りするために前乗りが必要」と、長時間の移動に苦心する患者さんもいるようです。
会議や研修は、隣席との距離が近く、人の移動もわかりやすいため、急に便意が来た時や、ガスが多く出る時に、人の目が気になって集中できなくなってしまう患者さんもいます。
また、
「頻繁にトイレに行くとサボっていると思われるのではないか」「せっかくコーヒーを出してもらったけど飲めない。失礼だと思われていないか」
そんな不安を抱えながら会議や研修に参加する患者さんもいます。
IBDの患者さんの体調管理には、日々の食事のケアが大切です。制限の内容や程度は患者さんによって様々ですが、揚げ物や刺激の強い食べ物などに不安を覚える人もいます。また、「トイレに行きやすい席に座れるか」なども気になる患者さんもいるようです。
また、周囲に気を遣われすぎることがストレスになってしまう患者さんもいます。中には「飲み食いの強要やトイレの回数への言及さえなければ気遣いは不要」という声もあります。
先述の通り、IBD患者さんの中には、通勤・会議・会食など、社会人生活におけるさまざまなシチュエーションで不安を感じている人がいます。
そのため、仕事を探す際は、病気について理解してくれる職場が理想的なのです。
今後、IBD患者さんがより働きやすくなるために、企業の制度がより整っていき、企業の方々・そして一緒に働く方々の、IBDに対する理解が深まっていくことが望まれています。
5月19日は世界IBDデーです。製薬会社の武田薬品は世界IBDデーに向けて、医療関連の学生団体との共催で、IBD啓発デジタルポスターを考案するワークショップを3月にオンラインで実施しました。

このワークショップでは、将来医療に携わる学生たちが、医師による講演・IBD患者さんの講演を聞いた後、患者さんでもあるコピーライターとともに「働き方」「移動」「会議」「食事」の4つのテーマでポスターのキャッチコピーを考案しました。ポスターのイラストは、同じく患者さんであるイラストレーターが制作しました。IBD啓発デジタルポスターは、武田薬品の特設サイトで公開しています。
また、武田薬品は昨年の同時期にも、IBDの認知・理解を深めるためのイベントを開催。その際は、食事制限中のIBD患者さんのための夢のレシピ「IBDreamめし」を考案しました。
レシピはこちらのサイトに掲載されています。
武田薬品はこのほか、患者さんの日常生活を体験するためのIn Their Shoesプログラムもオンラインで実施しています。
イベントでは10代から20代の医学生、薬学生、看護学生などに、スマートフォンの専用アプリを使ってもらい、患者さんの気持ちを理解するきっかけを提供しました。
武田薬品は、IBDの患者さんが直面している課題を発信し、患者さんやそのご家族を取り巻く環境をより良くするための活動に取り組んでいきます。
In Their Shoes(3/27に実施の武田薬品によるオンラインプログラム)
IBD啓発デジタルポスター
厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」
Design & Illustrations by Ryosuke Sugimoto